たとえ自分の物でなくとも 1
コンバンワ。
いつも読んでくださりどうもありがとうございます~。
名前解決編も終わったことだし次の塊に進めました。
番外編はとりあえず退けといたのですが‥‥どっかに無理やりねじ込めたら組み込みますが今のところ別様で作ろうかと思案中です。
恋愛要素が少ない作品なので、これから番外編は無駄に甘い(作者のストレスにより比例)のが、たまーに作って投下していく予定です。
「----私。楓って言うのよ」
嬉しくて、ものすごい笑顔で答えてしまった。
それは、ものすごく自覚してる。
でもね。名前って、
自分の名前を呼んでもらえるのって、なんて嬉しい事なんだろうって今更ながら自覚した。
当たり前の事なのにね。
不自由なかったわけだから、教えなかった私も悪いけど、誰一人聞かなかったって言うのが‥‥よく考えれば寂しいわけで。
その後ロザリーは「ありがとう。カエデ」って呼んでくれた。
あなた。→楓。になっただけで何も変わった事は無いのに、さっきのロザリーとシンジュの話のお陰で、お姫様じゃなくて私を認識してくれたと思ってしまう。
本とじゃないかもしれないけど、思うだけなんだから、いいよね。
思うだけ、なんだから‥‥
■ ■ ■
「あのね。ユーノは?」
先程庭で、ユーノは、ロザリンドの言葉に合わせる様に、根っこみたいな、蔦みたいな、なんか、枝っぽいのが絡み付いて何処かへ連れていかれてしまった。
彼の言葉に合わせてなんだから、ロザリーが指示して、行き先もちゃんと知ってると思うんだよね。
「不審者が心配?」
不機嫌な声で問いかける。
それは少し怖くて‥‥ロザリーから怒りが感じ取れた。
不審者だなんて、そりゃ、窓から入り込むだなんて、常識ないって言えばそうなんだけど。
そんなに怒ることじゃないと思う。
このお怒りからすると、ユーノはどんなお仕置きを受けてるのだろう。
半分‥‥いや、三分の一ぐらい、私の責任もあるから、罪悪感が半端ない。
「だって。ロザリーはすごく怒ってたよね」
「怒ってはない‥‥」
不機嫌な声のまま。表情までも、苛立ちが読み取れそうで‥‥その態度がおこってるって言うんだよ。
と、 は、 思うんだけど。
怖くて指摘なんかできない。
暗黙して、横顔を見ていたら、その私の視線に気がついたようで、不審そうに見上げてきた。
「大丈夫。本当に手当てをするだけだから」
「手当て?」
そう言えば、痛みはなんとかって語りかけてたよね。本人は否定してたけど。
「獣達は、怪我や病気をすぐ隠す。大病でも大したことないって、こっそり我慢するんだ」
猫とか犬とかは怪我をしても痛いだなんていわないから、こっそり死んぢゃうから気を付けなさいって、よく言うけど。
それは言葉が話せないからだと思ってた‥‥。
「あなたを守る僕の罠は我慢できるほど適当に造ったつもりはない。二度と息が出来ないように‥‥叩きつけてるハズだ」
見てたのによくわからなかったけど、ユーノが窓に飛びうつる‥‥その瞬間に何かが彼を叩き落とした。
それが、物凄く痛いって所じゃなくて、命が危ないぐらい。
重症なんだってこと?
「それって‥‥」
「まさか、ユーノが最初の侵入者になるなんて思ってなかったけど。息は止まってないみたいで、安心した」
安心した‥‥って優しい言葉がロザリーの口から漏れる。
先のイライラな言葉は怒ってるのかと思ったけど、心配だから強い口調になってたんだね。
「悪いのはユーノだけど、これで彼の命を摘んでしまったら、きっと、ずっと枷になってしまう‥‥」
彼は優しい‥‥その優しさが少し羨ましく思えてしまう。
何も思い悩む必要はないのに、自分のせいで他人が傷ついたら。と、そこまで思うんだよね。
「‥‥僕もカエデも」
ユーノに軽く嫉妬してたら突然ひっくるめられた。
いやっ。確かに後味悪いですが、あー。そうだね。
あれで命なくなってたら、悩むかもしれない。
多分、悩むよ。
でも、本日ニドメのカエデ。
きゃーん。
ユーノ。ありがとう。
いやぁ、不謹慎な。
ロザリーがこんなに悩ましいのに、私だけ喜んでるって大問題だよ。
でもでも。嬉しいのは致し方ない。
これは、ユーノ君にはお礼をばいわなけりゃ。
そうすると、シンジュにもいるのかな?
心配するなら、姿を見に行こうかとロザリーは執務室行きの足の方向を変えた。
王様のお仕事の時間が大分削られちゃうから、いいのかなぁとは思うけど。心配なんだから、口は閉ざしておこう。
草のイケメン妖精さん辺りが、また怒りそうだけどね。
それもいつものことだから、対して日常には変わりはない‥‥よね。
手を引かれて廊下を歩く。
相変わらず浴びせられてる、周りの蔑む目なんかいつも以上に気にならない。
美男美女がそろって、幸せそうな私を羨ましく睨み付けてる絵なんて、よく考えれば最高だ。
要は、思考の転換なのだよ。
「また、ニンゲンだ」
そうそう。そんな事言われてもね。
恐れ多くて近寄れないんだって思えば平気。
「いつも王の側で邪魔だ。ニンゲンは」
「し~。聞こえたら殺されちゃうよ」
「怖いね」
「ニンゲン。怖い」
そう‥‥耳を塞いで聞かなければ良いことだ。
それにしても、樹木の妖精さん達は睨み付けてるだけなのに、獣の妖精は群れて陰口を叩くから質が悪い。
頑張って気にしないようにしてる心が少しずつ曲がってしまうわ‥‥
いつも耐えられるのは、普段はこんなに沢山居ないから、聞こえないからで。
今日は何故か廊下を、もふもふ妖精達が埋め尽くしてて、レタルがその中心で押さえるように話を聞いている。
「レタル何事だ!! ユーノの治療はどうした!!」
明らかに不機嫌極まりない表情でロザリーが怒鳴り付けると、フロアは静まり、気がついてない者の視線が集中する。
その視線がまた‥‥痛いんだ。
「獣達がニンゲンを連行してきた。ユーノは吊り下げたまま治療中だ」
「連行? 姿は無いようだが?」
「問題があり、城には入れてない。だが、彼は王と話をしたいと言う」
「話?」
ロザリーの返す言葉にレタルは口を閉ざし、獣の集団から此方に歩いてくる。
側までくると「‥‥の事だ」と小さく耳打ちした。
レタルが耳打ちした内容は聞き取れなかったけど、ロザリーは驚いたように目を見開く。
何か不都合があったのだろうか。
「なるほど、私が探ろう。母では一瞬で終わってしまう」
「ロザリー?」
聞いてみたいけど、聞いていいのか悩ましくて。とりあえず名前だけ呼んでみる。
「あ‥‥えと、客人がいる様で、先にユーノの所で待っててもらえるかな」
「ええ。大丈夫だけど‥‥」
やっぱり私は蚊帳の外らしくて、独りでユーノの元に行けと言われた。
もともと目的地だったのだから、寄り道に付き合わせるのではなく先にいけと言う優しさだと思うけど。
レタルや獣の妖精たちのそわそわを見てると嫌な予感が少しする。
「ロザリーは大丈夫?」
人間に会うのだ、大丈夫なのか‥‥最近出会った悪意を思い出すと心配で仕方ない。
人の私が、そんな心配するのがおかしいとは思うのだけども。
わざわざ森に大した理由も無くやってくるのだろうか。
「話をしにいくんだ、何も心配などいらない。レタルも連れていくし。それに‥‥僕は強いから」
彼は、軽く笑って安心させようとする。
繋がれた小さな手が離れる。
『僕は強いから』なんて、只の強がりにしか聞こえなくて‥‥
でも、『ひとりでユーノの所へ行って王を待っている』それが彼の望むことなら、私は素直に従うしかない。
大丈夫って言うのだから、それを素直に信じよう。




