表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/23

ブラックカード


 階段を降りると、そこにはたくさんの人たちで埋め尽くされていた。見ると、各々が違った武装をしており、胸元には様々な紋章を光らせていた。つまりは俺と同じようには異世界転生した奴らなのだろう。


 ルンルンの姿を探して歩いていると、皆の視線が俺へと注がれているような気がした。気のせいか?


「やぁ、美しいお嬢さん」


 と、声を聞いたと同時に肩を掴まれた。そこには銀髪の男がいた。


「何か?」


「いや、見たところ異世界転生登録を済ませたばかりだと思ってね…困っているかと思いまして」


 そう言って、銀髪の男は白い歯を覗かせ笑った。


「僕はエクシーズ。貴女は?」


「俺はシノミヤ」


「…俺?」


「あ、ああ…つい癖で」


「そうですか…ふふ、可愛らしい口癖なことで」


 いかんいかん、どうも女体化に慣れていない。いや慣れちゃダメだよな。


「お気遣いありがとうございますエクシーズさん。でも大丈夫です」


「ですか。余計なお世話でしたね…因みにですが、まだクランに入ってはいませんよね?」


「クラン?」


「一緒に同行する仲間のことです」


「ああ、成る程。それならーー」


 と、俺が言いかけたその時だった。


「ちょっとちょっとちょっと!そこの白髪頭!」


 ルンルンは叫んで、ズカズカと人混みを強引に分けながら姿を現した。


「何か?」


「#それは__・__#私が先に目をつけたのよ!ちょっかい出さないでくれる?」


 ルンルンは怒り気味には言った。#それ__・__#とは、つまり俺のことか?


「決まってるじゃない!貴女は私のもの、そうでしょシノミヤ!?」


「あ、ああ…」


「待って下さい。正式なクラン登録は済まされたのですか?」

 

 エクシーズはルンルンに尋ねた。どうやらクランにも登録ってのが必要らしい。


「ま、まだよ!何か文句あるわけ!?」


「ええ。登録がまだなのでしたら、我々にも交渉の余地はあります…違いますか?」


「ぐぬぬ…」


 ルンルンはたじろぐと、俺の手を強引に掴んで、


「私はシノミヤじゃなきゃ嫌なの!もう決めたの!」


 涙目混じりにはそう言った。どうしてそこまで俺を求めるのか意味が分からない。


「だってシノミヤ、可愛いんだもの!私は美しいものが好きなの!誰にも渡したくないの!」


 お前はどこぞのベアトリーチェかよ。


「…それでも決定権はシノミヤにあります。どうですかシノミヤ、我々のクランに入りませんか?」


 エクシーズもまた俺の手を握ると、キラキラとして瞳を輝かせ詰め寄ってきた。


「ちょっと、私のシノミヤに勝手に触れないでよ!あんた、どうせシノミヤの顔目当てなんでしょ!?」


「貴女と一緒にしないで下さい」


「な、何よ!シノミヤ、貴女お金が必要なのよね!?だったら、ほら!」


 ルンルンはポケットから一枚の金貨を取り出すと、


「1000ゴールドよ!まずこれで我慢しなさい!」


 そう叫んで、無理やり俺の手の中に金貨をねじ込ませてきた。俺はひょんなことから1000ゴールドを手に入れてしまった。


「ほう、金で釣ろうってわけですか?だったらーー」


 エクシーズは負けじと、俺の手の中に金貨2枚をねじ込ませて、


「2000ゴールド」


 ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、ルンルンを見た。よし、これで3000ゴールド。


「は、はぁ!?あんた馬鹿なの!?卑怯よ!?」


「僕はどうしてもシノミヤが欲しい。貴女がお金を持ち出すというならそれに応えるまでです」


「このケダモノ!」


「貴女こそ」


 いいぞいいぞ、もっとやれ。俺がそんなことを思っていた、その時だった、


「ちょっとお待ちを」


 そう言って、見覚えのある顔が現れた。それは先程、俺を案内してくれた異世界案内人Aである。


「あんた…」


「おやおやシノミヤ様。さっそくモテモテですね」


 異世界案内人Aはニッコリと笑って言って。相変わらずの笑顔である。


「あんた、異世界案内人風情が何のつもり!?」


 ルンルンは食ってかかった。


「まぁまぁ、確かに私は普段は異世界案内人Aでございますが、一人の男でもあります」


 異世界案内人Aは余裕そうな態度で言って、胸元から一枚のカードを取り出した。真っ黒なカードだった。


「そ、それはっ!?」


 エクシーズはたじろぎ、異世界案内人Aの黒いカードを見ては、そっと俺の手を離した。


「負けました…」


 負けた?何のことだ?


「ぶ、ブラックカード…ですって?」


 ルンルンは驚愕そうに呟いた。おいおい何だよこれ?ブラックカードってなんだ?


「まさか…世界でも有数の富豪しか持てないとされるブラックカードをお持ちとは…負けました…」


 エクシーズは項垂れて、そのまま残念そうには去っていった。


「…し、シノミヤぁああ…」


 ルンルンは俺を抱きしめてはワンワンと泣き喚いていた。一体何が起こっているのか分からないでいる俺に異世界案内人Aは笑って、


「シノミヤさん、貴女を買います。20000ゴールド…このブラックカードで」


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ