表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/26

第4話 ━変化━

今回はキリのいいところで切ったので短めです。そのぶん次話は全力で書かせて頂きますm(__)m

「この、洞窟をぬけると街の、近くの街道に、出ます」

「やっとここまで来たか」

「ただ……」

「?」

「この洞窟、あの、えっと……出る、って…」

「幽霊でも出るのか?」

「それも怖い、ですけど……ここ、不気味な声、とか、巨大な影、とかを見たと、ハンターの人が、言ってた、のを聞きました……大怪我した、って人も、いる、そうです…」

「なるほど、迷宮攻略ダンジョンアタックか………ここを通る以外の道はないのか?」

「…すみません。あるかも、しれないです、けど…分からない、です…」

「ここに着くまで何も起こらなかったからな……霊的な何かならともかく、魔獣とかなら戦っておいた方が良いかもな」


 この世界には魔法は存在しないが、魔獣と呼ばれる生物は存在する。ただし、『魔法を使う獣』ではなく、しいていえば『邪魔な獣』といったところか。人に対して非常に狂暴で、ときには群れで街を襲ったりする。その行動原理はよく分かっていない。


「だが……今日はやめておこう。もうそろそろ、日が暮れそうだ。洞窟には明日の朝入ろう。」


 二人が洞窟の前に着いたときには既に太陽が傾き始めていた。空共にとっては、数日間の徹夜など何の問題もないが、急いでいる訳でもないので余裕を持って行動することにしたのだ。

 

「野宿……ですか?」

「仕方ないだろ。 別に変なことは考えてないぞ?」


「え、えっと……あの、その……あ! 洞窟の近くは、危ないと思って!」


 顔を赤くしながらそう答えるファシュナ。空共は “赤い顔ばっか見てる気がする、何回目だこれ”とか“ここまで早口で喋れたのか、意外とこっちの喋り方のが素なのかもな…”等と思いながら、ファシュナの質問に答えることにした。


「 大丈夫だ。俺だってこんなところで無防備に雑魚寝するつもりもない、ちゃんと考えもある」


 そう言って、空共はベルトのポーチから小さめのビー玉ぐらいの物を3個取り出して地面においた。不思議そうにこちらを見てくるファシュナを横目に、それに魔力粒子を流す。と、大型のテントと寝袋シュラフが2つ現れる。テントの中に寝袋シュラフを並べ、最後に複雑な模様が描かれた紙を置き、万一の備え兼仕切りの結界を二人とテントの周りに張った。


「これだけやれば十分だろ。あとは食い物、何かあればいいのに……」


 ここまでの道中、キノコや果物といった『森で遭難したときに現地調達できる食材』がまったくなかったのである。川があったから水は心配なかったが、その川にも魚はいなかった。


「ん、これは。……ジャーキーか。転送とばされる前に買ったヤツ」


 パックにはちょうど2枚入っていた。空共は1枚取って、残りをパックごとファシュナに渡した。


「口に合うかは分からんが、俺の世界の食い物だ。こんなのしかないが、まあ何も無いよりはましだろ。」


 ファシュナは受け取ったジャーキーを見つめ、遠慮がちにかじり付いた。


「……! おいしい。 こん、なの、初めて、です……」


 そう言う彼女の顔に浮かんだのは、陰のある笑顔だった…


(ずいぶん大変な思いをしたんだろうな。俺も化物呼ばわりはされたが……それでも…こいつには敵わないんだろうな…)


 空共は心情を悟られないように、平静を装ってファシュナに声を掛けた。彼女の持っていたジャーキーはすでに無くなっていた。


「明日は洞窟に入るんだ。さっさと寝よう。」


 そう言って空共はテントに入る。中は不透明な壁でしっかり二部屋に別れていた。その片方に寝転んで空共は考えていた。


(俺、この世界に来てから……いや、ファシュナに出会ってからか…かなり、喋ってるよな。久しぶりだ………輝といたときもこうはならなかった。)


 ふと横を見ると、結界の向こうから寝息が聞こえてきたが。


「ううっ……お父さん、お母さん…」


 突然、寝息が泣き声に変わった……


「……対人スキルだけはどうしようもないな、俺は」


 こうして異世界の最初の日は終わった。

ありがとうございました。感想や指摘がありましたら、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ