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紡ぎ窓  作者: 千岳 緋彩
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プロローグ

初めて物語を書きます、よろしくお願いします

 祖父が亡くなった。


  享年99歳と、とても長く生きたと思う。

 小さい頃はよく祖父の庭で遊んでいた。

 ミカンやタケノコ、カブトムシにクワガタとかとか。


  とても広い庭だったので一方的な隠れんぼをした時は、近所の人や消防団まで集まる大騒動となり、大人になってからも未だに親戚一同の笑い話となる。

 我ながら結構な悪戯坊主だった気がするが、祖父がよく「みっちゃんは良い子だなぁ」なんて言うものだから、それが何か誇らしくて度を越した悪戯の歯止めになっていた。


  そんな祖父が今は綺麗に化粧をして棺桶で眠っている。

  私を肩車したその肩は細く脆いように見えるが、それでも安心感を覚えるのは私にとって大きな存在であったからだろう。


  通夜や葬式などが概ね終わった頃、私は叔父の家となった“じいちゃんち”を訪れていた。


「叔父さんこんにちは。すみません、あまり手伝えなくて……。まだ何かあれば今日は夜まで手伝えますよ」


  本邸の掃除を一通り終え休憩中だった叔父にそう申し出たところ、敷地の隅にある倉庫がまだ手付かずだと言った。


「あそこは暫く誰も入ってないからね。元気だった頃はワシがやる! なんてあまり他人を近づけなかったからね……。姉さん……あぁ、みっちゃんのお母さんなんて真っ先に掃除に行っけど、重い物が手前に多いみたいで、すぐに諦めちゃったよ」


  確かに母は生前からあそこを掃除したがってたな。

 子供の頃はあそこに私と祖父だけの秘密基地を作っていたが、その様子だともう埋まってしまっただろうか。


  叔父に台車を借り、とりあえず中の物を外に出すと告げ、私は倉庫へ向かった。


  外観は整っていたが仲が非常に埃っぽく、4つある窓をなんとか丈夫そうな物を踏み台にしながら開けた。

  40分ほど適当に中の物を出していると、一角に蚊帳で包まれた空間があった。

  「じいちゃん、残しててくれたのか……」

  そこには私と祖父で作り上げた秘密基地がそのままに残っていた。

  片付けの事など頭から吹き飛び、嬉しさと申し訳なさと、何より寂しさが私を蚊帳の中へと押し込んだ。

  そこには祖父と遊んだ将棋や折り紙、謎の手作り彫刻など、かけがえのないガラクタで溢れていた。

 

  そんな思い出の中で5分ほど黄昏ていると、フッと風に乗った花の香りが私の鼻孔をくすぐった。

  匂いの元を探りにそちらへ顔を向け、私の懐古は違和感へと変わった。

  何故ならその方向は窓が無く倉庫の隅の蚊帳のさらに隅の方だったからだ。

 

  幽霊なんて信じていない、いや、信じたくない自分だが、やはり怖いもの見たさか、私は匂いの正体を探るべく中腰で隅へと向かった。断じて腰が引けていたわけではない。

  思い出達をそっと脇にずらしつつ奥の物を取り出していくと、1メートル四方の薄い何かに布がかけられていて、その布が時折風も無いのに揺れていた。

 いよいよ鳥肌が立ちそうだったが、秘密基地にいるせいか、冷静な判断より早急な解決が私に布を取り払わせた。

  「額縁? ……いや、そうだ、窓……だったっけな?」

  それは祖父がかつて、ワシの青春だよ、などと訳のわからないことを言いながら祖母の断捨離から逃してきた窓枠だった。

  「こんなもの残ってたのか……青春、じゃあ捨てるに捨てられないじゃ無いか、どうしようか……。……………なんて現実逃避してる場合じゃ無いな。なんだこれ? どうなってんだ?」

  そう、藍色に染まり綺麗な彫文がある窓枠の中心、本来ガラスがはめ込まれているであろうその何も無い空間から確かに花の香りを乗せた風が吹いているのだ。

  枠の内側に何か仕掛けがあるのかと枠の中に顔を入れた瞬間、私の意識は手放された。



右も左も分からない!でもとりあえず頑張っていこう。

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