第十三話
おひさしぶりです
第十三話
「無事、ではないな。大丈夫か?」
「全然大丈夫じゃない。毒もらってこの様だ。動けない上に魔法もしばらくは使えない。回復には時間がちょっとかかる」
「そうか。じゃ、お前を守る」
「……恥ずかしいことを言うな」
そういったあとエスは顔を赤くし顔を半分隠すようにした。よほど顔が熱くなっているのだろう。彼女は静かに後ろに下がり、対してレンは一歩二歩と前へ出る。腰のベルトから吊ってある皮のケースから本を取り出す。
「まずは」
肉体強化。体の表面を魔力で包み、ページを取出し攻撃魔法を備える。
「とりあえずレンだよろしく」
「お前も転生者って奴か?」
「その通りだ。お前が殺人鬼だろ?エスから話は聞いてたぜ」
ペーじが浮遊する。
「その通り」
「じゃ倒す」
全てのページを発射。光に包まれ魔力の玉が飛んでいくが殺人鬼はそれをよけ、当たり相場物は全て斬り落としていく。
内心かなり驚きつつも次々とページを破り魔法を発動させていく。この本はまるごと射撃魔法な上、低コストな魔法なので連射して打てるのが最大のめりっとである。他の魔法を入れた本も何冊か持ってきてはいるが基本魔法使いは遠距離で攻めるので近接とかいらない。
「ソレぇ!」
なんて考えは昔の考え方である。正直古い。
体を魔力で包み込み拳を突き出し短剣を受けとめようとすると、後ろから引っ張られる。俺がいた所には殺人鬼が短剣を振りおろした状態で立っていた。眼は血走っており狂気的な笑みを浮かべていた。後ろをみるとエスが魔法を使って俺を引っ張ったらしく、鎖が浮かんでいる。
「気をつけろ、あれは、毒が仕込んである」
「毒か、それと思いだしたけど魔法を斬れるんだったな」
あのままエスが俺のことを引っ張ってくれずにいたら俺は腕を斬りおとされて反撃もできずに懐に潜り込まれとどめを刺されていただろう。
「ありがと」
「……さっさと倒せ」
エスは照れながら顔を逸らしレンからは見えないようにする。幸運にもあたりは暗く彼もエスの顔を確認するほどの余裕はなかった。
ナイフが弧を描く、目で追えないほどの速さで目前を通り過ぎていく。速すぎる、いくらなんでも速すぎる。魔法で体を強化しているのか、魔眼でみても何もないが何かあるのか。ひたすら右へ左へと体を動かし銀色の斬撃をかわしていく。
「避けるね、きみ」
「そりゃ当たったら危ないしな」
ナイフが風を切る。うまくかわすが、かわすことに集中しすぎて攻撃ができない。本来なら魔法で完全防御し攻撃をする戦い方なのだが、こうぶんぶん振り回されては近づけない。頭を下げて横の薙ぎ払いをかわす。
「一つ聞かせてもらっていいか?」
「なんだい?」
お互い手を止め、戦いをやめ正面から向き合う。
「お前はどうして人を殺しているんだ?」
俺の最大の疑問。それを殺人鬼である奴に投げかけた。一番気になっていたことだった。
「どうして……だと?」
殺人鬼は笑った。それはもう盛大に、腹を抱えて、声をあげて笑った。
「なぜって?それは私が殺人鬼だからだよ!殺人鬼ってのは人を殺すもんだろ?」
「……質問を変える。どうしてお前は殺人鬼なんだ?」
「どうしてって?それは――――」
――――沈黙。
おかしいのだ。
なぜ二度目の人生まで人殺しをしなくてはいけない?
なぜ人を殺さなければいけないのか?
なぜ殺人鬼でいようとするのだ?
「お前は殺人鬼である必要なんてないはずだ」
「……だまれ」
「二度目の人生だ。なぜそこまでして殺人であろうとするんだ?」
「だまれ!!」
風を切る音。
ナイフが空を切る。
「何故私は殺人鬼であってはだめなのだ!!」
「お前の人生はあの時に終わったんだぞ!」
「知るか!!ならこの記憶は何なんだ!!私は何なんだ、何故人を殺した、何故私はこうあるべきなんだ、私はどうして人殺しなんだ!」
嫌だったら辞めればいいじゃないか。
俺はそう言いかけ言葉を呑む。
こいつの頭の中には前世の記憶が根強く張り付いているんだ。俺やエスはこのような生活を望んでいたから簡単に切り替えれた。こんな突拍子な話でも受け入れれたんだ。でも目の前にいるのは、その生きたか知らない人間だ。何も望んでいなかった。こいつは本来の自分を忘れて殺人鬼となっている。
「お前は、だめだったんだな」
お前は殺人鬼としての生き方しかやっていけないんだな。
「俺にはお前を救えないよ。でも止めることはできる」
「止めるだと、私をか?ほざけ。今日は虫の居所が悪い。お前とそこの女をバラバラにしてやる」
ナイフを強く握る。
先ほどとは違って、かなりやる気だ。今までの飄々として感じは消え、明確な殺意をこちらに向けてくる。俺の後ろにいるエスもそれを感じ取ったようで舌打ちをする。
俺も左手で本を開き構える。右手はいつでも反撃できるようにフリーにしておく。あいては手慣れた殺人鬼で魔法を斬り裂く毒の魔剣持ち、こっちは魔法を主体で戦う学園の生徒。絶望的だが、俺には元勇者、後ろにいるエスには元魔王という肩書がつく。
さてどう戦おうか。
「そこまでですわ!」
暗闇に響く女性の声。
ああ、どうして来たのか。
俺は聞きなれた声の主の方を向く。そこには自信満々の顔をした主席ちゃんが立っていた。
約束では捜査だけで戦闘は参加しない約束じゃ?
「そんなの忘れたわ!」
「さいですか」
彼女は腰に差している剣を抜くと脚をそろえ、剣を顔の頬の横につけるようにした。突きの構えである。彼女が剣を使うのは容易に想像できるが、あの両刃の剣でレイピアのような攻撃をするのか。
「下がってろ、邪魔になるだろ!」
俺が言う前にエスが言った。
今俺と殺人鬼との魔法戦の間に入ると、俺が撃てなくなってしまう。
「おいどこみてんだよ」
ぼそりと呟くように言ったが俺にははっきりと聞こえた。それほどにまで接近されていた。奴は笑っていた、確実に俺の懐に入っていた。何をしても逃れる気がしない。せめて急所を逸らせば、
「ここですわ!」
一瞬だった。
俺と殺人鬼の間に割って入る。殺人鬼は俺の隙を着いたつもりだったが、あまりもの速さに驚き一度下がろうとするが、そのまま主席ちゃんは攻撃の手を緩めずに押す。バックステップで下がる相手に対して剣をレイピアのように使い右手を全力で前に出し、刺し貫こうとする。その動きも見事なものだった。俺はこの剣撃よりも優秀なものをみたことがあるが、それでもこの歳では早い。さすが主席といったところか。
「逃がしませんわ!」
「逃がせやこら!」
殺人鬼が持ったナイフが光りだす。所有者の魔力に反応しているのか。
「いたぞ!!」
後ろからの声に反応する。振り向くとそこには大人が複数立っていた。ここからでもわかる、あれは帝都の騎士だ。主席ちゃんはにやりと笑う。
「私が一人で来たとでも思っていたのですか?私が力不足なのは知りましたから。ですから人を呼んでもなんらおかしくないですよね」
「てめぇ……クソが!」
殺人鬼の足元に魔法陣が現れる。俺はそれを解析する。それは一時的な透明化と身体強化だった。殺人鬼は高く飛ぼうとした。
「あばよ」
飛んだ。
「逃がすか!」
俺も後を追う。このままでは逃げられてしまう。ここまで追い詰めたのに逃げられてしまう。発動は向うが明らかに速かった。そんなとき紫色の鎖が逃げようとしている殺人鬼に絡みつく。後ろをみると壁にもたれかかっているエスだった。右手で鎖をもち引っ張ると、空中にいる奴は体勢を崩す。
その絶好のタイミングを逃がすわけもなく。同じように高く飛ぶ。魔道書を取り出し全ての力を降り注ぐ。本に強化や硬化、ありとあらゆる魔法を発動させる。
「あれは」
エスも懐かしかったのか、声をだす。そういえばこの技を最初に食らったのはエスだったな。本を両手で持ちゆっくりと振り上げる。空中にいる殺人鬼よりちょっと高い位置でいったん止まる。そのまま攻撃を貯める。本が暗闇の街のなかで強く光る。
「くそ痛てぇぞ!」
そのまま振り上げた本を力いっぱい振り下ろし、本の角で思いっきり殺人鬼の顔を殴りつける。
なんともゆるい幕切れか、しかし俺が持っている近接技のなかでは最強である。
どうもシャラシャランこと黒明星です。
さいきん現実の方でかなり忙しく、あまり書く機会がありませんでした。今私は文章を書く学校に通っています。今までの文章を見返し、かなり表現できていない部分が多く、私自身未熟さを知りました。
この「第十三話」は途中まで昔の。2014年のころの私が書いた文章で、それから先は今の私が書いたぶんしょうです。
本で戦う魔法使いは私はかなり気に入っているんで大切にしようと思っています。昔の自分が考えた物なのですが、進めれるところまで行こうと思います。正直他に面白い話は一杯あるのですが、これを書いてみたいと思っています。
非常に内容が荒いのでちょっとまとめて全話し書き足したいと思います。
もしかしたら前の話があなたの知っている、レンくんとエスちゃんがあるかもしれません。全て更新したら、一度このようなあとがきでも報告したいと思います。
これが私の小説です。
でもいまからもっと面白いものを書いて行きたいです。
これからも私、シャラシャランこと黒明星をよろしくお願いします。