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第3話 ━異世界での常識━

言い回しにかなり苦労しました…後半が自分でも微妙な感じですが最後まで読んで頂けると嬉しいです。

 気絶してからおよそ数分後、空共はようやく目を覚ました。


「あの…大丈夫……ですか?」

「………夢、じゃなかったんだな」


 心配そうに顔を除き込んで来るのはキツネ耳の少女。それは空共に気絶する前の全てのことが夢でないと教えていた。


「やっぱり、私のこと……気持ち悪かったん…です、よね?」

「いや、別にそんなことじゃない。そうだ、さっきの奴らは?」


 すっかり忘れられていたが、男達は未だに気絶中だった。時々ピクピクと痙攣していたので一人も死んではいないだろう。起きられても面倒なので拘束しておく。近くの木に巻き付いてたツタでキツく縛り、『鉄壁シルド』を応用してツタを硬質化する。太めのワイヤーで縛ったようなものなので、気が付いてももう動けないだろう。


「これでよし。さてと、さっき言ってた街まで案内してもらえるんだよな? それと、色々聞きたいことがあるんだ。出来ればでいいけど、答えてほしい」

「ハイ…でも……本当に、私の案内で良いんです……か? だって……」

「獣人種だから、か?」

「…? 気持ち悪いとか思わないんですか?人類種は皆……」

「ああ、そこか。言っとくけど俺はこの世界の人間じゃない。だからこの世界のことはまったく知らない。そういうことだ」

「……!?」


 その少女は驚いた表情を浮かべて空共の顔を見てきた。しばらく見つめ合いを続けた後、目をそらしつつ空共は話を続けた。


「出来るだけ早く人の住むところまで行きたいんだ。話や説明は歩きながらでもしてくれ」

「あ、はい…いいです……けど、あの人達は…どうするん、ですか?」

「放置するつもりだったが、やっぱりマズいか? この辺に危険な動物とか出たりは?」

「大丈夫……だと、思います…」

「なら気兼ねなく放置していけるな。女の子相手に3人がかりだ、それぐらいやっても問題ないだろう」

「え、あー……そう、ですか?」

「ああ、それよりも早く出発しよう。さっきも言ったが早く人の居るところに行きたいんだ。それとこの世界の情報もだな」


 こうして二人は歩き出した。この世界『ペルドル』において数百年以上語り継がれる物語、そのプロローグが今、始まった。


◇◇◇


 二人は歩きながら軽い自己紹介を行った。それによると、少女の名はファシュナ。見た目通りの狐人族で歳は14。ちなみに獣人種も人類種も平均年齢は空共の世界の人間と同じである。

 話を進める内にファシュナを襲っていた男達に話題が移った。


「そういえばあの3人は何だったんだ?」


 そう言うと、とたんにファシュナの顔が曇る。


「あれ、は……おそらく…ハンターという人、だと…思い、ます…」

「ハンター?」

「はい……ギルドなどからの依頼で、大抵の仕事を受ける…そう、です…」

「なんでそんな奴らから襲われてたんだ? なんかやらかしたのか?」

「いえ……たぶん…私を、殺そうと、狙ってたんだと……思い…ます……」

「……全く分からない。そんなことをして何になるんだ?」

「それは…」


 そう言ってファシュナはある物語を話し始めた。それはこちらの世界に伝わる『神話』だった。要約するとこんな感じになる。


 【今から遠い昔、世界は悪魔が支配していた。悪魔は強大な魔法を使うので人々の魔法では逆らうことが出来なかった。そんな時、どこからともなく神様が現れて悪魔の魔法を封じて退治した。残った悪魔達は山奥に追われ、ようやく人々は救われたという。】


 「そして…この、悪魔と……動物、が交わっ、て生まれたのが……私達と、言われて、ます。私達、は…悪魔や、動物と同じだから…って……奴隷にしたり、とか……ときには…見つかった瞬間、に殺されたり……とか、されるん、です……父も…母も…そうやって…」


 話と途中からファシュナの声は震え、最後には完全な涙声になっていた。再びフードをかぶっていたので顔は隠れていたが間違いなく泣いていた。


 「……街が見えるとこまでしか案内できないっていうのはそういうことか。」


 ファシュナは答えず、うつ向いたまま小さく頷く。空共もしばらく言葉を出すことが出来ずにいた。時間にして数分間、森の中は静寂が支配した。さっきまで聞こえていた鳥の声や風の音すら静まっていた。


 「………俺を街まで案内した後、予定あるか?向かう所とか、会いに行く人とか。」

 「……何も、ない、です…」

 「そうか。なら、その後も俺に協力してくれないか?俺はこの世界のことを何も知らないから、元の世界に帰るにしても、この世界で暮らすにしても協力してくれるヤツは必要なんだ。」

 「協力?私、が…です、か?で、でも……」

 「()()が獣人種ってことは俺の魔法でいくらでも誤魔化せる。…ダメか?」

 「…………………………どうして、です、か?なん、で私を、ここまで…気に、掛けてくれるん、ですか?」

 「んー……俺に似てるから、かな。どうしようもないことで忌避されているところとかな……で、どうだ?協力してくれるか?」

 「…ハイ。よろしく、お願い、します。」


 先程までとは違ってハッキリとした声で答えるファシュナ。何が理由かは分からないが、空共は警戒されなくなったようで表情も明るくなり、


 (………なんか、なでたくなってきたな……)


 空共は理性を保とうとしたが、次の彼女の言葉には耐えられなかった。


 「あ、あの…“アキトモさん”って呼んで、いい、ですか? それで、私のことは、()()じゃなくて、“ファシュナ”って、呼んで下さい。」


 少し頬を赤くして、上目使いでこちらを見てくる少女を前に、空共は我慢出来なくなり………


 「ん?アキトモさん? キャッ!?ちょ、ちょっと、ヒャッ!?な、なにを!?」







 空共はファシュナを抱きしめて、なで始めた。ちなみに「キャッ!?」は抱きしめたときで「ヒャッ!?」はなでる手がキツネ耳に触れたときだ。

 二人が街に向けて、再び歩き始めたのはそれからしばらくたった後だった………

ありがとうございました。感想や指摘がありましたら、よろしくお願いします。

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