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魔物達に宣言する


 冷静に見て、魔物はザッと何百体以上はいることだろう。見上げるほどにバカでかい魔物もいれば、膝丈にも満たない小さい魔物まで、聞けば皆んな俺に会うために集まってきたとか。


「良かったな、主」


 ガーショップは体をスリスリ俺に擦り付けながら言った。

 いや良かねーよ、むしろ大迷惑だよ。


「…これ、どうしたらいいんだ…」


 魔物達は興奮覚めならないといった様子。皆、目をキラキラと輝かせながらビルマ・マルクレイドの生まれ変わりとされる俺を見つめてきている。眩しい程の視線、熱い視線だ。


「ママ、ドウシタノ?」


 ゴブリンが不安そうには俺を見上げて言った。他のゴブリン達も同様にはソワソワとした様子で俺を見上げる。いかん、俺の不安な気持ちが伝染してしまったようである。


 俺はしゃがむと、ゴブリン達を抱きしめて、


「何でもないよ。大丈夫」


「ソウ」

「ヨカッタナ」

「コマッテタライッテクレ」

「チカラニナルヨナ?」

「ナ?」


 その気持ちは有難く受け取っておくとしよう。だが、現状はゴブリン達が思っているよりも深刻だ。


「なぁガーショップ、人間達は?」


「この奥の洞窟に閉じ込めてある。見張りをつけてあるから、安心だ」


「そうか」


 どうにかして逃げしてあげないとな。それにはまず、この魔物達をどうにかするのが先だ。


 ただそうは言っても、退治するとか、そんな物騒なことはしたくないし…てかできないし。何たってこの数だ、忽ち殺されてしまうのは俺の方だろう。それに、


「ビルマ!!」

「お帰り!!」

「ヨク戻ッテキタ!」


 などと、今も尚俺に声をかけてきてくれている魔物達に妙な愛着が湧いてしまっているのも事実だ。


 といっても俺は叛逆の竜皇女ビルマ・マルクレイドとか言う物騒な奴じゃないし、ただそいつの生まれ変わりってなだけだし、考え方も違うだろうし、てかよく分かんないし…


「ガーショップ、皆は俺に会いに来たんだよな?」


「そう、会いに来た」


 ガーショップは頷いて言った。


「じゃあさじゃあさ、別に人間達を殺そうだとか、そんな物騒な考えを持ってるわけじゃないんだよな?」


「…わからない。でも、中にはそう言った考えを持っている魔物も、いると思う」


 ガーショップは続けて、


「俺とか」


 と、そう呟いた。いや待て、お前そんな物騒な考え持ってたわけ?


「だって人間、美味しいんだもん」


 ガーショップは舌で口元を舐めずり回して言った。


「はぁ、そうだよな。じゃなきゃ俺たちを襲ったりしてないもんな…」


「でも、いつもよりは抑えた、つもり。主の仲間も、だから殺さなかった」


 ああ、成る程。少しぐらいは遠慮してくれていたわけね。


「ありがとな」


「礼には及ばない」


 鼻高々にはガーショップ、まるで良いことをしたとは言いたげな表情を浮かべる。


 まぁ過ぎた話はこの変に。今はこの魔物達をどうするか、そこに焦点をあてよう。


 ガーショップ曰く、中には人間を殺したいと考える魔物も少なからずは存在していて、ということはつまりこのまま放っておけば、今以上の被害に拡大してしまうやもしれないということだ。それだけはやめさせなくては…


 俺は「よしっ」と気合いを入れると、一歩ずつ魔物達の前へと出た。魔物達に囲まれて、もの凄い圧迫感である。緊張する…でも、

 

「皆!!注目ッーーー!!」


 手を叩いて叫んだ。そんな俺の叫び声に呼応するように、魔物達は一斉に雄叫びをあげた。


 一回深呼吸を挟むと、腰の小剣ーーー崩天連鎖の刻剣[デーモンズ・アイクラッド]を引き抜き、天高く#翳__かざ__#して見せた、次の瞬間、魔物達のどよめき声が広がる。


「あ、あれは!?」

「デ、デデデ、デーモンズ・アイクラッド!?」

「ではやはり…ビルマ、ビルマは人間達に反旗を!?」


 いや違う!俺は別に人間達を殺したいだなんて思ってないぞ!?


「お言葉だが主よ、[デーモンズ・アイクラッド]はビルマがレッドドラゴンと契約を交わす時に、人間を滅ぼすという契約の元に手にした剣とされている」


 ガーショップはサラリと口を挟んだ。

 それを早く言え!


「こほん、とりあえず皆落ち着いて聞いてくれ」


 咳払いを挟んで言った。仕切り直しといこうじゃないか。






 落ち着きを取り戻すと、率直に自分の考えを口にした。


「とりあえず、皆一旦帰ってほしい」


「「「えっ!?」」」


 魔物達の戸惑いに満ちた声が児玉する。うん、予想していた反応だ。


「主、冗談か?」


 いつの間にやら魔物達の前へと出たガーショップは、魔物の代表とばかり尋ねて来た。魔物達の総意と言ったところだろう。


 俺は首を横に振って、ゆっくりと口を開いた。


「いいや、これは俺の本意だ。俺は荒事をする気は更々ない!!」


 覇気を込めて宣言した俺の声が響き渡る。


「び、ビルマ?」

「本気か?」

「いや、冗談だろ?」

「でも、確かに言っていたぞ?」


 ザワザワと騒ぎ出す魔物達。中には苛立ちを浮かべている魔物もいるようだ。やばい、やっぱりこうなるわけか…


 まぁ、ある程度予想はしていたがな…だったら、


「勘違いしないでほしい!俺が言いたいのは、#今はまだ__・__#、ということだ」


 空間が一気に静まり返る。先ほどの魔物達の動揺が嘘のように消え失せていた。


 そんな魔物達の様子に、イケる、と根拠のない自信が湧き上がってきたいた。故に、畳み掛けるようには続けざまに、


「これから、俺は旅に出る!かつて、叛逆の竜皇女ビルマ・マルクレイドがそうしたようにな…そしてだ、旅を終えたその時になって、俺は判断しようと思う…」


 なるべく低い声色でーーー女体化して可愛らしい声のままではあるが、それでも今の自分で作れる最恐に低い声色で、


「旅を終えた後に於いて、人間を滅ぼすか、否か…決めようと思う。文句のある奴は前に出ろ…ビルマ・マルクレイドの生まれ変わり、このシノミヤが直々に粛清してやる…」


 言っちまった…

 柄にもないこと言っちまった…そんなつもり更々ないんだけどな。


 俺は恐る恐る魔物達を見回してみた。怒りでも悲しみでもない、どうとでもとれる顔色を浮かべた魔物達は、次の瞬間、


「「「グゥオおおおおッ!!!」」」


 雄叫びを上げた。しかもだ、さっきより増して、最高潮の雄叫びである。え、何で?


「…あ、主、感服した…物凄い、覇気である…」


 そう言ったのはガーショップ。そして、


「ママ!カッコイイ!」

「ステキ!」

「サイコウ!」

「スゴイナ?」

「ヤハリオレタチノママダ!」


 とは、例の如く一斉に抱き着いて来た。


 ああ、どうやら成功したらしい。


「ははは、良かったよ、ほんと」


 まぁ、先が思いやられるがな…




 

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