3章[王都学園]第16話
[はぁはぁ......]
銀髪の少女は走っていた、ある少年を追いかけて。
[本当に良かったんですか?あのまま行かせて......]
[......]
ユリカゼは優しく微笑む。
[......ステラさん、大事なのは己の意思です。クロスさんの意思ごどうこうではなく、最後には自分の意思で動くべきだと私は思いますよ。]
そう言われて、ステラは決心する。
[......セインちゃん、ここから一人でも行ける?]
[はい、大丈夫です。私の分までクロトさんの力になってあげてください。]
[ありがとう。]
そう言って、ステラは走り出す。
[はぁはぁ......]
クロトくんの魔力は、旧校舎の方から感じる。
[急がないと。]
その時だった。
[何をそんなに焦っているのかな、姫様?]
街頭の上に、その女は立っていた。
[......何で、何で、あなたがここに......]
女はニヤリと笑う。
[自分の元護衛をボコっておいて、あんたの父さんは相当にお怒りよ。]
まさかもう乗り込んでくるなんて、いや、この混乱に乗じて乗り込んできたのか。
[言った筈だよね?私はもう帰らないって。]
[主様からは、力付くでも連れてこいって命令だ、悪く思うないでね、お姫さま。]
私は、弓を元素回路から取り出す。
[幾らあなたでも、手加減しないよ、ウィネラ!]
女は鎖を取り出す。
[それはこっちの、台詞よ!]
[おらぁ!]
レオは的確に、相手の動きに反応していた。
[成る程、流石に固有魔法、凄まじい威力だな!]
それでも、相手の方が有利なのは未だに変わらない、それほどに相手が戦闘慣れしすぎていたのだ。
[はぁ!]
今のところは、互角には打ち合っている、だが......
[この辺で終わりにしてやる......]
相手の殺気が、一気に増す。
[まずい!]
ユリカゼは叫ぶ、だが、相手はレオの懐に的確に入り込み、渾身の一撃をお見舞いする。
[滅!]
今度こそ、強烈な一撃がレオに突き刺さる。
[ぐはっ......]
レオはたまらずその場に倒れ伏す。
[くっ......ぐはっ!]
レオは口から血を吐き出す。
[中々の物ではあったが、これが、経験の差と言う奴だ、踏んだ場の数によって能力の差などことごとく覆る、お前も年にしては戦闘慣れをしている方ではあったが、それが限界だ......]
このままじゃ、レオは殺されてしまう、やるしかない!
[死ね。]
[させない!]
男は、それを予期していたかの様に、反応し、ユリカゼに強烈なカウンターをかます。
[うわっ!]
ユリカゼはふっ飛ぶ。
[そう来るだろうと思ったよ。まあ、ここまで露骨に突っ込んで来るとは思わなかったが。]
[うっ......う。]
[逃げろ、ユリカゼ......]
レオが言う。
[敗者は黙っていろ。]
そう言って、男はレオを勢いよく踏みつける。
[うわぁ!]
[や......めて。]
とてつもない無力感に苛まれる。
私が、今更何かを救おうなんて、何かの役に立とうなんて、そもそも無理だったんだ、滑稽だ、無力で何も出来ずにただ仲間が痛め付けられている所を、見ていることしか出来ない自分が......
ユリカゼの心が、崩れそうになった瞬間だった。
[それが、俺の覚悟だからだ!]
あの時の、少年の声が脳の中で反響する。
[......]
俺の覚悟だから、か。
[うっ、あぁぁぁぁ!]
ユリカゼは再び、膝を付き立ち上がろうと足に力を込める。
私は何をやっていたんだ、私にはあの人の様な事は出来ないのかもしれない、だったらせめて、自分の憧れた人のやった事の真似事位して見せろって言うんだ!
[ほぅ、まだ立つか、てっきりもう折れたのかと思ったが。]
[私は死なないし、折れもしない、絶対に諦めない!]
そう言って、私は右腕に魔力を込める。
今の私では、扱いきれないかもしれない、だけど、せめて、守らせて欲しいんだ、だから答えて!
[来て、霧雨!]
そう叫ぶと、ユリカゼの右手に黒い刀身の刀が出現する。
[まさかそんな奥の手を隠し持っていたとはな、法王......]
男からも、余裕の一面は消えている。
[ありがとう、霧雨、答えてくれて。]
そう、これが、ユリカゼ・セインの神具......
神影刀・霧雨
[これが、最終ラウンドです。]
今のユリカゼは神具の恩恵を受けている、消耗しているとは言えその力は絶大だ。
[こい、殺してやるよ。]
[......]
実に数ヶ月ぶりだ、対人戦闘において、剣に殺気を込めるのは。
[......!]
ユリカゼは男の喉元を狙って、一気に斬り込む。
[ほぅ、やる......なぁ!]
クロトと主従になって以来、剣に本当の殺気を込めたことなど一度もなかった、それは、クロトのためでもあったが、今回ばっかりはそんな余裕もない、幾ら神具を使っているとは言え、相手は相当な手練れだ、ここで負ければレオもユリカゼもどちらも殺される。
[......]
[ふぅ!はぁ!せぃ!]
能力面においては、ほぼ互角、だが、ユリカゼとて今まで幾度と無く修羅場を潜っている、その経験は決して劣るものではない、技術においてはクロトを相手に確実に抜きん出る。
[っ!それだ、俺が待っていたのはその目の光を持つ者だ。その鋭利な刃物すら凌ぐ鋭さを持つ眼光、相手にとって不足なし!]
高速の打ち合い、少しでも遅れを取った方が敗北する真剣勝負、だがそれも、今決着する。
[これで決める!]
男は構えを変えて、魔力を爆発させる。
[......]
ユリカゼもそれに相対する。
[くらえ、帝王・神越拳!]
音速の弾丸の様な拳が放たれる。
[......暁の一閃・裏型]
ユリカゼの周りを霧散する光の粒子は黒色の刀身に集まり更に輝きを増し、黒色の刀身は黒いオーラを放出し、そのオーラはユリカゼ本人の体に纏われる。
[......]
踏み込む、ユリカゼの眼光は更に鋭さを増す。
[そこだぁ!]
ユリカゼの動きに対応した、男がユリカゼの目前まで拳を接近させるも......
[なに!?]
ユリカゼは冷静にそれをかわして懐に入り込み、男に横一閃を入れる。
[ぐわぁ!]
男は勢いよくぶっ飛び、施設の壁に激突する。
[ぐっ......う......なんて言う、奴だ、あの状態から、かわすとは......]
ユリカゼは男が重症をおっているのを確認すると、刀を帯刀する。
[一様鋭さは弱めました。あなたの堅さなら死にはしないでしょう。]
ユリカゼは刀に込めた魔力を、鋭さでは無く威力の向上に回したたため、男には斬撃の衝撃こそ伝わった物の、死ぬほどの重症にはなり得なかった。
[私を......殺さないとは、甘い奴だ。]
ユリカゼは男に背を向けると。
[勘違いしないでください、私はあなたを殺したかったのではなく、単に仲間を守りたかっただけです。]
そう言って、レオに肩を貸す。
[ほら、保健室まで行きますよ。]
[すまない、ユリカゼ......]
レオは意気消沈と言った感じだ。
[......]
ユリカゼは旧校舎の方を向く。
[後は頼みましたよ、ステラさん、クロトさん。]
そう言って、ユリカゼは歩き出した。




