3章[王都学園]第30話
この学園に来てから、早7ヶ月が過ぎた時期、俺は現在の状況について整理していた。
[うぅん......]
今俺が考えているのは、ステラを追っている連中についてだ。
[でも、結局はステラ自身に聞くのが一番早いんだよな......]
だが、聞いては見ても、答えてはくれないのだ、それが何故なのかはわからない、時々親の事を聞いたりすると暗い顔をする所を見ると、両親と何かしらの関係はあるんだろうが......
考えていると、ドアがコンコンとノックされる。
[はいはい......]
扉を開けると、そこには寮官がいた。
[寮官、どうかしたのですか?]
[学園長が呼んでいる。]
滅茶苦茶強面な顔をしているが、実は結構生徒からは人気なのだ、面倒見が良いのか、良く生徒からの相談などに時間をさいているらしい。
[わかりました。準備したら行きます。]
俺はそう返答すると、寮官が去ったのを確認して、扉を閉めて、準備、とわ言っても、剣しか持ち歩く物は無いんだが。
俺は木で出来た扉をノックする。
入学初日の日は、こんな学園長で良いのか?とも、思ったが、この数ヵ月の間に、学園長の人間性がわかってきた。
まず、随分な話上手で、状況によって接し方を替えるのが結構うまい、勿論良い意味でだ、緩いときはとことん緩いのに、ここぞと言うときには鋭利な神具でも思わせる程に切れる、生徒や教職員の面々からも信頼されているし、俺も尊敬すらしている。
[......クロトです。]
俺は名前を言う。
[よろしい......]
[失礼します。]
俺は扉を開けて、学園長の前まで歩く。
[今回はどの様な要件ですか?学園長。]
俺は要件をたずねる。
[ああ、今日君をここに呼んだのは......]
簡潔に要件が述べられる。
[近々町の裏商店で開かれる、奴隷オークションにおいて出品される、ある娘を連れ出して来てほしいからだ、勿論内密に......]
何を言い出すかと思えば。
[......そう言うのは、ただの学生に頼むような要件だとは思えませんよ?]
普通は、だが......
[勿論君だから頼む、君は国の正式な騎士や裏の暗殺者などよりも何倍も優秀だ。]
そう、これがこの国と学園に置ける例外だ、この国においてはたまにこう言う事がある、理由は説明しなくてもわかる通り、それが効率的だからだ、別にそれをどうこう言うつもりはない、1つの国を運営する上で例外・スケープゴート・危険な出来事は付き物だし、それをより完璧にノーコストで行う為に、こう言う風に学生に頼むのは納得は出来る、肯定するつもりは無いが......
[......これでは言い訳にもならないな、私の力が足りないばかりに、すまない。]
こう言う所があるから、一概に責めることは出来ない、この人も断りしたのだろう、だが、国からの圧力だ、対抗しようにも出来なかったのだろう。
[......別に良いですよ、内容にもよりますが、言うだけただです。]
[うむ、概要は単純だ、方法は問わないから、とにかくこの娘を確保してこの学園まで連れてきてくれ。]
学園長は一枚の写真を俺に見せる。
[......内容はわかりましたが、何故この女の子を奪還せねばならないのですか?]
そこには、丁度リアと同じくらいの背丈で、黒髪をツインテールで纏めた、童顔の美少女が映っていた。
[うむ、これは内密にしてほしいのだが、この娘は龍人種だと言う話なのだ。]
成る程、そう言うことか......
[......成る程、この龍人種の女の子を国にそのまま明け渡せば、確実に軍用の兵器のように扱われる、だから、学園で預かる手筈も整えているって言うことですか。]
恐らくその為に一度学園に連れてくるのだろうし、この学園の生徒である俺に頼んだのだろう。
[......わかりました。受けます、その依頼、冒険者としてではなく一人の学生として。]
俺は了承の旨を伝える。
[そうか、ありがとう、クロトくん。]
[ですが......]
俺は一言付け加える。
[奴隷商会に忍び混む場合、一度も失敗せず一発で達成しなければなりません、俺一人でも行けるとは思うけどもしもの時にリカバーが効きにくい、仲間をつれていっても良いですか?]
こればっかりは仕方が無い、出来るだけ俺一人でやりたいが、それは今回の侵入では困難を要する。あまり気が進まないが、サポートしてくれる要員は必要になる。それほどに強大なのだ、奴隷商会と言うのは......
[わかった、三人までなら認める。]
[充分です。]
もとから、二人しか連れていくつもりはない。
[うむ、それでは作戦結構日時はこの一週間以内であれば何時でも良い、自由に決めてくれ。]
ここで決めないのは、恐らく情報の漏洩を防ぐためだろう、情報なんて言うのは、何処から漏れるのかわかったものじゃない。
[話はこれだけですか?]
[ああ。]
[わかりました。それでは失礼します。]
俺はそう言って、学園長に背負を向けて、扉の前まで歩いて、もう一度学園長の方に向き直り、礼をすると、学園長室を後にした。




