3章[王都学園]第17話
[ほらほら、やり返してきなさいよ!]
女の鎖の様な武器がステラを追尾する。
やり返しても、私の魔法じゃウィネラは倒せない、どうしたら......
[逃げてばっかりじゃあ、勝てないわよ!]
ユリカゼはギリギリまで迫った鎖を、体を捻って避ける。
[かかった。]
素通りした筈の鎖は、動き方を変えて、ステラに命中する。
[うっ!]
ステラは地面に叩きつけられ、バインド魔法で縛り付けられる。
[やっと、捕まえた。]
[くっ、外れない!]
ステラは抵抗するが。
[離すわけ無いでしょうが!]
女は身体強化のかかった足で、ステラを蹴りつける。
[くっ......]
ステラは痛みを必死に耐える。
[へぇ、温室育ちのお嬢様とは思えない忍耐力ねぇ。]
今度は、踏みつける。
[う......]
ステラの体力も限界に近かった。
[ほらほら、さっきの威勢はどうしたの、本当に手間かけさせてくれたわよねぇ、その度にどれだけ惨めな想いを私達がしたと思ってるの?]
まだだ、まだ、耐えるんだ。もう少し耐えさえすれば......
[はぁ、しょうもな。]
そう言って、取り出したナイフをステラの腕に突き刺す。
[う......あ......]
想像を絶する痛みに、声を抑えるので精一杯だ。
[はぁ、そろそろ回収するか。]
[......]
だが......
[んっ、まさか!]
異変に気付いたときには既に遅かった。
[何だ、これ、体が、動かない。]
謎の圧力によって、女は身体の自由を失う。
[驚いた?]
いつの間にかステラを縛っていた鎖は消えている、そして、黄色のオーラの様なものを纏っている。
[この、世界の歪みが!]
[どうとでも言ってくれて構わないよ。私がどんな存在であろうと、私は私。]
ステラは表情を終止固定している。
[違うね、あんたは歪みだ!]
だが、ステラは少し表情を歪めると。
[失せなさい。]
女は一瞬にして消える。
[何処に飛んでも恨みっこなしね、最初に仕掛けてきたのはあなた達なんだから]
[先を急がなきゃ。]
ステラは走り出す。
[はぁ!]
俺は連続攻撃を叩きつけるが、相手は余裕の表情で全て受け流す。
[その程度の重さじゃ、俺の手を切り落とすのは到底不可能だぞ。]
[ぐっ!]
何て言う固さだ、それに余裕が無いのかなんなのか知らないが、全く反撃してこない。
[ちっ......]
俺は一度後方に飛び退く。
[おや、もう終わりか?]
[くっ、余裕かましやがって。]
こちらとて冷静さを欠いている訳ではない、余裕は無いが、長引かせたくないのも事実だ。ここは一気に決めるか。
[その余裕が敗北を招くって言うのを教えてやるよ。]
[なに?]
この技はあまり使いたくは無かったが。
ールミナス・ブレイド・オーバーライトー
周りの時間が止まったかのようにスロウになる。
[せいやぁ!]
すかさず相手に斬撃を入れて後方に飛び、ライジング・ボルトを放つ。
[これで、どうだ!]
周りの時間は正常な動きを取り戻す。
[なっ!?]
砂煙が晴れると、男は平然と立っていた。
[今のがお前の奥の手か…確かにお前が万全の状態なら危なかったが、魔力が枯渇しきった体で攻撃を入れられても大したダメージにはなり得なかったようだな。]
まさか、無傷で凌がれるとは思わなかった、正直この技を使うと言うことは勝負を決めると言うことだ、もしも、この技を使って決めきれなかったらもう俺の方に戦う体力は残っていない。
[......く。]
[ふっ、今度こそ終わりだな、であれば次は俺の番だ。]
男は一瞬で、クロトの目の前に移動して悪魔の一撃を入れる。
[ぐわっ!]
クロトの体は意図も容易く吹き飛び、遺跡の壁に勢いよく激突した。
[く......う......]
[まだ意識があるのか、いやはや恐れ入るよ。]
そう言って、男が倒れているクロトに向かって歩き出すと、一筋の光が男に向かって飛翔する。
男はそれを片手で受け止めへし折る。
[ほぅ、貴様は確かあの一緒にいた小娘だな。]
通路の方向を見ると、弓を構えた一人の少女が立って居た。
俺は驚きのあまり目を見開く。
[何で来たんだ、早く逃げろ。]
そう、立っていたのは、多くの傷を負った銀髪の少女だった。
[旧校舎の前にはたどり着いたけど、これじゃあ先に進めない。]
旧校舎の前は、二人の男の戦いによって激戦区になっていた。
この間を突破する方法は、やっぱりあれしかないかな。
[気配消去・対照は自身のみ。]
最小限の魔力で魔法を発動する。
[後は、走るのみ。]
[何とか抜けることが出来た。気付かれてはいたかもしれないけど、何とかなって良かったぁ。]
実際に本当に死ぬかと思った。
[さてと、魔力の痕跡からして、旧図書館に向かっているね。]
ステラは旧図書館までたどり着くと、破壊された隠し扉の方に向かう。
[ここに入って行ったのかな?]
ステラは階段を一気に降りると、そこに広がる光景に目を見開く。
[学園の地下にこんなものがあったんだ、凄い......]
目の前に広がる古代遺跡に呆気に取られているのもつかの間、ステラは直ぐに我に帰り、遺跡を降下する。
[待っていて、クロトくん......]
[もう大丈夫だよ、クロトくん。]
ステラは男と向き合い、弓を構える。
[次の相手はお前か、やれやれ今日は中々に骨の折れる戦いの多い日だ。]
男は未だに余裕の感じを崩さない。
ステラは魔方陣を空中に数個起動する。
[ミルキーウェイ......]
[ん?]
[流星・スターダスト......]
無数の矢が飛翔する。
[くだらん、そんな魔法では俺には傷ひとつつかんぞ。]
男はまた余裕で受けきる。
[知ってるよ、クロトくんを倒したくらいだもん、こんなのじゃ意味がないのくらい知ってる。]
[では何故、魔力を無駄に使うような事をした?]
[今にわかるんじゃないかな?]
[発動......]
ステラは小声で何か言うが、小さすぎて発動の言葉以外聞き取れなかった。
[......]
[......]
ステラは無言で男を見る。
[......ほぅ。]
いつの間にか、ステラの周りには黄色のオーラの様なものが漂っていた。
[質が上がったな。]
男は微笑する。
ステラは弓を構える。
そして......
[......あまり体力も残って無いから、一気に決めさせてもらうよ。]
[ネメシス・スターダスト......]
その瞬間、まばゆい無数の光が男を飲み込み、爆裂する。
[......やった、のか。]
ステラは遂に体力・魔力共に使い果たしたようで、その場に膝を突く。
[......!ステラ避けろ!]
既にステラの前には、全身傷だらけの、怒りに満ちた表情を浮かべた男が立っていた。
[う......ぐ......あ。]
男は悪魔の腕を無慈悲に突き刺し、ステラの胴体を貫通する。
[手間をかけさせてくれたな、身の程知らずが......]
[やめろぉぉ!]
男は腕を強引に引き抜き、ステラを勢いよく放り投げ、魔法を放つ。
[あ......あ。]
砂煙が晴れると、そこには力無くステラが倒れていて、地面には鮮血が流れ紅い海が広がっていた。
[はぁ......あ......]
それを見た瞬間、まるで精神や心と言ったものが、崩れて闇に飲み込まれるような感覚におちいった。
[ん?]
男がクロトの方を見ると、立っていたのだ、一人の少年が。
[貴様、まだ立つか。]
すると、クロトは......
[うぁ......あ......]
苦しむような素振りを見せると。
[ぐ......うわぁぁぁぁ!]
クロトの周りに魔力の嵐が吹き荒れる。
[なに!?]
[ぐわぁぁぁぁ、あぁぁぁぁぁ!]
やがて魔力の嵐は集約され、クロトの周りに纏われると、クロトは男を睨み付ける。
[......まさか、とは思っていたが、本当にこんな事があり得るとはな。]
男の顔からは余裕の面影は感じられない。
[反転凶化、まさか実在するとは......]
[精神と心の反転、それに伴う大幅な凶化と強化、かの者に生じた異変によって起きる産物、ここまでのものだとは......]
[......]
[それにこの変わり様、本当に同一人物なのかも怪しいほどの濃密な殺気と魔力......]
男は構えを取る。
[手加減できる相手では......]
瞬きしたほんの一瞬で、クロトは男の視界から消える。
[何......だと。]
気付いたときには既に、男は頭を鷲掴みにされ、持ち上げられていた。
[おいおい、冗談がきついぞ、化け物......]
[......]
クロトは掴んでいる方の腕に魔力を集中させていく。
[自覚は、いや、していないか......]
男はニヤリと笑う。
[ふっ、全く俺も運が悪い......]
クロトは不気味に笑うと、男にその膨大な魔力を一気に流し込み、魔力の竜巻で切り刻む。
[ぐわぁぁぁ!]
男は叫ぶが、クロトはそれをやめることはなく、やがて男は絶命した。
[......]
クロトは男を離すと、ステラの方を向き歩き出す......が。
[その辺にしておけ、大事な者まて失うことになるぞ。]
クロトが振り替えると、何者かの指が頭に触れた瞬間倒れた。
[ふぅ、全く、後少し位は眠らせて欲しいものだな。]




