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第十二話

みなさまおひさしぶりです!

シャラシャランこと黒明星です!

プロットのみなおしは終わったのですが、なんだかニコニコのほうでの活動がダラダラと続いて長くなってきました。

これから長期的に連載してきたいと思います。

ご支援のほどお願いします。





 冷たい風が吹き抜ける。風は髪をそよがせ、体は寒さで少し震える。今日は星が綺麗な夜だ。こんな時は二人で星を眺めたいな。


『エス聞こえるか?』

「大丈夫だ。すべて概ね良好だ。しかし寒い」

『俺もだ。ここまで風が強いとは思わなかった』

 私は今協会の鐘の上の屋根に上って座っている。対してレンは今街の反対側の高い建物の上に上っているらしい。お互い距離があるので通信をして話す。そしてどちらか一方が怪しい人物を見つけたら報告するといった方法だ。

「しかし本当にこの時間帯なのか、怪しいぞ」

『そう言わず。周りを見ろよ」

「うーむ」

 私は少し唸った後魔眼を発動させる。この世界では魔眼は珍しくないらしく、任意で発動できる上に魔眼を作ることもできるらしい。前世の世界ではそこそこ珍しかったのだが。こちら側ではさほど珍しくないらしい。しかし少々問題があるので私たちと同い年で使っている人はいないだろう。あ、奴は、レンは別だ。あいつは魔法の性質上使っているだろう。しかも私と同じく、複数の魔眼を持っているだろう。

「しかし、あの殺人鬼、もしや……」

 見覚えがあるあのマーク、それに殺人鬼という単語。前世でも確か似たような事件があったような。

『何か言ったか?』

「いや何もない」

 そう言った直後私は立ち上がった。裏路地の方へ誰かが走っていくのが見えた。そしてその後ろを追いかけるかのように走っていく人影。もしや、

「市場の裏路地。それらしい奴を発見した。先に行くぞ」

『俺もそっちに行くぞ』

「ゆっくり来いよ。私が先に片づけてやる」

『そう言うなよ』

 私は少し後ろに下がった後ブーツの靴ひもを固く結んだあと女装を付けて屋根を蹴り空へと飛んだ。羽織っているロングコートが蝙蝠の羽のように広がる。そのままゆっくりと下降する。さすが便利な魔法だ、こんなちんけな安物コートもこの通り私にかかれば一経うの魔防具になる。 

 何事もなく地面に足をつける。そのまま走りだし裏路地に急ぐ。何かあってからでは遅いのだ。しかしなぜ魔王だったわたしがここまで必死になるのか。最近あいつと一緒にいるからなのか、調子が狂う上に、楽しいのだ。さっさと殺人鬼を捕まえてレンにほめてもらおう。

「そこまでだ。そのナイフを下ろしてもらおうか」

 指輪をはめた右手を前に出す。相手も私の魔力と存在に気付き振り向く。すぐにナイフを下ろし影から出てくる。月明かりに照らされたのは仮面と皮のコートを羽織った女性だった。そして光るのは銀色のナイフ。禍々しい魔力がもれている、おそらく強化された物か、なにかしら特殊な武器だろう。

「それで?あんた誰だい?」

「私はこの町に住むただの学生だよ。いやただのではないか」

「で?何のようだい?見てのとおり今忙しいんだけど?」

「貴様には、前世の記憶があったりはするか?」

「あ?」

 よし食いついてきた。顔はよく見えないが反応があるということは興味を示してくれているということだ。

「いや私も同じでな。お前もそうなのだろう殺人鬼マーダー?」

「……へぇー。そこまでわかってるんだ」

「前世でお前を捕まえたのは私だからな」

 あの時は暇つぶしに人間と混ざって探偵として仕事をしているときだった。たまたまもらった依頼が当時起こっていた惨殺事件の解決だった。私はこれを引き受け事件解決に動いた。その時も夜だった。街が一望できる高い場所に上り魔眼を発動させて見張っていたとき、走る人影を見つけた。すぐに降りて走ったら。遅かった。人は助けられなかったが殺人鬼は捕まえられた。奴は男で自分のことをマーダーと名乗っていた。何より特徴的だったのはそのナイフ。最良の素材で作られた鋭利なものだった。それに加えて幾多もの魔法加工がされており、当時魔王として名を馳せていた私でも身震いするほどの代物だった。そして特徴といえばもうひとつ。刺青だった。それは奴のトレードマークでもあり、恐怖の代名詞でもあったマーク。私は覚えている。

「お前は間違いなくマーダーだ」

 目の前の殺人鬼は高らかに笑った。何がおかしいのか。笑った後彼女は仮面をとり素顔をさらした。顔は整っており、間違いなく美女の部類に入るだろう。年齢は二十代か。次々と顔の特徴を記憶に刻み込んでいく。

「正解だ。私がそうだよ。しかし驚いたな、まさか同じ様な境遇の人と会うとはね!君は私を過去に捕まえたといってたな。ってことはあの探偵かい?」

「その通りだ。私だ」

「ってことは今世でも同じように捕まえるわけだ」

「もちろん」

「じゃ殺すわ」

《Boost》

 体を全力でひねりナイフの突きをかわす。

 は、はやい!

 両手を地面につけムーンサルトのような動きになる。しかし蹴りはあたらず着地した後を狙われる。強化した腕でナイフではなく腕をクロスして相手の腕を受け止める。けりをいれ間合いを取り、足に魔力をこめる。

「いくぞ!!」

 全力で走り助走を付けてから飛ぶ、そのまま空中で体をひねりスピードをつけ空中で回し蹴りと踵落としを当てる。

「暗衝蹴!!」

 相手は私の蹴りを受け止める。

 勝機、私はそう思い魔力を流し威力を高める。重みでマーダーの立っているレンガが割れへこむ。まだ耐えるのか。

「ぅらあ!!」

 マーダーは私の蹴りを押し戻す。一瞬ひるんだところを切られる。しかしそれに気づかない私ではない。足から魔力を放出しジェットのように移動して距離をとる。それでもかすり傷程度だが斬られたな。しかし戦闘に支障を来たすほどではないな。

「まじかよ……」

「それは私の台詞だ殺人鬼」

 もう一度構える。

 私はレンとは違って遠距離から攻撃するのは苦手なので、敵の近くにいって殴る方が私にあっているのである。遠距離魔法は使えなくないがちゃんと狙えないのでこうしているのだ。なので魔法媒体も指輪や杖を使っている。魔法も主に強化や近距離で効果を発するようなものに偏っている。

「いくぞ!」

《Boost》

 もう一段階速度と体の強度を上げる。走った直後に右足を前に出し相手をけりつける。マーダーは私の攻撃の重さを恐れているのか回避に徹している。しかし隙や、攻撃の合間を縫って何度も攻撃をしてくる。しかし人間の普通の打撃程度であれば今は痛くもない。なのだが

「オラぁ!」

 なぜかナイフだけは私の強化魔法や魔力コーティングを裂いて攻撃してくる。私はそれに気づいた直後すぐにナイフの攻撃だけはかわさすようにした。

 足技基本だがついに私もこぶしを使うようにした。

「衝波!」

 こぶしを前に継ぎだし魔法による衝撃を出す。この魔法自体に攻撃力はなく、何かあるとすれば。衝撃波を出せることだ。見事衝撃波は目前の殺人鬼にあたり、もう一度距離を開ける。これで襲われた人を逃がせる。無理やり立たせた後路地裏から出るように言う。襲われていた女性はすぐに荷物を持って路地裏から飛び出るかのように走っていった。

「いってぇ」

 吹き飛ばされた殺人鬼は何事もなかったかのようにゆっくりと立ち上がった。相手はまだ余力を残しているようだな。ダメだな、昔感覚で戦ってはダメだな。今の私は人間だ。

 慎重にもう一発当てる。まだ倒れないか。ならばもう一発。次は強い奴を。

「え……」

 ぐらりと視界が揺れ横に倒れる。ためていた魔力がなくなり虚無感に襲われる。

「はは、やっとかよ。お前粘りすぎな」

 倒れた私の横に殺人鬼が歩み寄ってくる。

「私のナイフは特殊でね。硬化とかしてるんだけど、実はいうと毒を仕込んでいてね。普通ちょっと傷をつけたら毒が入るようにしてるんだけどなぁ~。あんたどんだけ耐えるんだよ」

 かろうじて体が動かせる程度、しかし魔法は使えない。なんの毒なのか、前世ならば毒をもらうほどのへまはしなかったし、何より体が丈夫だったので毒なんてものを気にも留めていなかった。今はそれが悔やまれる、私は解毒魔法などの支援魔法を何一つ知らない。

 なんとか体を振るえる腕で支え壁にもたれかかる。

「なんだ悔しいのかい?対策してなかった自分を恨むんだね、というよりこの毒は今世にきてから思いついて付加した物だから対策の仕様がないけどね」

 ゆっくりと近づいてくる。

「今日は一人殺すつもりだったんだけど、最初のは逃げちゃったし、代わりにお前の命もらうよ」

「ぐ……」

 右手を前に突出し魔法を放とうとするが慣れ親しんだ指輪は何も反応しない。殺人鬼はにやりとあざ笑う、まるで無駄だと言っているかのようでもあった。

 闇の中銀色のナイフが照らされ光る。今の私は魔法を使えないただの少女である。これが魔族であれば変わったのだろう。しかし今は、違う。今までに感じたことのない恐怖感や絶望感に襲われる。怖い、恐い、こわい、自然と手が震え、涙がこぼれる。

「なんだい?今になって怖いって言うのかい?」

「……や、だ……」

「ん?なんだって?」

「やだ……まだ……まだ、死にたくない……」

「いひひひ、いいね!その絶望した顔!」

 殺人鬼は手を空に掲げ嬉しそうに笑う。狂気的な笑みだった。本当の殺人鬼はこんな人間なのか、前世の私はこんなのを相手に戦い捕まえたのか。驚きに混じり敗北感を感じる。こんなにも違うのか、種族の差とはここまで大きいのか。私一人では何もできないのか。勝てない、もうだめだ、殺されるだけだ。

 後ろに下がろうとするも背後にあるのは冷たい石の煉瓦でできた壁だけ。

「嫌だ……まだ死にたくない……まだ、何もしてないんだ……やっと、やっと魔王なんていう職から解放されたんだ……やっと普通の少女として生きていけると思ったのに……そんな――――」




「死にたくない」




「うおおおおおっりゃあああああああああ!!」

 咆哮。

 見慣れた制服に本を何冊も釣った格好で降りてきたのはあいつだった。

「英雄は遅れてくるってね!」

「……来るのが遅いぞ阿呆が」

 うれしくて涙がこぼれた。










ニコニコで実況やラジオ等をやっています。

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