Extra story ××1
★『デート』って昭和初期はなんていってたんだろう??(´д` ) ホエ?★
「お散歩?」
ロザリーが珍しく城から外に出ようって言った。
いや。珍しく‥‥じゃなくて、初めてじゃない!!!
「散歩って言える距離じゃ終わらないかもしれないけど、ちょっと遠出。ダメかな」
「ダメじゃないよ。喜んで!!」
遠慮ぎみに語尾の声が少し小さくなってたロザリーに驚かれてしまうぐらい、大きな声で返事した。
彼の気が変わる前に絶対GETしたいお約束。
二人きりでお外にお出かけ。
そう、これってば。これってば。
俗に言うデートじゃないだろうか。
デートだぁ、なんて、思っちゃうと顔が緩んで仕方ない。
「ご機嫌だな」
木刀を叩きつけて、セイは呟く。
私と違って鬼様は超不機嫌。
あぁ、いつもだっけか。
「セイがそんなことに気がつくなんて、めずらしいよね」
剣道しかり、胴当ての位置を打ち抜いて振り返りつつ嫌みっぽく言ってみた。
「力一杯なのに、芯は狂ってる‥‥王と何かあったなと思うだけだ」
確かに当たったかなぁって思ってたけど、しっかりかわされていた。
かわしてくれなきゃ、セイの肋骨はポッキリ折れちゃうから、これはこれで良いんだけど。
「うん。この後、デートなんだよ」
隠してもしょうがないから、正直に話してみた。
て、いうか寧ろ、聞いて欲しい。
どうだぁ。王様とデートなんだぜぇ。
「でーと?」
セイは言葉を繰り返す。
後ろにはハテナが沢山ついてる感じだ。
おじいちゃんの時代にデートなんて言葉は無かったのかもしれない。
ものすごくカタカナなんだもん。
えっと‥‥よくわかる日本語は何だろう。逢い引きとかぁ?
自慢しても通じなきゃ意味ないじゃん。
時代が違うのって、悲しいです。
「芯は狂ってるのに、打ち込んだのが全部かわされるのは気に入らないな」
右手首、頭上、打ち込まれる度に切っ先を当て力の方向を変えて避ける。
「当たらないように稽古してるんだよ?」
これからデートなのに、体に傷つけてたまるかぁ。
痛いのはいや。
青アザなんて勘弁。
避けなきゃ体に傷がつく。
それって女の子として大問題だもん。
「まぁ。私でも反らせるのは、稽古だからってセイが本気出してないからでしょ」
何だかんだ言って、私がしっかり避けられるのだから、セイは手を抜いてるんだろうね。
「心外だな。此方はすべて本気だ」
セイの目付きが変わった。
いや、目付きって言うか、雰囲気が変わった気がする。
背中にぞくっとする、いやーな気配。空気まで数度下がったみたいにちょっぴりひんやり。
突き刺す殺気に、木刀を握り直した。どっからでも打ち返せるように、私自身を引き締める。
セイのゆっくり腕を引いた体制が一瞬頭をよぎり‥‥無意識のうちに体を後ろに反らした。
そのまま、仰向けに倒れてしまったけど‥‥
「まぁ‥‥致命傷になる部位はあえて外してるがな」
着き出された木刀の先は、私の喉元の辺り。
刀で反らすのは無理だと判断して、上半身を反らして正解だった。
仰向けに倒れ込んで、また髪の毛とかは砂や泥だらけ。
なんてことしてくれるんだよ。
デートっていったろぅぅぅぅ。
「‥‥今のは避けて正解だ。手前で止めれたと思ったが、予定より突き刺さったな」
確かに、倒れた私の視線が真っ直ぐ空を見て、木刀の先が見える。
うまく先っぽが当たったら、声とか無くなってるよね。
声だけじゃすまないか。
でも、声ってかなり重要だよね。無言でデートって、絵的に嫌すぎる。
「刀で突きなんてしないから‥‥」
「剣道ではしてただろ。竹刀で」
「剣道なんて実践的じゃない」
って、どっかで聞いたことある台詞をセイに返した。
「刀ならな。ここでは色んな凶器が多様な害意を向けてくる」
つきだした木刀と、放った殺意をしまい込んでセイは私が起き上がるのを補助してくれた。
「‥‥しかし、今のは此方が卑怯だった」
「別に謝らなくても」
前提として寸止めはなしなんだし、デートで弛んでた私の方が悪い気がする。
喉元に刃物を突き立てる。そんな戦い方をする相手もそりゃいるだろう。
ここでは、名乗り合って見合いながら決闘だなんてないだろうし‥‥。
「ただ、避けられるなら。実践的な組み方を思慮に入れても問題ないな」
「えぇ?」
「内容は考えておく。あんたは、早くでーととやらに行ってこい」
そうやって、訓練のレベルを上げる宣言を受けて、私は追い払われた。
セイの目が輝いている様に見えたのは‥‥
気のせいだよね、たぶん。
傾斜のある道を問題ない様子でロザリーが先に行く。
それは、ちょっぴりペースが速くて‥‥最初は大丈夫だったけど。気がついたら遅れ出した。
ロザリーってば、王様なんだし。小さなもやしっこだと思ってたら大間違いだ。
「大丈夫?」
「坂が慣れてないだけだよ」
それでも、振り返りながら、心配してくれる姿が嬉しい。
体力はあると思ってたけど、日本ていう都会基準で上の方なだけ。
井の中の蛙って言葉はこういう時に使うわけだ。
「着いたよ」
先に目的地にたどり着いたロザリーが手を差し伸べてそう言う。
彼に体重を預け、引き上げられると、葉っぱばっかりの視界が広がり、空がよく見えた。
その空の真下には‥‥ピンク色の森が埋めつくす。
広がるのは、ピンク色の小さな花を枝につけた木々。
「さくらだ」
思いだし口にした名前は、『桜』。
一面をピンク色に染める、懐かしい樹だ。
学校や河の側に並んで植わってた。
春になると、桜並木を通って道場に向かってたな‥‥。
「さくら?」
ロザリーは、その名前を聞き返す。樹の妖精の王様が知らないなら、あの花は桜ではないのだろう。
もしかしたら名前が違うだけかもしれないけど。
「あのね、向こうの世界に居たときに春になったらピンクの花を満開にさせる樹なの。ちょうどこんな感じに」
嬉しくて、興奮した口調になってしまった。ちゃんとした言葉が出てないけど、たぶん雰囲気は伝わったかな。
「これは『さくら』じゃない、別の樹だ。本当の彼らなら、綺麗な白が一面に見えているハズなんだけど、今回は異種が混じってるみたいだ。ごめん」
「確かに白いお花が一面埋めてるのも綺麗かもね」
何故かロザリーは謝る。
お花で、一面が真っ白なんて経験は無いから、どんなのか想像できないんだけど。
彼が見せたがったのだからきっと綺麗だと思う。
でも、このピンク‥‥淡い赤が、涙腺をなぜだか刺激する。
泣きたくなるくらい。綺麗なのだ。
「そういえば、ロザリーの花もこんな感じの色じゃなかったっけ?」
初めてあった日に見せてもらった手のひらの花。
淡い、淡い赤い花。
「少し違うけど、似たような色‥‥かな」
「満開になったら、きっと素敵ね」
その満開が、どこに咲くかで感想は変わると思うが、手や耳の上とか、アクセサリーみたいな部位に、ふんわり咲いてたら、きっと綺麗に違いない。
小さなロザリーを飾るんだから、かわいい事、間違いなし!だろう。
「ねぇ。ロザリーはいつ満開になるの?」
「花は咲かせないように努力してる」
「なんで! 勿体無い。綺麗なのに」
「この忌々しい赤い色。嫌じゃないの?」
「えー。大好きだよ」
その色に歓喜したのは、懐かしいからだけじゃない。
日本でも、桜や梅なんかを、春に皆愛でてるもの‥‥私も他の人に負けないぐらい大好きだ。
「忌々しいなんて、王様だとしても、お花に失礼です。赤い色を否定しちゃうと、自分だけじゃなくて、この一面のお花が気を悪くするでしょ。こんなに綺麗なのに、だから連れてきてくれたんでしょ?」
「特に此処が特別に見せたかったわけでもない」
お出かけの理由がすっぱり切られてしまった。
此処に連れてきてくれたのは何故?
「じゃあ。何で?」
「あなたはいつも退屈そうに窓の外ばかり見てる。だから、外に連れ出せればと思ってた。それに‥‥」
んんんん?
そうだったけな?
確かに、部屋に居るときは窓の外は見てるけど。
ロザリーが居るときは、そんなつもりは無かったハズ。
退屈そうに‥‥見えてるんだ。
そんなことで気を使わせてるとは、大失態。
「でも、赤い花が嫌いじゃないと分かって良かった」
「うん。寧ろノーマルより大好き」
「‥‥ありがとう」
そう言ってロザリーは恥ずかしそうに笑う。
真っ白のお花も悪くないけど、ピンクのほうが可愛いのは正直な所。
「私も、此処に連れてきてくれて。『ありがとう』だよ。やっぱりお部屋の中って退屈だったかもね」
退屈な私のためにお花見。
お花見は嬉しかったけど、そんな事で悩ませちゃあ、いけない。
そう言えば‥‥もういっこ何か言いたそうにしてたっけ。
「さっき話区切っちゃった。もう1つの理由は何?」
ロザリーに問いかけると、驚いた表情で横を向く。
「それに‥‥神原清と二人きりで外出した事はあるのに、僕とは無いっていうのも」
「なあに?」
小さく、何かゴニョゴニョ言ってる言葉が聞き取れないから、聞いてみた。
ロザリーは慌てて首をふり「何でもない」と言う。
ちょっぴり気にはなるけども、問い詰めたって答えてくれるわけはない。
まぁ。
二人きりの雰囲気が壊れたら何にもならないので、素直に「何でもない」を受け入れた。
お花見デート。王様のチョイスは素敵だった。
でもね。
後で考えると‥‥赤い花に言った『大好き』は‥‥
「ロザリー(の花)が大好き」って事で。
間違って無いけど。
間違っては無いんだけど。
思いっきり告白してる私に、ひとり頭を抱えた。




