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第八話



 昨日の件はすぐに新聞の朝刊の一面に載った。場所や魔法学園の生徒二人と帰し養成学校の生徒が二人、計四人襲われたことは書いてあったが、その人物についての詳細は載っていなかった。俺らがまだ学生だからであろう、そこの所の配慮はしてあった。どうやら俺たちはこの殺人鬼関連の事件での初めての生存者らしい。喜べばいいのかどうか反応に困った。

 事件の翌日である今日、そんな事件など気にも留めず学園はいつもどおり始まる。学園に行っても、学園中その話で持ちっきりだった。俺とエスが所属しているクラスも例外ではなかった。しかも上級生では「俺が生存者だ!」「いや俺がそうだ!」「お前も生存者だったのか!」など訳のわからないことになっている。どうやら注目を浴びて人気者になりたい人が嘘をついているようだ。

「おはよう」

「ぉはぁ……よう」

 エスは欠伸をしながら挨拶を返してきた。

 彼女も一応自分の親に何があったのかを説明したらしい。そして説明すると親が(特に父親が)パニックになり話を詳しく訊かされたらしく、そのせいで寝る時間が遅くなってしまったらしい。。

「新聞読んだか?」

「読んでいなくても大体わかるだろう。あの場に異端だぞ」

「あぁその件だけど無闇に注目を集めたくないのなら、言わないほうがいいぞ」

「むぅ……わかった。私も暗躍するほうが好きだしな」

 それは知らないし、どうでもいい。

俺はすぐにエスに昨日の話の続きを聞こうとしたが、そうする前に先生が入ってきた。

「ほら朝のホームルーム始めるぞ~」

 先生はそう言って手で姓と全員に座るように指示を出す。

「え~と。言わなくてもわかるけど、昨日また殺人鬼が出ました。はい、怖いですね」

 そう言ってタバコを吸い、息を吐く。

 言い方が全然怖そうにしていないぞ。教師だったらもうちょっと生徒に緊張感とか警戒心を与えるようにしろよ。

「うちの学園の生徒が襲われたけど特に怪我もなかったみたいだし。大丈夫だからね。下校中は気をつけるように、基本的に一人にならないように、さっさと帰りましょう」

「先生質問があります!」

「なんだね、クリキントンくん」

「クリントンです。襲われた生徒とは誰なんでしょうか?」

「それについては教えられないね。知りたかったら自分で調べな」

 えぇ~、と生徒たちは言うが先生は何も言わずに俺とエスのほうも見た。一瞬目を細めたかと思うといつもの気だるい目に戻っていた。どうやら先生は全て知っているような感じである。


「それじゃあ朝のショートホームルームは終わり。移動を開始しろよ」



 午前の授業も全て終わり今はアンスケいわゆる授業が入っていない時間である。俺はこの時間中にご飯を食べ、宿題や課題などがあればそれを終わらせれるように努力する。そしてこのアンスケはエスのアンスケと重なっているので一緒に昼食を食べている。

 あれよく考えた、俺はエス以外の友達がいないのでは?そう考えるとなんだか悲しくなってきた。いやまだ焦るような時間ではない。入学してまだ二日目、まだまだ時間はある。しかし早いとこ誰かほかの人との関係を作らなければ。

「どうした?そんな深刻な顔して」

「いやよく考えたら。俺たち友達いないんじゃね?って思ってな」

「そうか?友達なんてそこまでいらんだろ。お前一人でも十分だ」

「えっ」

 お前その言い方はまずいだろ。普通の男の子だったら勘違いしているぞ。しかも取り繕わずに紅茶を飲んでいるぞ。

「ちょっといいでしょうか?」

 話しかけられそちらを見る。

 お、これは新しい友達フラグか?と思いながら見ると、そこには騎士学校の制服を着た女の子が二人いた。しかも顔は見覚えがある。

「昨日の……」

「はい、そうです。その昨日は助けてくれてありがとうございました!」

 大きな声を出して頭を下げる。周りに人がほとんどいなかったから良かった。

「ほらアインも」

 誤っている女の子が後ろをみると、二歩ほど下がった所にあの騎士学校の主席ちゃんがぶっちょ面で立っていた。

「アイン!アインもお礼を言わなくちゃ」

「なんでよ……」

「助けてもらったんだから」

 どうやら礼を言うのがいやらしい。さすがに実戦演習の授業であれだけの事を言っておいて一人では何もできずに助けられました、などという事を認めたくないのだろう。なんと勝手な子だ。しかし俺もそこまでお礼を言ってほしいわけではないので、別にいいよ、と言うとした時、

「なんだ?騎士学校の主席の子は礼の一つも満足に言えないのか?」

 エスが先に爆弾発言をした。

 俺と主席の付き添いのこの顔が引きつる。同時に主席ちゃんの顔が怒りに染まる。

「いえ。あなたのような低俗な魔法使いに礼を言うのも尺なんですよ」

「礼一つ言えないとは、親の顔が知りたいな」

 エスは鼻で笑いそう言う。

 これは終わった。エスは笑顔で返しているが主席ちゃんの方は今にも頭から溶岩が飛び出そうなほど大噴火寸前である。

「何様のつもりよ!私がわざわざ出向いたんだから逆に感謝しなさいよ!」

 なんて意味のわからない発言!なんだその「私=偉い」みたいな方程式。

「お前こそ何様だ!だいたいなんであのレベルの敵と戦って負けるのだ!」

「たまたま運が悪かっただけなんだから!あの後私は華麗に逆転できたんだから!」

「嘘つけ!」

 なんだかどんどん争いのレベルが下がっていくような。両者の精神年齢はもしかして低いのではないだろうか。

「あははは……やっぱり駄目だったかな。アインに礼を言わせようとしたのは無理だったかな」

「なんとういか苦労してそうだな」

「まぁ。古い付き合いですしね」

 なんという良い子!アインさんこと主席ちゃんはラッキーだな、こんなにも良い友達を持てるのだから。大体主席ちゃんのような子は孤立しやすいのだが、それがこの子によってとめられている感じだな、おそらく。

「あ、私フライル・グラシズといいます」

「よろしくグラシズさん」

「フライルでいいですよ。仲良くしましょうね」

「じゃあ俺のこともレンでいいよ」

「はい。よろしくです、レンさん」

あぁ、なんて癒し系な子なのだろうか。今までの殺伐とした雰囲気が嘘のように、


「「決闘だ」」


は行かなかった。

「ってちょっと待て!」

 一時停止を呼びかけたが、時すでに遅し。

 エスと主席ちゃんの周りには円形の結界が張ってあった。

「ルールは一撃決着でいいな?」

「ええ。一瞬で終わらせてあげるわ」

 これはもう止まりそうにないな。

 ルールも一撃決着であるから大丈夫だと思いたい。

 決闘のルールは基本的に学生の間で決めるので多種多様だが、基本的なルールは審判や立会人がいる審判制、そしてこの一撃決着である。一撃決着はその名の通り先に一撃入れたほうが勝ちである。その一撃は剣でもいいし魔法でもよい、一撃なので打撃やかすり傷だけでも判定がでる。

 しかしエスが本気で一撃で決めたらどうなるか?

「エス!」

「なんだ?」

 結界越しに話しかける。

 一応言っておく。

「ちょっとは手加減しろよ」

「大丈夫だ。本気ではやらない」

 俺は安心して後ろに下がる。

 ポケットの中のコインを出し、それを空に投げる。

 両者構える、コインはゆっくりと落ちていき地面のレンガと当たりキンと高い音を出し、


決闘が始まった瞬間に終わった。


「はいエスの勝ち」

「え?」

 本当に一瞬。気づけばアインが結界に叩きつけられていた。大口叩いておいてその様か。これはひどいな。騎士学校の主席というからそれなりの実力を兼ね備えているかと思えば。エスが手加減してこれか。

 隣にいるフライルも呆然として立っている。エスが行ったことはいたって簡単。魔力で体を強化し、かなりの速度をつけ殴る――――寸前でとめただけである。もっと簡単にいえば拳の風の力で飛ばした。しかしその速度を認識できない人からみたら、主席ちゃんがエスの行った何かによって飛ばされたように見えるだろう。それより主席ちゃん大丈夫か?

「ぅぐっ……」

 どうやら無事のようだ。

 結界が解かれるとすぐにフライルがアインに走り寄る。俺はエスをちょっと叱りに行く。エスも俺が何を言いたいのかわかったらしい。

「手加減したよな?」

「ああ」

「いやごめん。ちゃんとお前が手を抜いたのはわかったいんだけどな。相手がな……」

「予想以上に弱かった」

 そういう事を大声で言ってはいけません。相手にしつれいですよ。

 俺もエスと同じ事を思っていたが、そこは礼儀として言わないのが当たり前だろう。

 ゆっくりと主席ちゃんに歩いていき、簡易的な治癒魔法を使っておく。おそらく痣ぐらいはできるだろう。それを消すことはできないが痛みを退かせるぐらいはできるだろう。

「ほらよ。次からはそのけんか腰なのをやめとけよ」

 そう忠告しておくが、彼女は聞くつもりはないようだ。

 すぐに立ち上がり剣を納めて早歩きで去って行った。フライルは焦りつつもこちらを見て腰を折り会釈をしてから去っていった彼女を追いかけていった。


「ほら次の授業だぞ」

 かばんを掴んで俺とエスは次の授業へと向かった。




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