第二話 わたしの目覚め。
第二話 わたしの目覚め。
不意に目が覚めた。
「………………………………ぅ……んっ……」
いつの間に寝ていたのだろうか、20畳ほどの洋室にあるキングサイズのベッドの上、うつ伏せになる形で柔らかい枕に顔をうずめていた。
「………………んっ……ふぁ……ぁあんっ」
眠気眼を小さな手で擦りつつ辺りを見渡すと、すでに夜も更けていたらしく大窓のカーテンの隙間から暗くなった夜空が見え、青白く薄光る月明かりが差し込んできている。
「…………、」
不意に、不安が込み上げてくる。
世界に自分ただ一人だけが存在しているような錯覚。
緑深い場所に立地している屋敷のはずなのに虫の鳴き声ひとつ聞こえてこない。
自分が音一つない世界にただ一人取り残された亡霊の様な気がして、無性に泣きたくなってくる。
「おがっ………おがーざんっ………どこ……、どこに゛いるの゛っ……!」
どうしようもなくって涙が込み上げてくる、訳もわからず部屋を飛び出して、廊下を彷徨う。
行く宛もなく十分程うろつき回ったら、ぼんやりと温かい灯りが見えてきた。
その間も涙は止まる気配を見えず、おがーざん、おがーざんと喚き散らしている。
ガチャ。
おそらく書斎なのだろう。外付けランプの明かりに引き寄せられたどり着いた部屋から、薄い夜着を着て肩にストールを掛けた妙齢の美女が出てきた。
「あら、……どうしたのエルニ?もう寝ている時間よ?」
その美女の笑顔を見た途端、どうしようもない程の安心感がこみ上げてきて感情のダムが決壊してしまった。
何故なら――。
――ぁああああああああ゛あ゛あ゛あ゛、おがーざああああああぁんっっ!。
何を訴えるわけでもなく、ただひたすら泣き喚き続けるわたしを
「あらあら、怖い夢でも見たのかしら。ほら大丈夫よ、もうお母さんがいるからね……」
と、ひたすら抱きしめながらアヤしつづけるこの女性のことを、
大好きなお母さんだと知っていたのだから――。
第二話了。
第二話投稿です。
主人公の異世界での目覚め。
この場合の目覚めは意識の目覚めではなく、自我の目覚めです。
この話は私の幼い頃の記憶をモデルにしています。