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異世界登録


 かくして、俺は女体転生を果たした。

 どうしてこんな事になっているか考えるよりも先に、一先ず服を着る方が先だ。


「にしても、スカートってのはこんなにも足元がスースーするものなのか」


「ええ、私も一回しか履いたことはございませんが、中々興奮しますでしょう?」


 と、異世界案内人Aは笑い混じりには言った。どうやらこの老人は正真正銘の変態であるらしい。


「まぁいいや。で、これから俺はどうすればいいんだ?」


「そうですね、取り敢えず異世界転生者登録案内窓口にて正規登録します。それで初めて貴女は正式な異世界転生者として認められるのです」


「ふーん、で…この体は?」


「と、いいますと?」


「いやいや、この女体化現象についてだよ。何かの間違いだろこれ?」


 そう言って改めて体を見て、やはり俺の体は女体化していた。俺の目が腐ったわけではない。


「…間違いはないですよ。女神様の選定の儀を受けたのでしょう?」


「ああ」


「だったら、誤りはないはずです」


 異世界案内人Aは自信たっぷりには応えた。


「…ほんと何も知らない?」


「ええ」


 嘘をついている風にも見えない。どうやら本気で何も知らないらしい。


「異世界転生者登録後に一度女神様に聞いて見てはいかがですか?」


「え、そんなこと可能なのか?」


「ええ、一日に一度、女神様と心の中に会話が可能なのです」


 異世界案内人Aはそう言って、「ただ…」とは意味深に呟いて、


「女神様との交信には10000ゴールドが必要となります」


「はぁ、何だそれ。金取んのかよ?」


「みたいですね」


「因みにその10000ゴールドって結構な額なのか?」


「そうですね、貴女は最初下級冒険者になりますので、下級冒険者であるならば毎日クエストをこなしたとしても…大体一年程はかかるのではないでしょうか?」


「…冗談だろ?」


「いえ、本当です」


「因みに分割払いとかって効く?」


「分割払い?」


 異世界案内人Aは首を傾げて訊いた。その様子からこの異世界で分割払いという概念がないことを悟る。


 結局、女神との交信は見送らざるを得なかった。





 俺は異世界案内人Aに連れられて、綺麗なオフィスのようには通された。オフィスといっても生前の世界で知っているようなものなんかじゃない。ファンタジー的な感じだ。


 異世界案内人Aはオフィスの窓口にまで俺を通すと、「では、私はこれて」と笑顔では言い残して去っていった。最初から最後までよく分からない老人だった。


 窓口にて、綺麗なお姉さんに渡された一枚の用紙に目を通す。


 [貴女のお名前を記入して下さい」


 と、用紙にはただそれだけが記されていた。見たことのない字だったが、読めるし、一文字一文字をちゃんと理解できている。


 俺が用紙に[シノミヤ]と記入すると、お姉さんはニッコリと笑って、


「では、異世界転生者さん。手続きを致しますので少しお待ちを」


 と、それだけを告げてどこかへと消えていった。よく分からないが、異世界転生者登録はこれで終わりらしい。名前を記入して終わりって一体どういうことだよ…


「あら、お嬢さん。貴女も異世界転生者ですか?」


 ボケッと天井を眺めていた時だった。後ろからの声を聞いて、振り返ると、そこには赤髪の少女が立っていた。整った顔立ちの、黒いドレスを着た綺麗な女の子だった。年齢は多分、俺と同じぐらい、16歳とか17歳とか、そんな辺りじゃなかろうか?


「…そうだけど。貴女は?」


 俺は少女に尋ねた。


「私はルンルン。貴女と同じ今しがたここで異世界登録を行ったばかりですの」


少女ーールンルンは真っ赤なロングヘアーを耳かけては胸元につけられた金色の紋章を指差した。竜の彫刻が施された綺麗な紋章だ。


「因みに私は勇者。これがその証。貴女は?」


「俺は冒険者」


「ふーん、冒険者ねぇ…」


 と、ルンルンは蔑む様には俺を見て、ニヤニヤと勇者の証とされる金色の紋章を撫でた。


「可哀想に。貴女、生前大した功績も残さなかったのでしょう?」


「まぁ、そうみたいだな」


 馬鹿にされているのは分かったが、ルンルンの言っていることは確かだ。否定はできない。


「あら、私は貴女を馬鹿にしているのよ?」


「だろうな」


「怒らないの?」


「ああ。だって事実だろ?だから冒険者なわけだし」


 実際は女体化がショック過ぎて今更怒る気力にもなれなかった…てのが本心。


「にしても勇者か、凄いなあんた」


「ふふふ、でしょ?」


 ルンルンは誇らしそうには声を弾ませて言った。見たところ、勇者となって転生したことが嬉しく仕方がない様子である。分からなくもない、俺だって死んだ後に勇者になれるとかだったら他人に自慢もしたくなっていたことだろう。


「で、何かようか?」


「いえ別に、ただ自慢したかっただけなの」


 素直な奴だった。


「…貴女のこと馬鹿にしようとも思っていたのだけれど、私、貴女のこと少しだけ気に入ったわ。中々自分の身の程を弁えているようだし…しかも、貴女…かなり可愛いし」


 ルンルンのじっとりとした目線が俺の全身を舐め回すようには注がれていた。


「私に負けず劣らずのエロい体ね…」


「そうか?」


 全く嬉しくはなかった。そもそもだ、俺は男だ。


「どう、良かったら私の家来になりませんこと?可愛がってあげますよ?」


「…家来?」


「そう、召使いってやつよ。私の身の回りの世話を貴女がするの…どう、ゴールドは弾ませますわよ?」


 ルンルンはそう言って、ニヤリと笑った。俺を金で釣ろうと魂胆らしい。


「よし、乗った」


 俺は即決していた。


「あら、案外素直なのね?貴女、お金に目がない人?」


「違うけど、ゴールドが必要なんだ。できれば至急に」


 女体化について女神に色々と問いただす必要があるからな。その為の10000ゴールドだ。稼げるってんなら早いに越したことはない。


「ふふ、まぁいいわ。決まりね、貴女の名を聞かせてもらってもいいかしら?」


「俺はシノミヤ。冒険者シノミヤだ」


「そう、シノミヤ…了解。じゃあ、先に行ってるわね。後で下にいらっしゃい」


 ルンルンはそう言い残して階段を降りて行った。

 そのすぐ後、受付のお姉さんは戻ってきて、


「手続きは無事終わりました。おめでとうございます。では、これを」


 そう言って、真っ赤な紋章を手渡された。


「これは貴女の身分を証明する大事な物になりますので、くれぐれも失くさないように」


 俺は頷いてそれを受け取ると、ルンルンの後を追った。


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