2章[異世界の探求]第8話
[まずいな。]
既にステラにはかすり傷が何個も出来ていた、もうそろそろまともに被弾してもおかしくない。
[ならやることは一つしかないよな。]
俺は次に放たれた魔法とステラの間に一瞬で割り込むと。
[せい!]
剣を右斜め上段から降り下ろした。
(バコォォォォン!!)
剣は見事に高速で飛翔してくる光の玉に命中し、魔力の塊を消し飛ばした。
[クロトくん!]
そのまま俺達は地面に着地した。
[邪魔を......するなぁぁぁぁ!]
女は鬼の形相で魔力光の玉を無数に宙に浮かべると、一気に打ち放ってきた。
[避けるよ!クロトくん!]
そう言って、ステラは後ろに飛翔した。
俺はと言うと、向かって来る光の玉を見つめて剣を正面に構えた。
[見えた!]
俺は剣を順番に向かって来る光の玉に向かって降り下ろした。
[はぁ!]
俺が剣を振った瞬間、剣が青く光輝いた、俺は自分の中から何かが沸き上がってくるのを感じた。
俺は初めて魔力を認識した。
[ふん!]
俺は飛んで来る光の玉を魔力の極限までこもった剣で難なくすべて消し飛ばした。
[行ける!]
俺がそのまま女に特攻しようとした、その瞬間だった。
[そこまでです、後は私がやります。]
[え?]
背後から声がしたので、後ろを向くと、薄い水色の髪は肩まで伸びていて、両サイドの髪は三つ編みにして後ろでまとめてある、背の高さはステラより一回り小さい白色のセーラー服の少女が現れた。
[誰だ?あんた?]
[私はユリカゼ.セイン。ここまでの健闘感謝します、後は私がここを受け持ちますので。]
突如として現れた少女は、自分を王室付き騎手だと言う。片方の手には刀が握られていて、漂う雰囲気も何処か鋭利な殺意の様な物を感じる、明らかにただ者じゃないのは確かだ。
[わかった、ここはあんたに任せるよ。]
正直言って不安は残るが、俺の方も正直言って大分キツイ、誰かに任せることが出来るならそっちの方が確実だろう。
[法王ユリカゼの名の元に、あなたを処罰します。]
そう告げて、少女は腰に携えてある刀に手をおいて......
(バン!!)
右足で勢い良く踏み込むと、俺でもやっと目で追える位の早さで間合いを詰めると......
(シャキン!)
少女は目にも止まらぬ早さで抜刀した、気付いた時にはもう既に女の首は宙を舞っていた。
[......!?]
俺は思わず目を見開いた、間合いを詰めるまでの所までは目で追うことが出来たが、抜刀する所は目で追う事すら出来なかった。
[ふぅ。]
少女は刀を振って付着した血を飛ばすと、そのまま帯刀した。
[おいあんた。]
[何でしょうか?]
俺は今起きたどんな出来事よりも優先すべき事があった。
[あの人は民間人だったんだぞ。]
[それがどうしたのですか?]
[どうしたって......お前自分が罪も無い人を殺したって言う自覚は無いのか!]
[自覚ならありますよ、ですがあの人はもう助からなかった、それに無意味に時間を取ってこれ以上の被害と怪我人を出す方が望ましくなかった、だから私は最善の判断をしただけです。]
[人を殺す事が最善だった訳無いだろう!]
[それではあなたにはあの人を殺さずに、これ以上の被害も怪我人も出さずにこの状況打破する方法があったのですか?答えは否です。そんな方法があったなら私が割り込んだ時点で無理をしてでも自分で片をつけると言いますし、それがどうしても出来なければ私にその方法を伝えて実行させる様に促す筈だからです。]
的を射た反論だった、口論において相手のペースに持ち込まれる事は一番避けたい事何だが、どう返しても勝てる気がしない。
[話がそれだけなら私はもう行きます、それでは......]
少女が去ろうとしたその時だった。
[おい......]
背後から男特有の低い声が聞こえた、後ろを向くと装飾が所々に施された豪華な服を着た背の高い男が立っていた。
[クロトくん!]
ステラが駆け寄ってきた。
[ステラ、良かった、無事で......]
[うん、私ならなんともないんだけど......]
そう言って、ステラは視線を少女の方に向ける。
[それよりこの人達は......]
[女の子の方はユリカゼ.セイン、男の方はまだわからない。]
そして俺はもう一度、男と少女の方を睨んだ。
[何勝手な事をしてんだ?道具。]
男の方は険しい顔をしている、対して少女の方は何処か恐怖の様な物を感じている様だった。
[すみません、不足の事態が起きたので私の独断で行動しました。]
[そうか......]
すると男は更に険しい顔をして、少女に近づくと。
[くっ......]
少女の髪を強引に掴み。
[ふん!]
そのまま少女を蹴り飛ばした。
[......]
少女は力無く地面に倒れた。
[おい!あんた何やってんだ!]
俺とステラは地面に倒れ伏す少女に駆け寄った、少女の頬は赤くはれていた。
[おい......]
後ろで少女をいたわっているステラに少女を任せて俺は男に向き直った。
[何だ?]
[この子はあんたの仲間じゃないのか?]
[仲間?違うな、それは道具だ、俺の言う事を忠実に実行するだけのただの道具だ。]
とことん虫酸が走った、人の事を道具呼ばわりするなどあってはならない、久しぶりに真剣な怒りを覚えた。
[成る程、つう事はお前か、そいつが人を殺す事を躊躇せず、最善だと判断する様に吹き込んだのは。]
[吹き込んだとは心外だねぇ、私はこの世で最も自然な物事の解決法を教えただけだ。]
[お前、性根から腐ってるな。]
俺も人の事を言えた達じゃないが、こいつのこの言葉はどうしても許せなかった、偽善者と言われるかもしれないが、俺だって許せない事の一つや二つはある。
[言っているが良いさ、だがそこまで言ったからには自分が正しいと証明する事位は出来るんだろうねぇ。]
[どう言うことだ?]
[簡単な事さ、私が提示した方法で君が私に勝てればそれは完全に私の負けだ、正しさを明確に図る定規なんてこの世界には一つしかない、それは強いかどうかだ、一個人が決めた正義などその一個人の固定観念に過ぎない、正しさを公平にそれも確実に図る事など結局は争いだ、武力の争い、知識の争い、争いの本質は正しさを決める事何だと私は思っている。]
[その考えもお前の一固定観念に過ぎないかもしれないぜ。]
[確かにそうかもな、だがこの場での正しさを決めるには最適な方法だと思うのだが違うかな?]
一理ある、筋は通っているし説得力も無い訳じゃない、だが肯定する気にもなれない、俺はこいつとは全く方向性も何もかも違う、だから俺はこいつの考え方も行為も許せない......だからこそ。
[良いぜ、お前の方法で正しさをを証明してやる。]
だからこそこいつのやり方で俺の正しさを証明するしか無い、相手の頭に根付いた固定観念を打ち壊すにはその固定観念に沿って内側から崩すしか無い。
[良いだろう、ならば君の正しさを証明して見せろ!]
俺は帯刀せずに握ったままだった剣をもう一度構え直した。
[ただし、君と戦うのは私ではない。]
何?
[君と戦うのは......そこに居る道具だ。]
[お前何を言っているんだ?自分の正しさを自分で証明することも出来ないのか?]
[勘違いしないでほしいな、私は別に君の茶番に付き合う義理は本来無いのだよ、私にとって君は取るに足らない存在だ、道具に頼って楽をするのは当然だろう?]
とことん虫酸が走る、何て野郎だと思った、こいつに自分の考え方を突き通す信念何て何処にも無い。
[わかった、なら俺が自分の正しさを証明出来たらユリカゼを自由にして貰う。]
[ほう、そう来たか、だがそれだと君が負けたときの代価はどうする?]
俺は迷わずこう言った。
[俺の強さの服従。]
[な!?駄目です!そんな条件をつけてしまったら......]
[うふさいぞ道具、これはこの少年と私の決め事だ口を挟むな......]
[はい......]
[わかったら立て道具、あまり私の手を煩わせるな。]
ステラは立ち上がって俺に視線を向けた。
俺も構えを取った。
[信じてるよ、クロトくん。]
[ああ任せろ。]
ステラはそれだけ言って観戦に回った、これはいよいよ負けられない、ステラはここまで勝手な行動をした俺を疑念の一つも無く信じてくれている。
だから......
[絶対に負けない......]
俺は剣に強い意志を込めた。
[すみません......]
そう言って、少女は踏み込み一気に間合いを詰めて来た。
[捉えた!]
(パキィン!)
神速のスピードで横腹辺りに迫ってくる刀を剣の刀身で受け止めた。
(カチカチカチカチ......)
剣はお互いの顔の前で静止し、競り合っていた。
[はあ!!]
俺は静止ししている状態だった剣に力を少し込めると、相手も条件反射で力を入れ返して来るであろうタイミングで俺は力を抜いた、当然刀身はいとも簡単に押し返されたがその時相手に僅かながら隙が生じた、俺はそのタイミングを逃さず首もと目掛けて斬撃を放った、だが相手も負けじと俺の斬撃を刀で弾き返してその隙を逃さず足を狙った斬撃を放って来たが俺もそれを弾き返し斜め上段から斬撃を放った、弾かれこそしたがその反動を利用して間髪入れずに二撃目を切り返す、そんな駆け引きとやり取りを神速の早さで5秒の間に20回程繰り返した後、俺は意表を付くと言う意味も込めて少女の太ももの辺りに回し蹴りを放ったが、脛の部分で見事に受け止められた。そして互いに距離を取った。
[ふぅ。]
俺はさっき受けた魔法のダメージがまだ残っていて、正直大分キツイ状況だ、相手はと言うと一貫してポーカーフェイスを貫き通している。
これ以上長引かせると状況が悪化するだけか......
そう思うのにも理由がある、ここまでの戦いを見る限り実力は拮抗している様に見えているが、それは紛れも無く相手が手加減しているからだ、一度でも剣を合わせれば分かる、王室付き騎士と言うからには攻めやすすぎる、あれ程の斬撃を打てる奴が満身創痍の俺ごときに遅れを取る筈がない。
[次で決めさせて貰う。]
[......望むところです。]
俺は剣にありったけの魔力を凝縮させた、すると刀身はさっき以上の輝きを放った。
[法王ユリカゼの名の元に、あなたを処罰します。]
すると、少女の周りにも青い光の粒子の様な物が飛散し始めた。
俺が剣に魔力を込め終わった頃には、剣を取り巻く光は既に爆発寸前まで膨張していた。
[煌王剣ルミナス、神具開放!]
[暁の一閃!]
少女目掛けて肥大化した光を一気に放出した。
対するユリカゼの方は飛散している粒子をすべて刀身に纏うと光に向かって一直線に駆け出した、光にぶつかる寸前の所で刀身の光の密度は何十倍にも膨れ上がり、刀身の長さが1.5倍以上にも延長した光の剣が作り出された。そして少女は光の刀を巨大な光に向かって叩きつけた、光の刀と光の凝縮体は数秒拮抗しあった後、光の刀に僅かなヒビが入り......
(パキィィィン!!)
音を立ててへし折れた、光の凝縮体の進行を阻む物は無くなりそのまま少女を飲み込もうとした瞬間、俺は一瞬の内に光に触れる寸前の少女を抱き抱え、容赦なく進行する光の凝縮体を回避して数十メートル先に着地した。
光の凝縮体は地面に着弾する事無く空の彼方に消えていった。
[ふぅ。]
正直言って始めからこうするつもりではいた、俺の目的はユリカゼの無力化だ、正しさを証明するために勝負こそしたが殺す必要性があるとは一度も言われなかったので、相手は知らないが俺に殺すつもりは全く無かった。
[......。]
少女は気を失っている。
[さぁ俺の勝ちだ、強さを示す事が目的ならこれで構わないよなぁ?]
男は興味無さげにこう言った。
[構わないよ、今回は君の勝ちだその道具は君の好きにして構わない。]
そう言うと男は呪文の様な物を唱えた。
[レイス家の名の元に奴隷ユリカゼを開放する。]
[これでそれは晴れて自由の身だ、おめでとう。]
俺は男を睨み付けた。
[......それでは私は忙しいのでね、ここらでお暇させて貰うよ、それではごきげんよう。]
そう言って、男は去っていった。
[クロトくん......]
ステラが駆け寄ってきた。
[......その子は?]
[大丈夫、気絶しているだけだ、時期に目を覚ますと思うよ。]
こうして、俺のこの世界での初めての戦闘は幕を閉じた。
正直冗談じゃないくらい疲れた。
ご愛読ありがとうございました!
前回の後編です。




