あたしのかわいいおじさん
ジョン・ターナー、アル中手前の中年作家。
俺が玄関のドアを開けると、16、7の女の子が立っていた。
くすんだ金髪の長い髪、そばかすだらけで、生真面目な瞳をしている。黒いタンクトップにデニムのミニスカート
という格好だ。
…?誰だ…?
「あの…、ジョン・ターナーさんですよね。」
上目遣いで、聞いてくる。
「そうだが。」戸惑いつつ応える。
突然、そのコは俺に抱きついてきて叫ぶように言った。
「あたしッ、やっと大人になりました!約束通り、結婚してください!!」
驚きとその他さまざまな感情のせいで、思考が停止した後
俺は口を開いた。
「…あーっと、まず君は誰だ?」
「覚えて…ないんですかぁ?」
みるみる瞳に、涙が溢れる。
「と、とりあえず中に入ってくれ…。」と部屋に入れてドアを閉める。近所の連中に見られたら、どう思われるか…。
「…うっ…うっ…」
「それで、君は誰だ?」
「ううっ、あたしの…父の友達の…結婚式で、言ったじゃ…ない…ですか。ひっくっ。」
「君のお父さんの友達の結婚式で?…なんて?」
「君が大きくなったら…結婚してあげようって…。」
思い出してみる。が、さっぱり記憶になかった。
「冗談だろ。」
「いいえ!結婚してくれるって言・い・ま・し・た!」
涙目で睨みながら、言い切る。
「それで、俺と結婚するってのか!?」
そのコはうなずく。
「馬鹿言うんじゃねぇ!俺とお前さんとは親子ほど年が違うじゃねぇか。」
「年なんて関係ないですよ!」
「いや、あるだろ…。親父さんはなんて言ってんだよ。」
「勝手にしろって家を追い出されました!」
「はあ!?おま、お前、家出してきたのか!」
「母さんは賛成です!」
「母ちゃん、頭大丈夫か!?許すっつってんのかよ!」
「そうですよ!。だから、そのうち、父さんも説得してくれます。」
「俺が親父なら絶対許さんぞ…。」
「うううっ…じゃあ、結婚してくれないんですか。」
「あのなぁ、年齢どうこう以前に、俺は君の名前も知らないんだぞ。」
「ジェシカ・ボーロックです。」
「ボーロック?あの出版社の?」
「そうです!父を知ってますよね。」
「マイケル・ボーロックか。今、何をしてる?」
「週刊誌の副編集長になったらしいですよ。」
「そうか。頭のいいやつだったな。もう奴もいい年か。」
「そんなことより、どうしたらあたしと結婚してくれるんですか。」必死な顔で尋ねてくる。
「…男はな、追われると逃げるんだ。…だからいい子は、お家に
帰りなさい。」
「また来ます。」
強い意志を示して彼女は帰っていった。
おじさん、なんか疲れたよ…。