始まりました
四十五、始まりました
航と博仁は、午後二時十分前に真奈美の家へとやって来た。手にはデパートで買った可愛い犬のぬいぐるみと、苦心の末に完成した真奈美の似顔絵があった。果たして真奈美は、このプレゼントを喜んでくれるだろうか?航は少しだけ不安な気持ちを抱えていた。
博仁が玄関のベルを鳴らすと、中から『はーい』という返事が聞こえてきた。真奈美の声だ。少しすると、玄関のドアが開き、中から真奈美が顔を出した。
真奈美が二人を見ながら言った。
「いらっしゃい。さあ、どうぞ上がって」
「お邪魔します」
そう二人が言うと、航と博仁は応接間へと通された。真奈美の家に入った途端、とてもいい匂いが家中に漂っていた。とても美味しそうな匂いだ。応接間には既に由紀が一人座っていた。
由紀が二人に向かって言った。
「こんにちは。時間通りね」
博仁が由紀に言った。
「櫻木は早く着いたのか?」
由紀が答える。
「私は早く来て、真奈美と二人で、今日出す料理とお菓子を作ってたのよ」
博仁が問いかける。
「今日は二人の手料理か?」
由紀が頷く。
「そう。だから楽しみにしていてね」
すると、台所のほうから真奈美がやって来て、言った。
「さてと、料理もお菓子も出来たわよ」
由紀が言った。
「じゃあ、揃ったところで始めますか、誕生日会」
そして、真奈美のお母さんが、飲み物やクッキーなどをテーブルに並べてくれた。
由紀が乾杯の音頭を取る。
「それでは真奈美、誕生日おめでとう!乾杯!」
「かんぱーい」
四人がグラスを合わせると、きれいな音色が部屋中に響いた。
真奈美が言った。
「どうもありがとう。嬉しいな」
すると、由紀が博仁に言った。
「このクッキーは私と真奈美の手作りなんだから、味わって食べてよね」
博仁が渋々頷く。
「わかったよ」
そう言うと、博仁はクッキーに手を伸ばし、それを一口で食べた。
博仁が言った。
「うん、美味いよ、これ」
真奈美が航に声を掛ける。
「渡辺君も、よかったら食べてね」
航が答える。
「もちろん、頂くよ」
航もクッキーを一つまみすると、口の中へ入れた。
「うん、美味しい!」
真奈美が由紀に向かって言った。
「よかった。ねえ由紀」
由紀が言った。
「まだまだ出て来るからね。しっかり味わってよ」
こうして、真奈美の誕生日会は、和やかな雰囲気の中始まったのであった。




