魔物の影
始め、今回の魔物の一斉討伐に辺り部隊編成が行われた。
A班からF班の、計6編成の部隊は結成。部隊はそれぞれ複数に点在するとされる魔物の根城へと向かっていく。因みに俺とルンルンはE班へと編成された。サクラビスの率いる桜花騎士団は有数の実力者ということもあり部隊を散り散りに、E班には2人の桜花騎士団が付き添ってくれていた。
E班には如何にも強そうな異世界転生者から、俺のように見るからに使えなさそうな奴と様々だ。その中でも、E班の隊長は別格なオーラを放っていた。かなり強そうだ。
俺がそんな隊長殿に目を奪われていた時だった。隊長は俺の視線に気づいたのか、目を合わせると、鼻で笑って、
「お前、ルーキーか?」
「はい」
「それはいいとして、何だそのヘンテコリンな小剣は…オモチャかよ?俺たちは別にチャンバラごっこしに行くわけじゃないんだぞ?ふん、せいぜい俺の足だけは引っ張ってくれるなよ?」
と、そう言われたのだった。俺の貧相な装備、そして見せかけだけの錆びた小剣を見ての判断、流石だ。そうさ俺は実践経験のないチキン野郎で、今回だってがっつり逃げ回るつもりだ。
故に俺は渋々頭を下げて、「頑張ります」としか言えなかった。
だって、事実だし。
かくして、魔物討伐御一行様団体は森の中へと入っていった。
今はE班の最後尾を付いて歩いている真っ最中だ。
「何よあのゴリラ、私のシノミヤに向かって失礼な奴!」
隣を歩くルンルンは小声で、なれど明確な怒りを露わにして言った。俺の事を思っての台詞だし、悪い気はしないが、その#私の__・__#ってのどうにかならないものか?
「全く同感です!いくら隊長様とあれど、僕の大切なシノミヤに向かってあのような暴言を浴びせるとは言語道断!」
と、ルンルンに同調するようにやはり小声で囁くように言ったのはエクシーズである。何の偶然か、エクシーズもまたE班に編成されていたのだった。
「まぁまぁ、隊長の言うことは事実だし、別に俺は平気だから…」
「何よシノミヤ、貴女あそこまで言われて悔しくないわけ!?私はかっなーり悔しいわ!」
「僕も悔しいです…シノミヤ、是非今回のクエストで名をあげ見返してやりましょう!」
何で2人がそんなに躍起になっているんだか。てか待てよ、お前ら仲悪いんじゃないのかよ?
「今は一時休戦よ。こんな奴と一緒に行動するなんて反吐が出る気分だけど…まぁそれも仕方ないわ!だって、シノミヤの為だもの!」
「僕こそ貴女のような下品で節操のない女性と組むなんて考えたくもありませんでした…ですが、これもまたシノミヤの為。ルンルン、今回だけは手を組み、シノミヤが功業を残せるよう共に頑張りましょう!」
そう言って固い握手を交わす2人も見て、俺はふと思った。実はこの2人かなり気が合うのではないか、と。
それからしばらく歩いた時だった。もう少しで魔物の根城に着くだろうと誰かが話しているのを耳にしていた、次の瞬間。
遠くの方からけたたましい轟音が鳴り響いた。その轟音は森中へと響き渡っているようで、森の中が異様にざわついているみたいだ。
「始まったみたいね」
ルンルンが呟いた。
「始まったって、何が?」
俺は訊いた。
「決まってるじゃない、戦闘よ」
「そうみたいですね。どうやら誰かが大規模な魔法を展開したようです。2人共、油断しないように」
そう言ったのはエクシーズ、既に剣を構えては周囲を警戒し始めていた。またそれはエクシーズだけではなく、見ると、E班の異世界転生者達も各々武器を取り出しては緊迫した雰囲気を醸し出しているではないか。
「どうやらこの森に魔物が出るってのは本当だったみたいね…」
ルンルンはニヤリと笑って言った。
「シノミヤ、見てなさいよ?あの時は何も出来なかったけれど…今回はちゃんと頑張るんだから。勇者としての力…とくと見せてあげるわ!」
何と頼もしい台詞だろうか、まさしくお前は勇者だよルンルン…でもな?
「ルンルン、手が震えているけど」
「は、はぁ!?こここ、これは違うわ…あれよ、武者震いってやつよ!?」
ほんとかよ…
「貴女も少しは可愛いとこあるじゃないですか?でも大丈夫ですよ、全てこの僕、エクシーズに任せて下さい」
「ば、馬鹿にしないでよっ!?冒険者如きのあなたがなに一丁前に出しゃばってるわけ!?」
「確かに僕は冒険者、そして貴女は誉れある勇者様だ。でもですよ?異世界での経験は僕の方が上、しかも魔物の戦闘には慣れっこです。果たしてどちらが優秀か…貴女にも分からないわけではないでしょう?」
「ぐ、ぬぬぬぬ!!」
おいおい、こんな時にまたかよ。
「とりあえず落ち着け2人共。今はそんなことしている場合じゃーー」
と、俺が言いかけた、次の瞬間、
「うわぁあああああああああっ!!!」
悲鳴が響き渡った。部隊の前方付近からだった。
「なになに、なんなのさっ!?」
と、ルンルンが叫んで、
「2人共気を付けて!魔物です!」
エクシーズは剣を構え視線を周囲に向けていた。俺はエクシーズに続き、辺りを見回した。そして、驚愕した。
「嘘だろ…いつの間に…」
今更気づいたところで時既に遅し、俺たちE班はいつの間にか魔物達に囲まれていた。薄暗い森の中を魔物の達の赤い眼光が閃光し、グルグルと物凄い速さで駆け巡っていたのだった…




