臆病な僕は 1
目を開けると覗き込むようにロザリーがいた。
視線が合うと、彼はいつものように柔らかく笑う。
その表情に何だかもやもやしてたものが、静かになっていって‥‥。
「落ちついた‥‥かな」
いっぱい泣いて疲れたのだろう、いつの間にか寝てしまっていて、目覚めた私にロザリーは言う。
「心配かけてごめんなさい」
よし、考えずに言葉が出る。
ちょっと寝たら、頭の中の混乱はましになったみたい。
ただ、何がどうしたかを整理するために、思い出すのは気分が悪い。
「あ、いや。僕が守るなんて言いながら、止める事さえ出来なくて」
なに、なに?
表情も、言い分も暗いよ。
思い出したくないって思ってんだから、蒸し返さないでよ。
大体、守るとかそんな話の以前に私がでしゃばったんだから、自業自得なような。
じっとしてれば良かったのに、陰口みたいなのに嫌悪してでしゃばった。
逃げる口実だったし、あわよくば認められないかな、なんて打算もあったんだよね。
そんなんだから大失敗して‥‥、
怖い目に会った。
そういえばロザリーにギュってしてもらった匂い、心地よかったなあ。
嫌なことよりも良かったことの印象が強くて、頑張って自分を責めているロザリーの言葉なんて耳に入らない。
あの香りに包まれたあの瞬間の満足感を思い出すと笑顔が止まらない。
「ねぇロザリー。お願いがあるの」
「なに?」
大切な懺悔を中断して、私のお願いを聞いてくれる。
私のお願いは抱きしめさせて。
ロザリーが子供で良かった。
したいときに、ぎゅーって出来る。
これが同い年や見るからに年上な方だったら、こんなこと出来ないもんね。
「あー良いなぁ。この匂い。やっぱり大好き。ねぇロザリーこれなんて香水」
抱きしめた分、濃く香る匂いをたずねる。
「ぇ、あ、香水?」
焦った声でロザリーは聞き返す。
ん、返すってことは、香水じゃ通じないのかしら、他に何か言い方あったっけ。
コロン?それともここでは違う名前なのかしら。
「あなたから香る優しい香り」
「優しいかは分かんないけど、これは僕の花の匂いじゃないかな。ほら前、咲かせたあの花。だから、獣たちでいうと体臭?」
体臭‥‥なのかぁ。さすが妖精だね。体臭まで華やか。
「そっかぁ、ロザリーの匂いなんだ」
匂いの元が分かったからと言って、離す私ではない。
三話あたりで、それは克服した。
「抱きしめられた状況で僕の匂いが好きとか言われると、照れるんだけど」
もっと香りが楽しみたくてロザリーの髪に頬を埋めていると、彼がそう言う。
成る程、ものすごい愛の告白だよね。
「匂い」をのぞけば。
いや、ものすっごく変態なセリフだな、それ。
「照れるなら、解放してあげよう」
変態的な自分を想像すると、少し恥ずかしくなった。
名残惜しいが、ロザリーを抱擁から開放してあげる。
彼は照れているのか、視線を合わせてくれない。
意識されて、喜ぶべきか?
変態行為につき合わせて、ちゃんと反省すべきか?
「本気で僕の香りが大丈夫なら、ちょっと息を止めてみて」
息‥‥?
大きく吸い込んで、口許に手をあてる。私なりの止めたよサイン。
「嫌だったら、遠くに逃げればいいからね」
にっこり笑う。
何も変わった様子は無いけれど‥‥
「これが僕の本当の香り」
止めていた呼吸をはじめると、体の色んな所から強い花の香りが感じられた。
匂いって鼻以外でも感じるんだ‥‥
臭覚の無い髪や、足。体の部分が匂いを歓迎している。
離れていてもすごく香る濃い匂い。
「嫌じゃない?」
「全然。むしろこのままでいたい」
何の匂いに似てるんだろう?
すごく懐かしくて、落ち着く。
良いアロマだ。
「嫌かなって、極力抑えるようにしていたのだけど、姫は嫌がってたし」
「えーもったいない」
その言葉にほっとするようにロザリーは笑う。
ああ、我慢してたんだなって思ってしまう、
真相は本人の心の中だけど。
でも、ほんと、損してるわお姫様。
状況がラブラブなのに、
楓さんがラブラブにしない‥‥。
まだ発展途中です。




