作戦準備
三十六、作戦準備
お祭りは、神社の境内を使って行われていた。参道には露店が並び、駐車場には盆踊りの櫓が立っている。町内のお祭りとはいえ、そこそこの大きさであった。
航たちが会場へとやって来たときには、まだ時間が早く、露店はほとんど準備中で、櫓から流れてくる盆踊りの音楽だけが鳴り響くだけであった。人もまばらで、真奈美たちもまだ来ていないようだ。
航は一日中、これから実行に移す『手を握る大作戦』のことばかり考えていた。今日という絶好のチャンスを逃してなるものか、と航は意気込んでいた。
航の考えた作戦というのは…
一、二人きりになる
ここは博仁に協力してもらい、由紀と博仁に距離を取ってもらう。狭い町内のお祭りで迷子になることは難しいが、ちょっとどこに行ったか分からなくなるくらい、距離が離れることは出来るだろう。
二、そして、こっちへ行こうと、真奈美に手を差し伸べる
ここで手を握ってくれたらバンバンザイだ。
三、強引に真奈美の手を掴み、博仁たちの方へ向かう
強引に、かつ自然に手を握ることが重要だ。あくまで自然体で勝負だ。
という、至ってシンプルなものだ(作戦と呼べるのか?)。ポイントはいかにして二人きりになるか?(それしか作戦らしいことはない)だが、ここは博仁に協力してもらわざるを得ない。悔しいが、ライバルの協力が不可欠だ。
お祭りの会場をのんびり歩きながら、航が博仁に声を掛けた。
「ちょっとお願いがあるんだけど…」
博仁が航の顔を覗き込んで言った。
「お願い?何だよ、改まって」
航が言った。
「お祭りの最中、ほんの少しでいいから、永井と二人きりになりたいんだ」
すると、博仁が身を乗り出して言った。
「おお、ついにやる気になったか!で、何をするんだよ?」
航が俯きながら言った。
「話をしたいだけだよ。ほんの少しでいいんだ」
博仁が航を突っつく。
「ホントにそれだけか?まあ、何かやる気になったのはいいことだけどな。少しでいいのか?」
航が答える。
「うん、時間があり過ぎると却って間が持たないよ」
博仁が航の背中を叩く。
「何情けないこと言ってるんだよ」
航が両手を合わせ、お願いをする。
「なあ、いいだろ?頼むよ」
博仁が応えた。
「わかった。親友の頼みを断るわけにはいかないからな」
「ありがとう」
これで作戦準備は完了だ。あとは、真奈美と由紀が来るのを待つだけだ。航は、早く真奈美が来ないかと、心を躍らせながらその時を待っていた。




