直接対決!
二十一、直接対決!
夏の大会がやって来た。三年生にとっては最後の大会となる重要な大会だ。航にとっても、前回の地区大会がまぐれでないことを証明する、大事な大会である。そして航は、いつも以上に気合が入っていた。
航がいつも以上に気合が入る理由がもう一つあった。博仁との対決である。今回の大会では、航は専門の千五百メートルの他に、二百メートルにもエントリーしていた。一週間前、二百メートルに出場予定の選手が怪我をしてしまい、急遽航が代役としてエントリーされたのだ。二百メートルには、博仁もエントリーしている。つまり直接対決ができる訳ではないが、同じ条件でタイムを競うことが出来るのだった。
博仁には負けたくない。航はそう感じていた。
プールでの一件以来、航は博仁のことを、親友であり恋のライバルでもあると見るようになっていた。博仁より格好いいところを見せて、真奈美をこっちに振り向かせる。それが真奈美の心を変えさせる唯一の手段であり、航の出した結論でもあった。
大会当日の朝、前回と同様誰よりも早く会場へと着いた航は、入念にストレッチをしていた。種目順は、二百メートルが先で、千五百メートルが後だ。慣れない二百メートルで筋肉を疲れさせないためにも、ストレッチは重要であった。
すると、博仁が会場へとやって来た。まだ選手はちらほらといるくらいで、充分に早い会場入りだ。
博仁が航に声を掛ける。
「おはよう、航。今日も気合いが入ってるな」
航がストレッチをしながら返事をする。
「おはよう。今日は二百メートルにも出るからな。入念にアップしておかないと」
博仁が言った。
「そういえば、俺とお前、同じ組になっていたぞ」
航は驚いて、博仁の方に振り向いた。
「本当?」
博仁がプログラムを差し出しながら言った。
「おう。ほら、プログラム見てみろよ」
航は、博仁から差し出されたプログラムに目をやった。確かに博仁と同じ組だ。
「お前には負けないからな」
博仁が航に宣戦布告をする。
「俺だって、負ける気はしないよ」
航が言い返す。
「あーあ、櫻木たちが来てくれたら、やる気も百倍になるのになあ」
博仁が残念そうに呟いた。
今日は、真奈美も試合があるため、応援には来てくれていないのだ。由紀は真奈美の応援に行ったらしい。
「さてと、俺もアップを始めるかな」
博仁が大きく背伸びをしながら言った。
航と博仁の初めての直接対決。航は絶対に負けない、と強く心の中で呟いた。




