第5話 ━迷宮攻略━
ようやく書きたい部分に入り、本格始動です。
「ん、ここは……」
周りを見回して、空共はようやく目を覚ました。
「ああそうか、そうだったな。えっと……まだ寝てるか」
ファシュナがまだ寝ているのを確認し、起こさないよう注意しながらテントの外に出る。
「……気持ちいい風だ」
ちょうど風が吹き、思わずそうこぼした。
空共が今後のことを考えているとファシュナが片目をこすりながら起きてきた。起きたばかりだからか、昨日着ていたローブは着ていなかった。空共はその格好を見て、1つの疑問を感じた。
「昨日のローブって特殊なものだったりするのか?」
「え、あ、そうです。………これ、父の形見…なん、です……」
「ああ……そうなのか。悪いことを聞いたな…」
「いえ……でも、どうして、そんなことを、聞いたん、です、か?」
「いや、その服かなりボロボロだろ?なのにローブには目立ったキズもないから、ちょっと聞いてみたくなったんだ」
「えと、詳しくは、ないです、けど……」
そう前置きして、ファシュナは説明した。それによると、彼女のローブは『アロンジェ鉱石』『スープル草』という狐人族のみが扱える素材と、それらを加工する技術で作られたものということだった。
「とても、触り心地がよいのに、破れたり、ほつれたり、しにくいんです」
「なるほど。これなら迷宮でも大丈夫そうだな」
「………やっぱり、洞窟、に、入るん、です、か……」
「街に向かうならここしかないんだろ?なら、ここを突破するしかないだろ」
「ううっ……」
ファシュナは小さく震えていた。空共は、彼女を落ち着かせるように、その頭に手を置き、
「大丈夫だ」
とだけ言って軽くなでた。
声を掛ける以外に特に何も思いつかなかった結果、そんなことになったが、それなりに有効だったようだ。
「……早く……行き、ましょう?」
「……ああ」
こうして二人は最初の迷宮に入っていった。
◇◇◇
洞窟の中は広いトンネル状の空間だった。壁には淡く光るコケやキノコが大量に生えていて、暗闇で視界を遮られることもなかった。足元には人間のものらしい足跡があり、進む道が正しいことを二人は確信出来た。
「それにしても広いな。地図か何かあればよかったんだが……」
そんなことを言いながら進んでいたところ、最初の魔獣と遭遇した。
「待って、くだ、さい」
通路を進んでいると、急にファシュナが小声で空共を引き留めた。
「あっちの、角の先、から、ガシャガシャ、って聞こえ、ます」
「間違いないのか?」
ファシュナは小さくうなずく。
「分かった。『幻鳥』を使って様子見すべきだが……ここだと眩しすぎて気付かれるな」
空共は角に張り付いて、音が聞こえたという方を覗いた。その視線の先にいたのは、5体のスケルトンだった。立ち止まって辺りをキョロキョロと見回している。
「気付かれずに抜けるのは無理だな。先に仕掛けるか。」
空共はファシュナにその場から離れないように指示し、スケルトン達が反対側を向いている隙に飛び出した。スケルトン達は乱入者に気付いて、壊れかけたロボットのような動きで振り向くが、空共が攻撃する方が早かった。
(スケルトンには……火属性がお約束、だな)
「火葬してやる。『ゴウカノコブシ』」
腕に炎のようなオレンジ色の魔力粒子を纏わせて、飛び出した勢いのままスケルトンの内の1体の頭蓋骨を殴りつける。骨に大きな亀裂が入ったと同時に、そのスケルトンは炎に包まれて燃え尽きた。炎は燃え広がり、更に2体を呑み込んだ。炎がおさまると、残った2体が骨で出来た棍棒を片手に突撃してきた。同時に振り下ろされた棍棒を『鉄壁』で受け止める。攻撃を止められて体勢を崩したところを『ゴウカノコブシ』で焼き付くした。1分もかからずにスケルトン達は全滅。後には黒い炭だけが残った。
「こんなものか、思ったよりも簡単だったな。っと、ファシュナ、もう大丈夫だぞ」
声を掛けると、ファシュナは通路の陰からヒョコッと顔を出して、こちらを見た後、小走りで近づいてきた。
「……! アキトモ、さんは、ケガ、とか無いです、か?」
「ケガする暇もなかった」
そう言うと、ファシュナは安心したようで、強張らせていた表情を崩して微笑んだ。
空共がスケルトン達を倒したのと同じ頃━━━
「早く逃げろっ!! 二人はもうダメだ!!」
「そんなこと言ったっ!? うっ、うわあぁぁぁ!!」
洞窟内に悲鳴が響いた。四人組のハンターが何者かと対峙していた。が、会話からして二人はすでに絶命、もう一人の命も消えようと、いや、消えていた。
「クソッ、ここまでか…」
最後の一人がそう呟いた瞬間、銀色の閃光が煌めいて、その体は構えた盾ごと切り裂かれた。ハンター達を全滅させた攻撃の主は何かを窺うかのように遠くを見て、暗闇に消えていった………
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