たとえ自分の物でなくとも 7
「ひめ。じゃなかったカエデは髪が黒いんだから、レタルよりティコに毛皮借りればよかったのに」
「白い毛皮。可愛いじゃない」
髪も黒。制服も暗い色。黒よりも、あえて違う色で着飾る方が、目について可愛い。ホントは白よりも、ピンクとか、モスグリーンとか‥‥あぁ、ユーノのキャラメル色とかが好みなのだけど。
そんな色の狼の毛皮なんて聞いたこと無いから、贅沢は言えない。
うーんでも、白があるんだから、キャラメルっぽいのもあるかもしれないなぁ。
「可愛いとかじゃなくて、如何にも着てますよってのがね」
全然違う視点だったって事を自覚させるように‥‥苦笑いでユーノはちょっぴり嫌なことを言う。
着てます。ってそりゃ、着てますのだから、しかたないでしょ。
最初にロザリーやレタルに言ったことをこいつが改めて言うのがムカつく。
知ってますよ。着てるんだから。
「わざとだ。隠す方がめだつ。ならば、人くだりだとわからせる方が堂々と着ているアピールができる」
「なるほど。レタルの隊は人化が多いから、そっちのが都合いいのかな」
「多いのは、特に意識はしていないが」
人くだりって何だろうって二人の話を聞いてるとユーノが少し考えるように止まり、こちらに向いて小声で言った。
「カエデ。しばらく被り物って言われるけど、バレたんじゃなくて『嫌がらせ』だから気にするな」
大人しく頷いておく。
確かに、本当の事だし聞かされてなきゃ焦るかもしれない。でも、嫌がらせって分かって聞き逃すのもなんだかなぁ。
そのゼンセンって呼ばれる場所にたどり着くのに結構歩く。
青い空が森の木々の間から見えて、時間も随分たってることに気がついた。
霧のもやもやな朝っぱらから、快晴なお昼前って位かな。
いつも居たあの場所から、かなり離れていると言うことで、妙に不安になるのは緊張してるせいなんだろう。
「疲れた?」
相変わらず余裕そうなユーノの言葉を否定する。
前と違って、朝の鍛練に『走る』行為を混ぜてみたから、少しは森の中を歩くのは平気になった。
それでも、慣れないのは長距離を歩いてるせいかな。
息までは上がらないけど、毛皮の当たる皮膚が汗ばんでる気がする。
きっと毛皮に慣れてないせいだと思いたい。
でも‥‥借り物を汗まみれってのはどうだろう?
これ返すとき洗濯しなきゃね‥‥
でも、毛皮なんてどうやって洗うのかは私に聞いてはいけない。
だって知らないもん。
ゼンセンは、森が開けている場所にあった。
いや、開けているっていうか、後方に森が構えてるって感じ。
森がない外は、緑色が全くなく茶色の土しか見えない。
これってば、荒野だ。
「あの遠くに見えるのが、ニンゲンの集落だ」
ユーノの指差す先を見ると、荒野の先の方に、小さな建物っぽいのが見える。
「森の外って‥‥自然が全くないのね」
「ニンゲンが必要ないって土をひっくり返すんだ。土を掘ったりしたら、草だって花だって咲くもんか」
憎々しげに建物を睨み付ける。
ユーノ達が言う。『ニンゲン』って言葉はやっぱり好きじゃない。彼が口にだすたびに、怖くてドキドキする。
にしても、木を切ったり、緑を掘り返したり、人ってばなんのためにそんな嫌がらせをするんだろう。
ユーノじゃなくてもこの状況見れば怒るのは納得してしまう。
侵食から守るため、怒り。
相手を見張る。
「人間を見張ってるなら、この間侵入されたのは何で」
誘拐犯にしろ、柄の悪い村人にしろ、森の中に入り込んでたわけだ。
逃げ出したお姫様だって、こうやって見張っているのならば、簡単に森の外には出られない。
「見張ってるだけだって」
こちらを見向きもせずユーノが言う。
だから、そんな簡単に人が出入りできるのを、見てるだけで良いのか?ってな話になるじゃないか。
それとも、もしかして。
「何も‥‥しないの」
「そう。手を出したら、戦争をはじめますってことなんだぜ。なら何のためにカエデが森に来たのか‥‥」
ニンゲン達に見捨てられた可哀想なお姫様。彼女が欲しいと王が言う。
彼女を差し出す代わりに、こちらに干渉しないでくれってニンゲンの王が言う。
王が了承し姫を受け取った時点で、獣達は牙をおさめた。
「あ‥‥そっか」
「まあ。ニンゲンはここを堂々と通ろうだなんて考えてないさ。ここから見えないルートで森に入ってくるんだよ」
anotherな土地に侵入するのは勇気がいるだろう。それが、戦いがお休みったって、敵とされる対象に見つかる場所から入ってくるわけ無い。
普通に考えたら、答えは出ていた話だ。
「ねぇユーノ--」
「お喋りはおしまい。これからは、言葉を余り口に出しちゃだめだ」
そう言ってユーノは私の口元に人差し指を当てて、閉ざした。
「な」
何でって口を開こうとすると、彼の指が口に入ってくる事に気がつき、瞳で訴える。
「獣の耳は、ニンゲンなんかよりもよく聞こえるんだ」
そうなんだーって納得すると、口から指を剥がす。
「こんな声も危ないかも」
不意に耳元に唇を寄せて、小さな小さな声でユーノは呟いた。
「な! え! えぇ!!」
「大きな声だしたらだめって」
「ユーノが、脅かすからでしょ!」
「脅かす? とんでもない。姫を護るためそれは事実なんだよ」
事実?
ユーノの言葉を思い出す。
レタルにも先程の言葉が聞こえてるってのが、ちょっと恥ずかしい。
ユーノは耳元で、
「姫は、俺の物って事にしとくから」
って言った。
間がめちゃくちゃ開いてしまった‥‥
皆様コンバンワ。いつもありがとうございます~。
忙しいのを理由にして某アプリで遊びまくってるんですが「遊びじゃなくて、本気なんだよ!!」って素で言える位、命が消費されております。
ダメ人間ー。
そんな中、楓さんは、なぜかユーノが出張ってきて大変でございます。
うーーーーーん。キャラメル色の鼬君とラブラブってのもなぁ。(ピンクの王様とラブラブってのもおかしいとか突っ込んではいけない)
それではまた、よろしくお願いします。




