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大切なはじめのコト 2




「また、砂まみれになってる」



色々考えながら、自分の部屋に入ると、不機嫌な表情のロザリーが居た。

不機嫌な理由は、多分今の言葉。





ため息交じりの語尾が‥‥呆れてる。




「あ‥‥」


そういえば‥‥

払ってくるの忘れてた。


前回怒られたと言うのに。

砂を払って、何事もなかったよぅって、しなきゃならなかったのに



‥‥学習できてない。



慌てて身体中についた、砂や埃を払う。


見えないから、とりあえず適当に。



「何をしてたかは言いたくないならいいけど。払うから」



座れと指示され、ロザリーの目線より下に下がった所で、彼は手櫛で髪をとかす。


下から顔を見上げる形になるロザリーは不機嫌な表情のまま。




でもね。


動く度に花の香りが漂って‥‥








怒られてるけど幸せだ。








「言いたくないけど、報告はするよ」

「言いたくないなら、いらない」


挙げ足を取るように、却下される。


言いたくないなんて、嫌みをなぜ、私は言っちゃったのかは置いておいて。

聞いてもらわなきゃ疑問が片付かない。


「ううん。話したい事があるから、聞いてほしいの」




ロザリーにしか聞けないカースティ姫の話。

その話をするには、あの男の話は必要で、そうなってくると朝の稽古の話まで伝えておきたい。



私の異変を説明するにはきっと必要なんだもの。



「言いたくない理由は、実は、しばらく稽古をつけてもらってたの」

「‥‥神原清に?」


ロザリーは、セイの名前をすぐ当てる。

当てるっていうか、セイしかいないって、簡単に想像できるよね。


「うん。でね。私、意外に耐えられるの。凄いんだよ。素早い切っ先。返してくる流れ。彼の色んな技に」

「‥‥」


ロザリーの手が止まる。


何も言わないが、多分、怒ってるんだろう。

ちょっと、恐くて顔は見れない。




しまった。


自慢し過ぎた、かも?



野蛮な行為の、お叱りは後ほどたっぷり聞くから、止めないで‥‥



「‥‥でもね、この間まで私が居た屋敷の主人の攻撃は、全く避けられなかった‥‥殴られた後に、殴られたんだって分かるぐらい反応は遅いし。目とか、怪我しちゃったんだけど。あ、治ったから怪我は良いんだけどね」

「殴ら‥‥! 瞳の怪我はそれが原因か」

「治ったからいいの」



思った通りの反応に、中断されまいと言葉を続ける。




瞳の怪我にはやっぱり気づいていたらしい‥‥。


血液って、嫌だな。

あんなに綺麗な水で洗っても取れない。


ユーノの動物の鼻よりも、ロザリーの感知する力が強いって事は肝に命じよう。



へ?

何って、



気を付けるんだよ。



「でね、そいつが言ったの『大切な瞳を傷つけないで』って、傷つけたの自分なのにそんな事言うのよ。絶対頭おかしいんだよ」

「瞳‥‥」

「そう。瞳。

 あとね、力が使えないとか、見ていたのだなとか。

 私を姫と認識して、そう言ってたから、姫って何か特殊な力があったのかなって?」

「‥‥さあ、僕は詳しくは‥‥」


ロザリーは、自身を責めるような表情で床を向く。



これも思った通りの反応だ。

セイと同じで、親しく会話をしていないのであれば、多分分かるはずがない。



姫とロザリーの間柄を知ってる私からのこの質問は、意地悪かな。



「でも、待てよ。そういえば‥‥」




思い出したロザリーの記憶は、少し驚く内容だった。





「彼女は言ったんだ‥‥」








◇ ◇ ◇








漂う血の臭い。

それは傷つけられた鳥のものなのか、彼が最後の抵抗で暴れた人間のものなのか判らないが、ロザリンドの身体から自由を奪うには十分すぎた。

樹木の妖精の弱点は大事な時に枷になる。地面に伏せって、足に刺さったナイフを抜く力も出せない。


少年達は、突っ伏したロザリンドを取り囲み、見下ろした状態で頭を蹴る。


「なんだよこいつ。何しに来たんだ」

「あれにも飽きたし、こいつが身代わりでいいだろ。本人の希望だし」

「人はまずいんじゃないか?」

「死んじゃえば、誰がやったなんてわかんないさ」


踏みつけられた手を動かす事もできず。無慈悲な少年達の会話に、反応もできない。


ただ、黙って傷つけられるだけ。





ロザリンドはただ興味だけで、人間の集落に忍び込んでいた。


それは、妖精の中でも許される事ではない。

王たる彼がするべきでは決してない。


入り口は誰にでも解放されているのだから忍び込むというのは間違いなのだろう。

だが、妖精だと気づかれないように、可能な限り姿を変え、誰にも見つからないようにこそこそと隠れながら歩く。

その姿は、忍び込むと表現しておかしくはない。



姿を見られないように、注意をしていたのだが‥‥

少年たち3人が、鳥を甚振る姿に見ている事が出来なくて止めに入った。

だが、それも遅く‥‥楽しみを失い、邪魔された少年たちは、狂喜の牙をロザリンドの足へ突き刺した。


「抵抗のできない弱い獣を殺して何が楽しい‥‥?」


強者を倒して、その亡骸をさらすことで自らの力を誇示する獣もいるが、少年らのそれはロザリンドには全く意味が理解できない。

今、ロザリンドに与えている行為も同じく理解不能だ。


自由を奪われ地面に這い蹲る姿に満足に笑う。

泣いて懇願すれば彼らの欲望は満足しただろうに、ロザリンドはそれをしない。

姿とはあいまみえない言葉に、満足そうな笑顔は一瞬で砕けた。


「こいつ何か言ってるぜ」

「獣ってなんだよ、生意気だ」


そうして、彼らは抵抗出来ないロザリンドに振るう暴力をエスカレートさせる。





詩を使い、脱出を試みるべきか‥‥

いや、そんなことをすれば、妖精だと知られてしまう。


だが、使わねば最初に耳にしたとおり『殺される』かもしれない。





突き上げるように、みぞおちに入り込んだ、少年の足が、喉の奥から何かを送り出す。

口に溜まった体内の異物は、荒い呼吸をするために開いている隙間から垂れるように地面に落ちた。

このような行為が続けば、いずれ声さえも出せなくなる。



使うなら、言葉が吐き出せる今しかない――――



「de_‥‥」


「お前達? そこで何しているの」


ロザリンドの葛藤の結果、出された声を掻き消すように高い幼い声が聞こえた。


「やっべ。大人連れてきやがった」

「逃げろ」


声だけで想像するに‥‥少年達は言葉通り逃げ出したのだろう。

体に加わる暴力が無くなったことで、それは証明される。


「起こしてあげて」


少女の声に、うつ伏せだったロザリンドは少し乱暴に起き上がらされる。



そこには、人間の少女。


銀の細い髪を綺麗に結い上げて、整った洋服を身に纏う。

よく見れば、無地と思われる生地は、同色で細かな刺繍が施され、繊細な造りから少女の身分を高い者と表していた。

身分が高ければ、学を持っている。

ロザリンドの正体などすぐにわかってしまうだろう。



なんて運の無いことだと、ロザリンドは少女から目をそらす。



「大丈夫? 私の未来の旦那様」

「‥‥?」


少女はロザリンドの視線の先に回り込み瞳を覗き込んで、そう笑った。

表情に従い、目を被うまぶたの形が変わると水のような色が、不思議と輝く。


水晶のような青に、体だけではなく、心まで何かに拘束される気がして、さらに眼差しを反らしてしまう。



「あなたの側で、私はとても幸せそう。こんなところで傷つかないで、あなたに嫁ぐ日までにうんと綺麗になるから、待ってて」



明瞭な、ロザリンドの拒絶の態度に少女は気にすることもなく笑顔で続けた。


大切な何かを見やるように、ロザリンドに微笑む。だが、それは、目の前の自分を見ているのではなく、どこか遠くの景色を見ているような表情だ。



意識しなければ視線は合い、手を伸ばせば届くだろう‥‥こんなに近いのに、存在が遠くて、気味の悪い感覚が背中を真っ直ぐかけおりる。

そして、その言葉だ。





この人間の少女は何を言うのだろう。



嫁ぐ?



未来の旦那様とは、誰の話だ?





理解出来ない言葉の意味を問いたいが、上手く言葉に出来ない。





「姫。こいつ妖精みたいですよ」


悩むロザリンドの思考を遮る言葉。

小型のナイフが根元まで刺さった肉からは、赤い血は流れない。

それを引き抜いても変わる事はなく、代わりに透明な液体が流れ続けるのを確認し男は言った。



知られてはいけない事実を暴かれてしまい、慌てるが箇所を隠そうにも体は動かず、もう遅い。

この事実が他の人間や他の妖精に知られる前に、処分せねばと、先ほどの詩を頭にえがく。


「だから、綺麗なお顔立ちなのね。勝てるかしら?」

「はい?」


少女は『妖精』と言う言葉に怯えたり、嫌悪する様子はない。

呟かれた言葉に、付き添う男が驚いたようにたずねる。


「気にしないの。こっそり帰してしまえばあなたと私以外は、誰も知らないわ。あなたは秘密をお喋りするのかしら」

「いえ。私の話など誰も聞きません」

「よろしい」


抜いたナイフを男から預かると、少女はロザリンドと同じ部位をきりつける。

顔をしかめ、ナイフを男に渡して一言。


「ここであいつらにイタズラされたのは私。助けてくれたのはあなた。褒美は父に好きなだけどうぞ」

「御意」


深さは違うものの、傷害部位は同じ。



彼女はロザリンドの身代わりになったのだ。




男は頭を下げ、すぐに少女の手当てをはじめる。

出血部位を布であてがい、簡単に固定するだけなのだが、言葉どおりに簡単‥‥には通常終わらない。だが、彼は、慣れているようで手際よく事を終了した。










ロザリンドが馬で連れてこられたのは、集落から少し離れた所の森の側‥‥。


ここまで来ると、体の自由は戻りはじめていた。


完全に解放されていないのは、若干香る、血の臭いのせい。

それは、少女の足から‥‥。


「怪我をして、お一人で動くのが大変でしょうが、私達は森に近づけないから、ここでお許しくださいね」


馬上の少女は、男の膝の上から、ロザリンドに向かいそう言った。




ロザリンドにしても、人間と一緒に森に入るのは避けたい。


少女の謝罪は都合がよかった。




「どうして?」






何故、自分を助けてくれたのか。






何故、妖精であることを知って動じないのか。






何故‥‥






礼を言うよりも、疑問が口をついてでる。だが、具体的な疑問は多すぎて、頭の中ですら言葉に出来ず、相手には伝えられない。






「だって、未来の旦那様ですから」










――――何故、未来の旦那様などというのか。





少女の青い瞳は、心の中をのぞきこむように真っ直ぐにロザリンドを見ている。


騙してどうにかしようと、悪巧みが奥底に隠れているのだろうかと疑うが‥‥その眼差しからそれは皆無だと知る。


むしろ、自分の足を傷つけた行為は、ロザリンドがそこには居なかったと、匿うためだとわかっている。



「僕はどうすればいい」

「時が来れば自ずと」



だから、他意はないのだ。


純粋に、彼女の言葉を聞いたらいい。




少女は彼女が言う通り、未来の妻なのだろう。



妖精と人間の間で姻族関係など結べるハズがない。

幼い彼女の夢か、彼女の寿命が尽きて生まれ変わってから望む未来か‥‥



彼女の望みは、歪み合い、亀裂の音を立てているお互いの間柄がどうにか出来ないか、悩んでいたロザリンドの願望でもある。





時が来れば‥‥

少女の回答は、いつ叶うか分からない答え。




「でも、大きくなったら、あんな素敵な黒い髪にならなきゃならないのね。どうやったら変わるのかしら」

「黒髪‥‥?」

「その方法は探すとして‥‥私の名前はエストリアのカースティ。もう少し大きくなったら私はあなたの元に行くの。決して忘れないで」




そう別れを告げると、お互いは逆の方向へ進む。




少女は従者とともに、人間の町へ。

ロザリンドは、独り森の中へ。







■ ■ ■





「関係なかったかもしれないけど『黒い髪に変わらなきゃ』ってその時言ってた」

「黒髪って、私の事?」

「今思えばね。姫はここに来たときは初めて会った時と全く同じ色の髪をしてた。当たり前だけど、黒くはない」


小さい姫が、黒い髪に変わらなきゃって言う。

顔は姫で、髪は黒いってなら、それは私だと思うと‥‥


「単純に考えると、未来を視れちゃうんだ。すっごいね!!」


すごいって喜ぶ私を見上げ首を振るロザリー。


何?

何がだめなのよ。


「どうかわかんないよ。あの頃から奴隷召喚でニホンジンは居たんだから」

「妖精の側にいるなら黒髪じゃないとだめって話?」

「そう、人間達は思ってたかもって仮定」



そんなの、素敵じゃない。


やっと魔法っぽい話が出てきてテンションさんが、上がろうかとしてるのに。

王様はハエタタキで容赦なく床に押さえつける。

いきなり潰されるわけじゃなくて、地味に自由を奪われるのはもやもやするだけ。


核心的な結論は出せないけど、それを肯定は絶対しない。

ロザリーって穏やかだけど、頑固なんだよね。



まぁ。

そんな所はタイセイに影響は全くない。


ムカつくだけだ。



「あの男はティコが窓から突き落としたって言ったから、たぶんもういないと思う。でも‥‥もし、例えばよ、未来を見る力なんてのがあったのなら、人間はきっと必要としてくるわ」



ガチで、未来を視れるなら。一家に一台は欲しい。

悪い事は避けられるように、良いことは間違いなく選べるように。

側にいれば、依存して二度と手放さないだろう。



「また、あなたは人間の手に堕ちると?」

「かもしれない、だから自分で何とかできるようにもっと鍛えなきゃ」




まず、さらわれないのが第一です。

その為に、身を守る手段。


もし捕まっても、自力で逃げなきゃ、妖精達に迷惑をかけてしまう。

その為の力。




「恥ずかしいぐらい、私は弱いから」




ロザリーの側にいるために、怪我をしてはいけない。

強くなっても、これがクリア出来なきゃ意味がない。





自らを傷つけないで、どうやれば切り抜けられるか?






もう少し、鬼様と相談が必要かな。










さて、さてさて皆様。コンバンワでございます。


先週は休み前ってことで整え作業ができませんでしたぁぁっΣ( ̄ε ̄;|||・・・て言い訳をして今週続き上げてます。


いつも読んでくださりどうもです♪




今回は、やっと出てきたカースティお姫様(幼女)、対する王様は‥‥表現はしてませんが青年サイズです。


子供達にボコボコにされるお兄さん。そしてそれを助ける幼女。

絵的におかしいです。


心の眼で少年がいたぶられる姿に脳内変換してください。

あぁぁロザリー僕が代わりに殴られるよぅぅぅ L(゜ロ゜L ;)



ていうか‥‥自分が書く話って必ず幼女が出てくるなぁ。

もう片方の幼女話は‥‥、拍手の具合を確認して登場人物修正中です。

もし読んでくださってる方がおられるなら~、もう少しお待ちくださいw



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【××× A good child, so do not imitate ×××】
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