やりました!
三十八、やりました!
四人は揃って、賑やかになってきた参道を散策していた。。航と博仁が魅かれるものは、たこ焼きやらリンゴ飴やらと食べ物ばかりだが、由紀と真奈美が魅かれるものは、小さなマスコットやら輪投げやらと全く正反対のものだった。それでも四人とも、各々お祭りを満喫しているようだ。
キャラクターのお面を売っている露店に立ち寄ると、由紀が博仁に向かって言った。
「これ、向井君に似ていない?」
それは、戦隊もののヒーローのお面だった。すぐに博仁が反応する。
「俺ってそんなにカッコいい?」
由紀が笑って答える。
「うん、ちょっとマヌケな黄色に似ているよ」
博仁が頭を掻きながら言った。
「チェッ、言ってくれるよ」
すると、駐車場に建てられた櫓の方から、アナウンスが聞こえてきた。
『まもなく盆踊りが始まります』
由紀が真奈美に言った。
「盆踊り始まるって。真奈美、見に行こうよ」
博仁が言った。
「二人とも、踊るのか?」
由紀が答える。
「見るだけよ。ねえ、行ってみようよ」
四人は盆踊りの会場となる、駐車場の方へと歩いて行った。中央にある櫓の周りには、人が段々と集まり始めている。
博仁が航の近くに寄って来て言った。
「今がチャンスだな。じゃあ、櫻木と二人で離れるから、後はしっかりやれよ」
航が大きく頷く。
「うん」
博仁が由紀に言った。
「なあ、櫻木、向こうの露店にお前によく似たぬいぐるみがあったんだ。ちょっと見に行こう」
由紀が答える。
「もうすぐ盆踊りが始まるよ」
博仁が強引に誘う。
「すぐそこだよ」
博仁が由紀の手を取り、露店の方へと引っ張って行く。由紀は嫌がる様子もなく、博仁について行った。そして盆踊り会場には、航と真奈美の二人が残された。チャンスだ。
意を決した航は、真奈美に言った。
「あっちの方がもっとよく見れるよ。行ってみようよ」
そして、スッと真奈美に手を差し伸べた。これで真奈美が手を握ってくれたらいいのだが…。
真奈美が言った。
「そうね。行ってみましょう」
するとなんと、真奈美は航の差し出した手を握ったのだ!
手を握ってくれた!
航は興奮のあまり、その場に倒れそうになったが、何とか踏みとどまった。そして、真奈美が握ってくれた手の感触を感じていた。航にとって、この夏一番の出来事であった。




