ひっかかっていた『はじまり』
はじめまして、ほしざきゆきのです。
あたしの初・オリジナル小説です。
楽しんでいただけましたら、うれしいです。
よろしくお願いします。
大きな森の片隅の、葉っぱの茂る藪の中。小さなクモが住んでいた。
そのクモは、細く短い糸を小枝にからめて小さな巣を作り、小さな羽虫を採ってはひとり静かに暮らしていた。
同じような日が続き、これからも同じような日が続いていくと思っていた。
そんなある日、意外なものが小さなクモの巣にひっかかっていた。
「やあ!」
絡まる糸を解きながら、声をかけてきた小さいヤツは自分と同じ小さいクモ。
「やあ・・・」
つられる様に声をかけると、ヤツは4つの目玉をパチパチとまばたきさせてにっこりとほほ笑んだ。
「キミ。なかなかいい所に住んでいるね。」
「いや、別に・・・」
初めて見る自分以外のクモ。
ヤツはボクの方へ近寄ってきて、マジマジと見るとボクの周りをぐるりとまわった。
「目玉は2つしかないの?足は6本しかないの?キミってクモだよね?」
無邪気な視線がボクを捕らえて離さない。
ヤツに言われたみてボクは初めて気付いた。
ボクの目玉は2つで、足は6本だ。
これって、普通のことじゃないってことなのか?
「2つの目玉と6本の足のどこが悪い!」
まるでボクがクモじゃないって言われているようだ。
「あっ。気に障ったのなら謝るよ。
きっと卵からかえる時に忘れてきたのかもしれないね。
それとも、子グモの頃、敵に捕られてしまったのかも。
どっちにしても、キミはオレの『命の恩人』だってことだ。」
4つの目玉と8本の足を持つ小さいクモは、1つ大きくうなづいた。
「命の恩人?このボクが?」
「そう。ビアの背中に乗っていたら、突風に吹き飛ばされちゃってね。
キミの巣のひっかかって命拾いをしたって訳。わかる、かな?」
またヤツは、4つの目玉をパチパチとまばたきさせてボクの顔をのぞきこんだ。
ボクの巣にひっかかっていたこの小さなクモは、当たり前のようにボクの静かな毎日を壊し始めた。