誕生日会 その三
三十一、誕生日会 その三
博仁の誕生日会も盛り上がって来たそのころ、航は何とかして真奈美と話さなくては、と思っていた。第二ラウンドは、皆に笑われてしまったので航の負けである。何とかして第三ラウンドで、博仁よりもアピールをしなくてはと考えてはいるが、中々チャンスは訪れなかった。
そんな航を余所に、相変わらず博仁は、由紀と楽しそうに会話をしていた。
博仁が言った。
「なあ、トランプでもしないか?俺持って来たんだ」
由紀が言った。
「いいわよ。何する?」
「そうだなあ、王道の七並べとかは?」
「OK、七並べね」
「せっかくだから、組になって勝負しないか?」
「組って、男子対女子?」
「それじゃあつまらないから、男女ペアになってさ」
「いいわよ。真奈美もいい?」
「うん」
「航もいいよな?」
「うん」
こうして、トランプ大会が始まった。
運よく、博仁と由紀がペアに、航と真奈美がペアになった。
真奈美が言った。
「よろしくね、渡辺君」
航が下を向きながら返事をする。
「よろしく」
トランプゲームは航の好きなゲームであり、その中でも七並べは得意とするところだった。この第三ラウンドトランプ大会で、真奈美にいいところを見せたい、航はそう思っていた。画してトランプ大会が始まった。
序盤はほぼ互角の戦いだった。双方無難にカードを置いていく。
中盤からは心理戦である。どのカードを出して、どのカードを止めるか、最も頭を使うところだ。
航が真奈美に言った。
「次はこのラインに進もうか?」
「そうね。いいと思うわ」
そして終盤。形勢は航たちが有利だった。ダイヤのラインをしっかりと止めていたからだ。
博仁が航に文句を言う。
「止めてないで、早くダイヤの五を出してくれよ」
航が言い返す。
「これも作戦のうちさ」
そして勝負はそのまま決まり。航と真奈美のペアが一勝した。
真奈美が航に言った。
「やったね、渡辺君!」
「うん」
これで少しは真奈美にアピール出来たはずだ。航は心の中で『よし』と呟いた。
結局、トランプ大会は航たちの勝ちとなった。すなわち、航にとって(一人でそう思っているのだが)第三ラウンドは、航の勝ちとなったのである。
しかし、残念ながら真奈美と話が出来たのはトランプの作戦だけで、他のことは全く話が出来なかった。航は少し焦りを感じていた。




