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運命を背負った少女と最強の守護者  作者: 英雄王ヨカ
最終章[終わりの時]
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最終章[終わりの時]最終話(運命を背負った少女と最強の守護者)

[ここが、心象世界ってやつか……]


生き物である限り、例えそれがどんな存在であれ持つ生きた証と情報が乗っている世界、王都発祥の荷物預かりの魔法倉庫のネットワークは、これによく似ている。


[ルミナス、ステラを探してくれ。]


ルミナスの干渉の力を使い、本格的に捜索を始める。


[何処だ。何処だ……]


膨大極まる広さを持つ数千年と生きた魔物の心象世界、その中から一体化してしまった人1人を探すなんて、無謀極まる事だ。

だが、それでも、諦めるつもりは無い。ルミナスの光が届く距離にある限り、必ず助け出す。


[ここが、最深部か……]


俺は、遂に最深部に辿り着く、ステラが居るのはここで間違いない。


[ステラ!!居るなら返事しろ!!]


広がる暗闇の中で、輝きを放つのはルミナスだけ、そんな中で必死に叫ぶ。


[頼む、約束したんだよ。絶対に助けるって…だから、返事をしてくれ!!]


何処かには居るんだ……なのに、どうして、居場所が分からないんだ。

掴めない手を探す。

例えどんな所に居ようと、どんな不可能が突きつけられようと、必ず向かいに行くと決めたんだ。





深い暗闇の中、私は意識を保つことすらせず、ただそこに居た。

自分に何が起きたのかなんて、簡単にわかった。


[ごめんね。クロトくん。]


そんな意味の無い思いのみが頭の中で反響する。

それでも、あの人達なら、必ず私諸共魔物を消し去り、この思い出の詰まった、残酷なまでに愛おしい世界を救ってくれると、そう信じていた。


ー……テラ…ステラ!!ー


闇の中で響く呼び声に、意識は戻ってくる。


ー何処だ!!ー


聞こえてくるはずの無い声に、嫌でも目覚めさせられる。

耳を疑った。

だが、どれだけ聞き直しても、時期を待っても、彼の声は聞こえてきた。

そして、段々とそれは近付いてきて、私の体は抱きしめられた。


[……え?]


その抱擁に、私は完全に目を覚ます。

果てしない暗闇の中、白いコートに純白の髪、優しい光を纏う美しい剣を携えた男の子が、私を抱きしめていた。


[クロト、くん?]


[ああ、やっと見つけた。

やっと、こうして抱きしめる事が出来た。やっと、見つけ出せた。]


少年の瞼には、一筋の涙が滴った。


[どう、して、来れたの?

その姿……]


さっきまでの彼なら、カッターシャツの上から紺色のコート、と言ったものだったはずだけど、今の彼は髪の色も、コートの色も全て真っ白…まるで、彼の存在全てが反転したような印象すら受ける。


[話は後だ。

とりあえず、この辛気臭い所を早く抜け出すぞ。]


クロトくんはそう言って、ルミナスを掲げる。


[解き放て…ルミナス!!]


銀色の剣は眩い輝きを放ち、暗闇を照らし、その眩しさに思わず目を閉じる。




[く、流石に……]


ユリカゼも、サイファーも限界を既に越えて戦っていた。

それが故に、一瞬生じた隙と揺らいだ精神力により解除された根源解放の力、その一瞬は巨人がユリカゼを捉えるには十分だった。


[しまった!]


ユリカゼは、死ぬ事を覚悟したが、巨人の手はユリカゼを捉える事はなく、しかもその巨人は、まるで何かに押さえつけられるように、動きを止める。


[これは……]


これをやった張本人、それは、ディバイン・リレイドそして、リア・ニルバーナだった。

彼は、霊力の操作、戦闘の技術共にずば抜けた才を持っていた。

霊装を持つことにより、魔法ではなく霊力を身につけたリレイドは、精神力の鋼の精神を持つ彼にとっては、それは無尽蔵な力の詰まった蔵だ。

一瞬に出力できる量と質は、リアとクルスのそれには及ばないが、それに類する程でもある程だ。


[ぐ、ぬ…ぬぅ、が……]


[流石に、凄い圧力だ……]


リレイドは、地面に剣を突き刺し、そこを起点に大量の粒子を放出し、その粒子を巨人にまとわりつかせている。

リアは、シャルルから力を与えてもらい。それを糧に、全力で重力魔法で巨人を縛る。

巨人の動きが止まった理由はこれだ。

彼は、自身の無限の霊力を枷を外して出力することによって、巨人の動きを止めたのだ。


[……フッ、あの男が出てくるまでの時間稼ぎ…この依頼、完璧に全う…する!]


リアも負けじと、魔法を行使する。

それでも、消耗した今の彼女では長く持つはずもない。

そして、全身から血が吹き出そうとも、気にする素振りも見せず、粒子を放出するリレイド。

彼とて人間だ。

人の子である限り、法則や限界は存在し、例え無限の霊力を誇ろうと、リアやクルスの様に一瞬にしてその無限を出力できる訳では無い。

そこには明確な枷があり、それを解けば、無事には済まないのが常だ。


[ぬぅ…あぁ……]


[まずい、限界…だ。]


リアの体力に限界が来て、魔法が解除された。

彼の粒子は、着実に巨人の力に押され始めた。

そして、その時は来る。


[すまん。クロト……ッ!!]


縛りが解かれると共に、巨人は腕を振り上げ、リレイドを潰そうと振り下ろす。

その場で静かに立ち尽くすリレイドを守ったのは、1人の魔人だった。


[これぞ、危機一髪ね。]


とてつもない衝撃のそれを、展開された魔力障壁と、何よりも硬い盾となり得る彼女自身が受け止める。


[貴様は、魔神の……]


[そう、流石に普通の人間が頑張ってるのに、魔神の私が寝てる訳にも行かないでしょ?]


体へのダメージは、明らかにクルスの方が上だ。

リレイド達は、衝撃波を受けただけだが、クルスやアインはこの化け物の攻撃は直に受けたのだ。

今この瞬間も、この巨人からの攻撃を数枚の補助魔法と身体ひとつだけで受け止めているのだ。


[まあ、手伝うって言っても、もう戻ってきた見たいだけどねッ!!]


最後の力を振り絞り、クルスは巨人の腕を弾き返す。


[後はそっちに任せたわよ!!]


クルスが言ったその先には、1人の少女を片腕で抱いて宙に浮く少年が居た。


[ああ、これで本当に最後だ。]


向けられた切っ先一点に、今までとは比較にならない程の優しい光が宿る。


[終わらせよう…END(エンド) HISUTORIA(ヒストリア)!!]


放たれた一撃が、この物語の終焉を彩る光となり、巨人はそれを証明するように、灰になって崩れて行った。




[やったね。クロトくん!!]


輝かんばかりのステラの笑顔。


[ああ、これで、本当に終わったんだ。]


[クロト!!]


四方から、皆が飛んでくる。


[やった、のか?今度こそ……]


[終わったよ。今度こそ、あいつは戻っては来れない。]


殺すよりも、確実な方法で仕留めた。

俺が使ったのは、間違いなく根源解放だが、それの対象にしたのは、あの巨人だけじゃなくこの世界自体もだ。

この世界とあの巨人、両方に同時に根源解放を掛けたことによって、一時的に巨人と世界は完全にリンクした存在となり、あるひとつの手法が可能となる。

それは、あの巨人の世界そのものからの隔離と、消滅の連鎖を意味する。

ルミナスの力は、分離と干渉だ。

今の俺なら、そんな封印じみた事をしなくても、殺し切れる自信はあるが、より確実なのは消滅だ。

生き物は世界にいてこそ成立する。

あの巨人が生き物である限り、外に出る事は出来ないし、外で生き抜くことも叶わない。

あの巨人は、世界の狭間で消滅を永遠に続けるのだ。


[そうか……]


他のみんなも、既に事情は把握済みか。


[皆、どうしたの?そんなに暗い顔して……]


ステラだけが、困惑している。


[ステラ、ちょっと早いけど、もう時間もない……お別れだ。]


[それってどういうこと?

お別れ?何それ……全然意味が分からないよ!]


本気で怒った顔をして、俺の両肩を揺する。


[ねぇ、冗談だよね?

いつもみたいに、私を茶化してるだけなんだよね?]


[……]


俺はもう、何も言うことは出来ない。何か言ってしまったら、俺も泣いてしまうから、怖くなってしまうからだ。


[ねぇ……冗談だって、言ってよ。]


俺の体は、既に消え始めている。

魔神の力を無理やり押さえ込んだことによる、存在の定義崩壊だ。

ステラは、それを理解して、泣き崩れる。


[こんなの……こんなのあんまりだよ。]


本当なら、何も言うつもりは無かった。だけど、これだけは言わねばと思って、言ってしまった。


[生きていさえいれば…また、会えるさ。]


俺はそう言って、ステラの頭を撫でる。


[だから、その時まで、俺の事を覚えていてくれ……そして]


[今まで、一緒に居てくれてありがとう。]


次の時、クロトの姿は消えていた。

ステラは、夜明けを涙で明かした。

最強の守護者は、この世界から、消えた。





[う……うん?]


覚めるはずのない目が、微睡みの中開く。


[ここ、は……]


見覚えのある部屋、間違いなく前の世界での俺の部屋だ。


[夢、じゃないか……]


手には、ベットの上にはルミナスと、ステラから貰ったブレスレットが転がってある。


[約束、果たさないとな。]











月日は流れた。

父は、行方不明のままだ。

今は、母とこの国を支えている。


[あれから…もう、6年ですか。]


城のテラスに、ユリカゼが出てくる。

子供のような幼さとは引き換えに、既に大人としての魅力を既に持っている。

今は、剣聖の座を正当に受け継ぎ、歴代最強の名を欲しいままだ。


[……長いようで、短いような。

今、あの人は、一体どこで何をしているんでしょうかね。]


あの人、未だに顔は鮮明に思い出せる。声だって、今も尚頭の中に残っている。

彼は、消滅した。

でも、私は何処かで生きていると思う。だって、あの人が死ぬなんて、想像出来ないもの……今も、きっと何処かで、元気に笑って生きていると思う。


[……それでは、私は仕事に戻りますね。冷え込みますので、体調を崩さない内に部屋に入ってくださいよ?

ステラさん。]


綺麗な白髪、6年前の元気な子とはイメージが変わり、お淑やかで、何処か寂しさを含んだ表情と、親譲りの美貌。

今はすっかり、大人の女性だ。


[うん、ありがとう。セインちゃん。]


ユリカゼは、1度会釈して、中に入った。


[……]


ただ、無言で月を見上げる。

あの日を思い出すように、夜の冷え込みなんて眼中に無かった。


[おいおい、そんな所にいつまでも居たら、風邪引くぞ?]


ステラは、驚いて振り向く。

テラスの入口を背に、佇む少年。

幻かと疑った。何度目を擦っても、それは消えない。


[あ、あぁ……]


純白の髪と、ヒラヒラと白いコートの裾を風に舞わせて、腰に剣を携えた少年…6年前に何度も見た顔。


[久しぶりだな。こっちだと……6年か?]


何食わぬ笑顔で、彼は言う。


[遅、過ぎだよ……]


[ごめんな。もっと、早く帰ってくるつもりだったんだけどな。]


言いたい事、聞きたい事、沢山あるけど、でも……


[おかえりなさい……そして]


母から、あの後聞かされた。一言のメッセージ…その返事をする。


[私も、好きです。クロトくん。]


月明かりを背にして、白髪の少女は言う。

そして、私達はきっとこの先、幸せに生きていけるはずだ。

何故、クロトが生きていたのか、この世界に戻ってこれたのかは分からない。分からないけど、私達を苦しめた運命の歯車が、最後の最後に残していった。優しさだったのかもしれない。


[ただいま、ステラ。]


物語は終わる。

だが、俺達の未来は終わらない。これからが、俺達にとっての始まりだ。


そう、これに名を付けるのだとすれば……


ー最強の守護者と運命を背負った少女の物語だー

やっとの事、100話丁度で完結です!!

本当に駄作も良いところでしたね、満足はしてますが、次回作はもっと作りこみたいですね。

拾えてない伏線は番外編で何とかします。

とにかく、お疲れ様でした。

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