3章[王都学園]第14話
[それで、貴様はあの女二人でも勝てなかった俺に、一人で挑むと言うのかね?]
俺は安いとも言える挑発にたいして、軽く言い返す。
[お前ぐらい、俺一人で十分なだけだ......]
お互いに沈黙する。
[ふっ、そうか。ならば見せてやろう、このホワイトマターの本領と言うやつをな!]
白い尻尾がこちらに勢い良く伸びる。
[似合わないな、天使のつもりか!]
俺はルミナスの刀身で、白色の鋭利な尻尾を全て弾いて、後退するのと同時にライジング・ボルトを放つ。
[別に天使を語るつもりはない、たまたま、こう言う魔法なだけだ!]
ライジング・ボルトを難なく受け止めて、すぐさま攻撃の姿勢に切り替わる。
[俺は貴様ら他学園の者共を倒し、頂点に立つのだ、この技術大会はその為の足掛かりのつもりだったが、クロトと言ったな、貴様が俺の最大にして最強の邪魔者らしい!]
俺はホワイトマターをかわしたり、受け流したりしながら反撃を加える。
[だったら何なんだよ?]
すると更に尻尾から感じる魔力量が上昇する。
[貴様を再起不能になるまで叩き潰す!]
6つの尻尾の先が重なり、そこから魔力砲が放たれる。
[それは物騒な事で!]
俺もルミナスに凝縮していた魔力を解放して魔力砲を放つ。
鋭い轟音を立てて二つの魔力は激突する。
[......。]
[流石にやるなあ、だが威力においては俺の方が上だ。]
......成る程、そう言うことか。
[確かに威力に置いては......な。]
ライガスが顔をしかめる。
[何が言いたい?]
[ずっと不思議に思ってたんだよ。固有魔法とは言え何でここまでの威力が出るのか、何故同じ量の魔力を消費している筈なのにお前の方が一歩上なのか......答えは簡単だ、それはお前の魔力操作技術の異常さだ、天然物とは思えないほどの演算能力とでも言おうか。]
[ふん、それがわかったところでどうすると言うのだ、わかっても対処の方法がわからねば意味がないぞ?]
[まあそうだな、だけど俺の仕込みは既に終ってるんだよ。]
俺は地面に剣を突き刺す。
[儀式魔法発動!]
俺がそう叫ぶと、ライガスの立っている所を中心に魔方陣が浮かび上がる。
[これは特大級の儀式魔法!?貴様いつの間に仕掛けた!!]
そう、儀式魔法を行うにはまず基礎となる魔方陣を規則正しく設置する必要がある、対人戦で扱うには、相手に気付かれずに魔方陣を設置して、尚且その中心に誘導する必要がある。
[気付かなかったのか?お前が俺に攻撃している間に数個設置して、残りはお前の魔力と俺の魔力が激突して視界が少しの間封じられた時だ。]
[何だと、あの一瞬でこの会場に魔方陣を設置したと言うのか!?]
[まあ、多少のずるはしたがな…それよりそこにいて良いのか?はやく逃げないとそれの餌食だぜ。]
[くっ!]
まあ逃がさないけどな。
魔方陣の中から違う魔方陣が数個浮かび上がり、そこから数本の鎖が放たれ、後退しようとしたライガスを拘束する。
[ぐっ、この俺が動けん......貴様拘束魔法の術式まで、何処まで掌握していたと言うのだ!?]
[さあな、それにお前の弱点は魔力の量だ、操作技術は飛び抜けているが、それに比例するように魔力の量は少ない、単純な魔力の量で勝る俺の拘束はそう簡単には解けない筈だぜ。]
[......!]
図星か。
[そろそろお喋りも終わりにするか、これは俺の仲間の分だ。]
そう言って、俺は本格的に魔法を起動する。
[エンシェント・ヴァーミリオン!!]
俺がそう叫ぶと、地面に浮かび上がっていた魔方陣は更に光輝き、光の柱がその範囲内にそびえ立つ。
[......。]
光の柱は徐々に収束していき、完全に消滅した時、俺はその中心にライガスが倒れていることを確認する。
[ダウン!]
間髪入れずに判定が下る。
[勝者、フローゼル学園・クロトチーム!]
[そして、栄えある優勝チームはクロトチームに決定です!]
どわっと歓声が上がる。
攻撃をいなすのにも、相当量の魔力を消費したので、そこにただでさえ魔力を余分に消費しすぎる儀式魔法を使用したので、体はもうフラフラだ。
[お疲れ様です。クロトさん......]
退場口の所で、ユリカゼが声をかけてきたが、こちらも相当にお疲れの様子だけど、それ以上にステラもユリカゼも悔しそうな様子だ。
[まあ、今日は疲れてるだろうし、面倒なことは俺がやっとくから、二人は先に帰って休んでくれ。]
そう言うと、ステラが反論する。
[何言ってるの、君だって体は押したら倒れそうな位にはぼろぼろじゃない。]
[うっ......]
確かにあってはいるが。
[......ユリカゼが一番傷も深い、ステラはユリカゼを保健室まで連れて行ってくれるか?]
我ながら良い提案だと思う、いくら俺自身も疲れているとは言え、ルミナスと覚醒者ありきで魔力を大量に使わないと防げないような攻撃を、まともに喰らっている二人に無理をさせるわけにはいかない。
[私なら......大丈夫ですので......二人はお気になさらず......う。]
ユリカゼが体制を崩したので、すかさず体を支える。
[どの口が言ってるんだ。今まさにぶっ倒れそうになっているのに、一人に出来るわけ無いだろ?]
ユリカゼは[すみません]と一言言う。
[......良いからとにかく休......]
その瞬間、信じられない程の悪寒を感じた。
[ステラ......]
[どうしたの、クロトくん、そんなに怖い顔して。]
ステラが心配そうに聞いてくるが......
[ユリカゼを頼んだ。]
俺はそう言ってユリカゼを任せる。
[何処に行くつもりなの?]
ステラにはそう聞かれるが。
[俺が予想していた中で、一番恐れていた事が起きた。]
恐らく俺の予測は外れていない、この感じはリオから聞いた通りのものだ。
[まあ、あんなものを狙ってくるんなら、それはこれ位の奴等は揃えてくるか。]
そう、恐らくリオの予想通り来たのだ、ガイアス聖火の人間が。
[何も、俺一人で何とか使用って訳じゃない。今回は迎撃側にも実力者が揃ってる、多分大丈夫だよ。]
まあ、俺の予想だと、これ程の事態にあの男が黙っているわけがない。
[だから、今回は俺を信じて待って......]
俺がそう言おうとした瞬間だった。
[駄目、それなら私も行く。]
[え!?]
止められると思っていたからこその、意外な返事だった。
[君は絶対に無理をする。もう、私は、君が一人ぼろぼろになって帰ってくる所なんて、見たくない......]
[.......だけど、じゃあユリカゼは誰が安全な所に連れて行くんだよ?]
それを聞いて、ステラは言葉に詰まる。
[......私なら、大丈夫ですから。]
ユリカゼ自身はそうは言っているが、こんな状態の彼女を一人にしておける程、安全な状況じゃない。
[そうもいかないだろ、それにステラも満身創痍だろ?だから俺一人で......]
ステラを止めるための言い訳に、ユリカゼの怪我を使う俺は、とことん最低な男なんだろうさ。だけど、それでもステラを連れていくと言う判断は俺には出来ない。
[......わかった、セインちゃん、行こう。]
[ですが、ステラさん......]
ユリカゼが何か言おうとしたが、その前にステラが歩き出す。
[......。]
俺はそう言って、遺跡に向かって走り出す。
[本当に、よかったんですか。]
[......。]
[来たか。]
俺が旧校舎の入り口前に来たところで、あの男に声をかけられる。
[やっぱり、あんたも来たのか。]
[ああ、リオくんに君が来るはずだから、ここで待って合流してくれとの事だったんでな。]
いつも余裕な様子を含んだ雰囲気なのだが、今はそんなことは当然なく、臨戦態勢といった感じだ。
[ああ、それじゃあ......ッ!]
俺が旧校舎に入ろうとした瞬間、背後から氷塊が飛んでくる。
[不意打ちか!?]
[どうやらそのようだな。]
剣聖も軽く回避する。
[この魔法、まさか貴様が奴等に協力していたとはな。]
剣聖はどうやら、この攻撃をした人物を知っているようだ。
[出てきたらどうだ、フレア・シュバリア。]
そこから姿をあらわしたのは......




