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バレた!?


 バンクとエクシーズが洞窟の中へと入って、かれこれ一時間は経っただろうか。


 空はまだ明るいが、段々と寒くなりつつある。そろそろ日が沈み始めるだろう、そんな時間帯。


「遅いね」


「そうね、何かあったのかしら?」


「でも争っているような音は聞こえなかったよね?」


「そう…よね、案外洞窟の中で迷ってるとか?」


「さぁ?」


 今現在、俺とルンルンの2人は洞窟の前で座って暇を持て余している最中である。あれから進展はなく、森の中は異様な静寂に満ち溢れていた。魔物の影もなければ、他の部隊が動いた形跡も見られない。


 果たして周りがどんな状況になっているのか、俺たちは何も知らない。


「みんな無事だといいけどね」


「平気よ。何たってサクラビスさんがいるわけだし、あの人がいる以上魔物に好き放題させるなんてあり得ないわ。今頃魔物達を片っ端からやっつけて私達を探している最中なんじゃないかしら」


「…サクラビスさんって、そんな凄いの?」


 そう言えばだか、俺は桜花騎士団の団長サクラビスについてを未だよく知らない。凄いとは聞いているが、果たしてどう凄いのかを具体的に知らないのだ。


「そうね、じゃあサクラビスさんについて凄さについて教えてあげる」


 ルンルンは静かに語り出した。


「あの人もかつて、私達と同じ異世界転生者としてこの異世界にやってきたらしいわ。確か六年前…だったかしらね?サクラビスさんは初め、異世界転生者としては高位に値する#軍鷹__ぐんおう__#紋章位を受け取ったそうよ」


 #軍鷹__ぐんおう__#紋章…聞いたことないな。


「異世界転生者に与えられる紋章にはいくつもあるんだけど、その中でも特別な紋章位があるの。全部6つ、それらは#六天__ろくてん__#紋章位と呼ばれていてね、軍鷹紋章もその中の一つなの。生前、時代を揺るがす程の偉業を成した者や、また人々に多大な影響を及ぼした者だけに与えられる証…それが六天紋章位よ。もちろん数千年に一度しか現れないとされていたんだけど、六年前、サクラビスさんはその軍鷹紋章位を手にしたの」


「軍鷹紋章の恩恵もあって、サクラビスは多大な功績を瞬く間に上げていったの。そうしてついには伝説の五代宝具が一つ[#アルヴァンテシア__始まりと終わりの金剛槍__#]を託されるまでに成長して、今に至ると…どう、サクラビスさんの凄さについて少しは理解できた?」


「まぁ何となく…で、その六天紋章、だっけ?」


「そうよ」


「他にはどんなのがあるの?」


 そう尋ねた俺の脳裏に、#例の__・__#紋章が浮かび上がっていた。それは赤い龍が象られた紋章である。


「そうね、今この異世界に現存しているのが、#洸猿__こうてい__#紋章、#灰狼__はいろう__#紋章、そしてサクラビスさんの持つ#軍鷹__ぐんおう__#紋章の3つだと言われているわ。残り3つはそうね…まだ確認されていないらしいのだけれど、今後それらの紋章位取得者が現れることがないとは言われているの」


「どうして?」


「先に言った3つの紋章位と違って、残り3つは少しまた毛色が違うの。1つは#漆鴉__ウルカラス__#紋章、これは魔王の生まれ変わりに与えられるとされる紋章位なんだけど、先代魔王マント・クシャトリヤが没して数千年、その紋章位を手にした異世界転生者が現界したという話はないみたい。仮にマント・クシャトリヤがこの世に転生していたとして、多分、自分が魔王の生まれ変わりだと分からずに死んでしまったとされていて、もしくは裏で始末されているとも…そこについては謎が多いわね」


 ルンルンは「それが1つ、そして…」とは続けて、


「2つ目は#暴鯱__ボウシャチ__#紋章…これは未だ確認のとれていない神話の伝承にのみ存在する紋章位ね。これに関してはよく分かっていないみたい。何せ未だ1人としてこの紋章を手にした異世界転生者はいないようだから、分からなくて当然よね」


「で、最後の1つは?」


 俺は唾を飲んで耳を傾けた。


「…最後の六天紋章位については、昨日もシノミヤにチラッと言ったわよね?」


「…赤い紋章のこと?」


 ルンルンは無言で頷いた。


「そう、#紅竜__コウリュウ__#紋章位…この紋章位を授かったのは先にも後にも1人…百年前、世界中の魔物を従えるという超越した力を持って世界を滅ぼそうとした異世界転生者がいた。名をビルマ・マルクレイド、叛逆の竜皇女と呼ばれた大罪人よ。彼女は始め一介の冒険者に過ぎなかったようだけど、どうしてか最強の魔物#レッドドラゴン__紅蓮の魔竜__#を懐柔したらしいの。そうしてついには世界中の魔物を配下につけた。最後は世界中の総戦力を持ってして打ち滅ぼしたとされていて、そんな彼女に、当時の人々は封印を施した。二度と彼女が転生することのないよう、討ち取った#レッドドラゴン__紅蓮の魔物__#の膨大な魔力の血液を媒介にして赤い紋章位を作り、またそれを封印具として利用し、ビルマ・マルクレイドの遺体と共に焼き払ったとされている…」


「それが、#紅竜__コウリュウ__#紋章位…」


「そうよ、だから二度と誕生することはないとされているの。今でも当時を生き抜いた人はこの話を嫌がるから、くれぐれも#無闇矢鱈__むやみやたら__#に話さないないようにね?」


「了解」


「それにしても、昨日からヤケに#紅竜__コウリュウ__#紋章にこだわっているようだけど…もしかして、本当にもらっていたとか?」


 ルンルンのその言葉を聞いた瞬間、心臓が大きく高鳴った。


「は、はい?」


 まさか、気づかれた?いやでも、あれはもしかしたら俺の勘違いかもしれなくて、いやいや、冗談だよな?


「ふふ、もちろん冗談よ」


「…意地悪」


「ごめんってば!もう、怒ったシノミヤも可愛いんだから!ほら、こっち向いて?」


「ふん!」


「なによ、いいじゃない!よーしよし、ごめんねシノミヤ~」


「や、やめろ…」


 でも良かった、バレたらどうしようかと思った。


 確定ではないが、仮に俺が本当に#紅竜__コウリュウ__#紋章位とやらを受け取っていた場合、これはかなり由々しき事態だ。


 他人に拾れでもしたらそれこそマジでやばい。確か紋章には俺の名前が刻まれていた筈だから…見つかったら最後。さいあく、世界中から命を狙われる羽目になるかもしれない。それだけはマジで勘弁だ。


 ふと、視線を草木の茂みと移した。


「あ…」


 その時俺は、見てはいけないものを見てしまった。




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