結果は…
十二、結果は…
航が体をほぐしていると、博仁が近くに寄ってきた。
「永井たち来たみたいだぜ」
博仁がスタンドの方を指差す。そこには由紀と真奈美の姿があった。真奈美は白いワンピースに、大きめの帽子を目深にかぶり、こちらを見ている。航が軽く会釈すると、二人揃って片手を挙げて応えてくれた。
「これで役者がそろったな。がんばれよ」
博仁が航に声を掛ける。
「うん」
航が力強く答える。これで役者はそろった。後は結果を出すだけだ。
そして、いよいよ千五百メートル走のスタートの時間になった。航は両手で自分の頬を叩き、『よし』と気合を入れ直した。
「位置について」
スターターの声が競技場内に響き渡る。
「よーい」
選手の動きが一瞬止まる。
『パン』
スタートの合図が切られると、皆一斉に駆け出し始めた。予想通り、優勝候補筆頭の選手がスタートから飛び出した。この選手だけは実力が段違いで、毎回圧倒的な強さで優勝している。地区大会では敵なしの選手だ。
いつもならこの選手の独走となるのだが、今日は違っていた。何と航がその選手のすぐ後ろを併走しているのだ。航の作戦は、前半飛ばせるところまで飛ばし、後半何とか粘るというものだった。自分のペースを守ったのでは、三位に入ることは難しいと思った、航の大胆な作戦だった。
問題は、後半どこまで粘ることが出来るか。粘れすにズルズルと後退するようなことになれば、最下位の可能性もある。言わば危険な賭けだった。
この航の姿をトラック内で見ていた博仁が、航に声援を送る。
「航、がんばれ!粘るんだ!」
スタンドで見ていた真奈美も、大きな声援を送った。
「渡辺君、がんばって!」
航はそれらの声援を力に変えて、必死に先頭の選手について行った。
しかしながら、やはり先頭の選手との実力差は歴然だった。八百メートル過ぎまでは、何とか後ろに食らいついていた航だったが、そこから徐々に引き離され始めてしまった。残りは六百メートル以上。このままズルズルと後退したら、本当に最下位に沈んでしまう。航は山登りの特訓を思い出し、懸命に前を追った。
特訓の成果なのか、残り四百メートルとなっても、航は何とか二位を死守していた。ただ、後続との差は段々と縮まってきている。このまま逃げ切れるのか。それとも後続に捕まってしまうのか。航はただ前だけを見据え、懸命に走った。
「頑張れ!もう少しだ!」
博仁が大声で声援を送る。スタンドで見ている真奈美たちも立ち上がって応援していた。
航には博仁たちの声は聞こえなかった。ただただ、前だけを見つめ先頭の選手だけを追った。
残り二百メートル。後続の選手のうち二人がラストスパートをし、ペースを一気に上げた。航にはもはやペースを上げる余力は残っていない。その差は見る見るうちに縮まっていった。
そして残り五十メートル。ついに後続の二人の選手に追いつかれてしまった。航は何とかペースを上げようとしたが、足がこれ以上は動かないくらい体力の限界に達していた。
残り三十メートル。ついに二人に抜かれてしまった。そしてそのままゴール。結果は自己ベストを更新するも、残念ながら四位に終わった。
ゴールした航はその場で大の字に倒れ込んだ。目の前には真っ青は空が一面に広がっていた。




