2章[異世界の探求]第9話
[大丈夫?]
今俺達は宿屋で一休みしている。
[......]
ユリカゼに関してはベットでまだ寝ている状態だ。
[全然大丈夫じゃない、疲れで指一つ動かせない。]
今俺は部屋のソファーで突っ伏していた。
[あんな、無茶に無茶を重ねる様な事をするからだよ。]
ステラは向かい側の椅子に腰かけていた。
[すみません。]
全くもってぐうの音も出ない話である。
[よいっ、しょっと。]
何時までも突っ伏している訳にも行かないので、未だに疲れが全く消えていない体を無理に起こした。
[だけどあれ程の惨事を疲れるだけで乗り切る事が出来たんだから、まあ及第点って所だろう。]
それに......
[それにな、あのままあんな行為を見過ごす事は出来なかったしあの屑野郎の事も許せなかった、だから今回は俺の独断ではあるけど後悔はしてないよ。]
まあ最も、彼女がそれを必要としていたかどうかは別の話だ、余計なお節介だった可能性もある。
[そうだね、正直言って私もあの人の考え方は許せないと思った、だけどあの人から開放する事が彼女の幸せだったのかどうかは、私達にはわからない、クロトくんの行動は私から見ても善行だとは思ったけど、人の幸せって誰かが決めて成り立つ物でも無いから......]
その通りだ、幸せと言うのは当人が幸せと思った時点で初めて幸せと言うのだ、誰かが決め付けた幸せなど押し付けの他の何でも無い。
[まあ、俺の剣術がこの世界では全くもって通じない事も良く分かった、覚醒者の力もまだまだ調整が必要な事も身にしみて分かったよ。]
そしてこのままじゃダメだとつくづく思い知らされた、このままじゃステラを守る事なんて夢物語であると言う事も理解できた、だからこそもっと強くならなければ、大切な物を守れるそんな強さが俺には必要だから。
[そうね、このままSSランクの依頼に直行するのは危険かも、メンバーも私とクロトくんの二人だけだからせめてあと一人はいないとピンチになったときにカバー仕切れないし、私達の戦力の底上げの為にも仲間は増やしたいよね。]
今後の方針について再検討していた所で、ベットの方から声が聞こえた。
[う、うぅん。]
[起きたみたいだね、私は席を外すからあの子とは一対一で話してあげて。]
[どうしてだ?]
疑問に思ったので尋ねる。
[彼女を解放したのが私じゃなくてクロトかんだから、あなた相手の方が少なくとも警戒心は薄れるはずだよ。]
成る程そう言うことか、流石ステラだと普通に感心して俺はステラに[分かった]と言った、それを聞いたステラは部屋を一旦出ていった。
[......ここは?]
ちょうど彼女も夢現の状態から抜け出し完全に目を覚ました。
[宿屋の部屋だよ、目覚めはどうだ?]
[......心地良いです。最近はベットで寝る事もほとんど無かったので。]
やはりか、彼女の事を道具呼ばわりしていた時点で察してはいたが扱いも相当酷かったのだろう。
[......それで、です。貴方はどうして自分には全くメリットが無いのに旦那様にあのような啖呵を切ったのですか?]
まあ当然の疑問だろう。
俺のやった事と言うのは彼女に言わせて見れば意味不明な事だ、勝っても俺に報酬の無い戦いで、しかも負ければ俺へのデメリットは計り知れない物だ、俺はそうは思っていないが彼女からすればあの時俺の得になるような要求をする事も出来た、だが俺はそうはせず彼女の為に要求する権利を使った。
[......単純にあいつがムカついたからだよ、俺があいつのやってる事にも言ってる事にも不快感しか覚えなかったから喧嘩を売った、ただそれだけだ。]
すると彼女は更に問いただしてきた。
[だったら尚更分かりませんね、それが理由なら貴方があの要求をした事の説明がつかない。]
俺はその疑問に最適の答えを述べた。
[今も言っただろう、俺が主に許せなかったのは奴からの君への仕打ちだ、あれは人が人にやって良い仕打ちじゃない、だから君を解放しろって言う要求をした。]
すると彼女は少し黙るとこう言った。
[......嘘...ばっかり......。]
[え?]
声が小さくてうまく聞き取れなかった為もう一度俺は聞き返した。
[そうやって貴方も、上っ面だけの嘘を並べて私を騙すのですか?]
やっと顔を上げた少女は涙を目に浮かべて怒りを露にしていた。
[どう言うことだ?]
どう言うことかなど当に察しはついてはいたが、俺はあえて聞き返した。
[そのままの意味ですよ!そうやって私に寄ってきた人達は、皆初めは優しい言葉を並べて本当は私の力が目当てだったんですよ、初めの方は優しくして信用して、後にはあの様な仕打ちの連続です。もうたくさんです......]
少女は半分自暴自棄になっていた、少女は部屋の隅に置いてあった自分の刀を取ると、抜刀した。
[おい!なにする気だ!]
少女は目を積むって、刀身を首に近付けようとしたのを認識した瞬間俺は動いた。
[くっ!]
俺は少女の刀が首の近くに行く前に片手で刀の刀身を握って、もう片方の手で柄を押さえた。
刀身を握っている方の手には鋭い痛みが走り血が流れる。
[なにを、やっているんですか......]
少女は明らかな違和感を感じて目を開いた。
[見た通り、君の馬鹿な行動を止めているんだよ。]
正直言って滅茶苦茶痛い、だがこの手を離すつもりは毛頭無い。
[離してください!]
[断る、こう見えて俺は世話焼きなんだ、目の前で死のうとしてる奴を放っておくって言うのは無理な話なんだよ!]
ここで離すと男が廃る!などと言ってる余裕は無いので止める事に集中する。
[そんなに離して貰いたかったら刀に込めてる力を少しは抜いてくれるかな?]
[くっ......]
少女は少し考え込んだ。
[分かりました。]
瞬間刀に込められてた力が一気に抜けたのを感じた。
[ふぅ......いきなり何やってんだ、死ぬつもりか!]
俺は完全にキレた。
別に自分が怪我をしたからキレている訳じゃ無い......
[ごめん...なさい。]
俺が気付いた時にはもう遅かった。
[すまない、言い過ぎた。]
彼女は目に涙を浮かべていた、恐らく人が怖いのだ、そんな事は分かり切っていた事なのに、俺は何てガキなんだ、今この状況感情的になるのは一番良くない事なのは分かっていた筈だ。
[少し、一人になります。]
[......。]
そう言ってユリカゼは部屋を出た。




