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プレゼントは?

三十九、プレゼントは?

 お祭りの翌日、航は自室で昨日のことを思い出していた。実は、真奈美の手を握った後のことは、あまりよく覚えていないのである。手を握ったのはほんの数十秒ほどだったが、航には永遠に思えた。


 その後由紀と博仁が戻ってきて、博仁に何やら聞かれたが上の空だった。盆踊りが終わり、家に帰って来て、それから…。気が付いたら翌日で、ベッドで寝ていた。そんな感じだ。


 真奈美の手がとてもやわらかかったことだけは、今でも鮮明に覚えている。あの手の感触。出来る事ならもう一度握り締めたい。航はそう思った。


 航が昨日の余韻に浸っていると、博仁が航の家へとやって来た。

 航が玄関を開け、博仁に尋ねる。

 「よう、どうした?何か用か?」

 博仁がふてくされたように言った。

 「何か用か、はないだろう?昨日の恩人に対して」

 「昨日はありがとう。お蔭でうまくいったよ」

 「それは昨日聞いたよ。それよりさ、中に入れてくれよ。暑くて死にそうだよ」


 航は博仁を自室へと招き入れた。エアコンが効いていて心地よい。航が麦茶を持ってくると、博仁はまず一口飲み、それから言った。

 「昨日も言ったけどさ、三十日の永井の誕生日、プレゼントはどうする?」

 「どうするって…。何も考えてないよ」

 「昨日、考えておけって言ったじゃん」

 「そうだっけ?」

 「まあ、昨日は上の空みたいだったから、しかたないか」

 「ところでプレセントって?」

 「普通に何か買って渡しても芸がないだろ?何かびっくりするようなプレゼントを、と思ってさ」

 「二人でケーキでも焼くか?」

 「それじゃあ二番煎じだし、そもそもそんな趣味ないだろ」

 「そういわれてもなあ」

 「だから考えておけって言ったんだぞ」

 「そういう博仁は、何かアイデアがあるのかよ」

 「えへん。宿題やっていて思いついたんだけど、絵を描いて贈るってのはどうだ?」

 「絵を描いて贈る?永井の似顔絵でも描くのか?」

 「そう。お前似顔絵描くの得意じゃん」

 「お遊びでならな」

 「真面目に描いても上手いよ。だからさ、永井にプレゼントしたらどうかと思って」


 航は時々、クラスメートの似顔絵を描いて、友達を笑わせていた。よく似ていると評判だった。しかし、人にプレゼントをするような真面目な似顔絵なんて描いたことはない。航は上手く描けるのか、とても不安だった。しかし、そんな航の不安を余所に、博仁はやる気満々だった。


 博仁が言った。

 「じゃあ、決まりな。下絵はお前に任せたから、よろしくな。色塗りは二人でやろう」

 航は大変なものを引き受けたと、心の中で思った。


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