竜の秘宝
街に戻ると、友人の盛大な歓迎が待っていた。
俺の姿を見つけるや否や、猛ダッシュで俺の傍まで来た友人。
息を切らせながら、素っ頓狂な声を上げる。
「おおおおっ!生きてた!すげぇ!怪我なしか!?おおおおお、すげぇぇぇ!すげぇぇぇぞ、友よ!」
「なにがだ!?」
帰ってきた事より、生きてた事に歓喜する友人に、俺は思わずツッコミの手刀を友人の首に目がけて入れる。
「ぐふふぇえ!?」
妙な奇声を発しながら、それでも倒れない友人を俺は半目で見つめるが、そんなもの、この友人に利きはしない。
「お前には文句がある。なぜ初心者の俺を置いて行った?」
「男のロマン☆つまりそれは冒険!そんな素敵冒険ができただろ?感謝しろ☆」
「ふざけんな、人生お気楽無限大なお前と一緒にすんな!」
「冒険こそ人生だぞ!それが分からんとは悲しい奴だ!…つーかよ、マジな話、秘宝がないなんて言いやがるから悪いんだぞ?」
「…実際、なかっただろうが」
「あのな、ないとは言わんのだ。見つけられない、が正解なんだ。分かるか?ん?」
友人は俺の頭をぐちゃぐちゃにする。
どこまで行っても平行線なのは、こいつがトレジャーハンターで、俺は一般民だから、なんだが。
そんな不毛なやり取りを聞いていた幼…いや、竜女が、唐突に口を開いた。
「ほう、秘宝か。あの森の秘宝となれば、竜の秘宝じゃな。うむ。ならばこやつは見つけておるぞ」
見つけてなんかない、そう言おうとして、俺は竜女に振り返り。
…が。
俺の行動よりも早く。
友人が食いついた。
「なんだって!?見つけた!?竜の秘宝を!?幾万というトレジャーハンターが見つけられない竜の秘宝を、ちょっと出かけちゃったよ、なこの、あんぽんたんが!?」
「いや、待て。俺は出かけちゃったよ、じゃなくて、お前に無理矢理連れて行かれたんだが…」
「このあんぽんたんが、見つけたのか!誰も見つけられずにいる秘宝おおおぉ――!!」
俺の言葉は興奮した友人の声に虚しくも霧散された。
声、大きいんだよ、お前。
ついでに、あんぽんたんは余計だ。
「で!!秘宝は!!!!」
目を輝かせて、友人が俺を見る。
頼むからその目で俺を見るな。
秘宝なんて俺は知らないって言えないじゃないか。
拾ったのはこの竜女と名乗る幼女だけで。
…と少し考え竜女を見ると、にやけた顔で竜女が俺を見上げていた。
「節穴じゃな」
「否定はしないが、なにが節穴なんだ?」
「妾がここにおるという理由を、なぜ察しない」
「…察しないだろ、フツー。どこからどう見てもフツーの幼女だし、お前」
ワクワクしながら待っている友人を余所に、俺と竜女の会話は続く。
「今の失礼極まりない言動は後ほど処罰するが、竜の秘宝とは妾のことなのじゃぞ」
「はぁ?お前、竜女って言ってただろ。それがなんで秘宝なんだよ」
「なんじゃ、妾を疑うのか!」
「いや、疑うとか、そういう以前の問題で、お前のどこをどう見たら秘宝に見えるのか教えてくれ」
「妾は竜女じゃ」
「それはもう分かった」
「竜女は竜の秘宝じゃ」
「だからなんでだよ。秘宝ってさ、もっとこう美しく煌びやかで、威厳があるもんじゃないのか?」
「威厳ならあるではないか!ほれ!」
「…あえて言おう。まったくない。というか、『美しく煌びやか』な方はいいのか?」
「煩い。黙れ下僕。そこに触れるでない」
あ。俺、いつの間にか下僕にされてる。
というか、こいつ、気にいてたのか。
そう思いながら、俺はワクワクしていた友人に目をやると、なにやら今度は別の方向で興奮してるらしく、顔を真っ赤にさせ、鼻息も荒い。
そして、ついに、と言うべきか、友人は叫んだ。
「御労しい竜女様!こんな無礼な奴より、このワタクシを下僕にしませんか!?」
友人の本気の言葉に俺は、再び絶句した。
貴重なお時間をいただき、お読みくださいまして、ありがとうございました。