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私が私の太陽と出会うまで  作者: 北乙女
第1章ー幼少期ー
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第2話

皆さんが気になったことはある恋愛を詰め込んだお話です。学校の先生と恋に落ち、裏切られ、夜の世界の人として生き、夜の世界の人と恋に落ちる女の子のお話ですが、


今回幼少期の続きから、どうぞ。


そんな代わり映えのない知世の生活に変化が起こった。


知世が小学三年生になったある日、学校から帰ってくると、母親がやけに機嫌が良さそうだ。


「とも、こっち来な。」


父親がいない時に母親が自分を呼ぶ、イコール怒られるという方程式が出来上がっていた知世は、恐る恐る母親の元へ行く。


「…どうしたの?」


「赤ちゃん出来たの。」


「……。」


は?

知世は完全に時が止まった。いつも怒られている理由と同じくらい意味がわからない。知世は頑張って怒られない言葉を探す。


「…妹か弟生まれるってこと?」


「そうそう。」


今日はつまり怒られないってことかな?

まずそこで、一旦知世の強張りがほぐれる。


「もう怒らせるようなことしないでよ?赤ちゃんに聞こえるんだから、恥ずかしいでしょ?」


機嫌の良さそうな母親。父親と会話している時にしか見せない顔だった。


その日は私の学校での話を聞かれることもなく、父親が帰ってきて妊娠した話で持ちきりになった。


その頃知世は、テストで平均に100点を取るようになっていたので、母親の妊娠を期に、帰って来てからの学校の話も聞かれなくなったので、しばらく平和に日々が過ぎていった。




母親の妊娠五ヶ月頃の事だった。

知世は久々に100点を逃してしまった。

家に恐る恐る帰ると、案の定母親の暴力が始まった。


「最近100点取ってるからって調子に乗ったんだろっ!?あ"あ"?」


知世はただ耐えた。耐えることしかできなかった。

耐えて耐えて耐え抜いたらうさちゃんを抱きしめてお話しよう、その事だけを考えて…。


知世の予想よりもはるかに早めに、母親の怒りが収まった。

知世の涙と震えは収まらなかったが、妊娠って凄いな、と知世は思いつつ、溢れる涙と恐怖を、うさぎのぬいぐるみを抱きしめて癒した。



うさぎのぬいぐるみを抱いて泣いていると、急にドカドカと足音と共に母親が叫びながら私の元に向かってきた。


「いい歳してそんなもの持って泣いて恥ずかしいんだよお前っっ!!!」


母親がぬいぐるみを知世から引き剥がして床に打ち付け、何度も踏みつけた。


「やめてっっっっ!!!!」


初めての抵抗だった。知世は母親に手を踏まれながらもぬいぐるみを救い出そうと藻掻いた。母親にとって、娘の初めての抵抗が衝撃的だったのか、頭を両手で押さえて髪をぐしゃぐしゃにしながら「ああああああっっ!!!」と叫んだ。

「っ!!いい加減にしろっ!」

母親は自分の足元で抵抗する知世の顔を足で蹴り飛ばし、それでもすぐ、ぬいぐるみに向かってくる知世の顔を踏みつけた。

「おらっ!人の話聞いてんのかよっ!!」

それでも藻掻く知世からぬいぐるみを遠ざけるように拾い上げた。

「お願いっ!返して!!!かえしてーっ!!!!」

何度も何度も知世は叫んだ。

母親の足を掴み、爪を立て、顔を踏んでいる足を避けようとした。母親はそれでバランスを崩し、よたよたと後退った。


___今だ…!!


知世がそう思い、立ち上がろうという時だった。


「…っなんでお前はいっつもいっつもっ!!!怒らせるようなことしかしないのっ!」


母親の言葉が先なのか、蹴りが先なのか、知世にはわからなかったが、知世は蹴られた。その後ろにタンスがあり、背中が強く打ち付けられ一瞬呼吸が止まる。

「…っ!!」

痛くて身体が思うように動かなかった時、


___ビリビリビリッ


勢いよく嫌な音がした。


「こんなものあるから…っ!!!」


知世は、目の前で起こった出来事を理解するのに一瞬遅れたが、理解した瞬間、叫びと共に悲しさと怒りが身体中の痛みを消して駆け巡った。


「いやぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」


母親はぬいぐるみの頭と胴体を引きちぎったのだ。怒り任せに。

知世は母親から、もう綿の出てしまったぬいぐるみの頭と身体を奪い、突き飛ばして、知世は悲しい姿になってしまったぬいぐるみを抱きしめた。


酷いっ…!ここまでされるような何もしてないじゃん!許せない…。_____


母親は知世の反抗的な態度が気に食わなかったのだろう。さらに激しく知世に蹴りを入れ始める。いい気になるな、という言葉をひたすら繰り返しながら。


____この女が死ねばいいのに…。死ねばいいのに。ほんとに死ねばいいのに…!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね


知世は何度も何度も、心の中で叫んだ。

これほど人に死んで欲しいと憎悪を膨らませた小学生はいないだろうという程に。


父親の帰ってくる時間が近づくと、母親からの猛襲は止んだ。知世の身体はもう痛みを通り越して、身体中が熱くて沸騰しているようだった。身体が思うように動かない。叫び過ぎて声ももう出ない。知世は腕の中にいるぬいぐるみの、見るも無惨な姿に、涙が今さっき泣き始めたかのような勢いで頬をつたい涙を流している。


母親はぐったりと座り込み、小さく、微かに知世に聞こえるように、しかしはっきりとした言葉を口にした。


「…………ほんとにもう…死んでくれ……。」


その後しばらくして、父親が帰ってきた。



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