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君は何もシラナイ 7




沢山の犬‥‥じゃなかった。狼と伴にティコが助けに来てくれた。

ロザリーが心配してるって彼は言うけど‥‥私の気持ちがフラフラできる間は、きっとロザリーは捜してないと思う。だから、望まれていないのなら帰りたくないって思うんだけど‥‥


私が、ここに居るだけで、獣や人間に犠牲が出てしまうこの状況で帰りたくないなんてわがままは通用しない。



「ティコ~こっち」


ティコに抱えられて廊下を移動する私の耳に、聞き覚えがある声が聞こえた。


「ユーノ無事か」


黙って走っていたティコが安心した優しい声で相手に返す。


「出口は飛び降りなきゃだめだけど、一番人に出会わない」


ダクトらしき部分から知った顔が手を振っていた。

森で会ったもう一人の獣の妖精。怖がりのユーノだ。


「俺が先行するから、姫かして」


抱えられたまま私はティコからユーノに、ユーノはダクトの中に私を引き上げた。

両腕を持たれて、そのまま引き上げられる。

痛いのは一瞬で、ユーノに思ったよりも力があるのに、少し驚いた。

ティコも片手で抱えてたし、私‥‥結構重いと思うんだけど。


「おっけ〜姫。暴れたら底抜けちゃうから大人しくね。ティコ。狼に尻尾、襲わないよう言っておいてね」


ダクトの奥に私が入り込むと大人しくするように指示して、廊下のティコに向いて後半はお願いする。

ユーノのキャラメル色の尻尾は長くて、猫とかだったらじゃれつきたくなる形をしていた。

狼が、そんなの気にするとは思えないけど‥‥この襲うって言うのは『捕食』なのだろう。


「上がれるか?」


ティコの心配そうな声のすぐあとに一匹目の狼が上がってくる。


「後ろがつっかえちゃう。さあ。いくよ」


この世界のダクトはかなり広くて、私とユーノが交差出来る。

先にいる私の背中を押すように手を当てると彼は先導始めた。

すれ違う時に足に尻尾が触れてくすぐったい。こんなに長ければ、踏みつけないか気をつけながら進まないといけないなと、手元を見る。

音はしないけれど、少し弱めの床は前に進むため体重を乗せた手を出す度に少し沈む。

前を行くユーノに何もなくて私が穴を開けたら、彼より私のが重いって事になるんだろうね。

そういう意味でも‥‥気をつけなきゃ。


「ユーノは何でこんなところにいるの」

「ゴアイサツだね。俺とティコは一心同体~。ティコが困ってそうなら俺は頑張るの」

「ティコがいるから‥‥」


私がここに居るから、彼もここにいるって‥‥さっきの話と同じような回答が帰ってくるかと思ったら、気楽な口調で当たり前だと言う。

思ってた『私』という言葉がでなくて、残念な気持ちが心を占める。

言われれば傷つくくせに、彼が私を気にしてないのが少し気に障った。

責められるのは嫌なのに気にされないのも嫌なのだ。


なんてわがままなんだろう。


「姫がいるからティコが居て。ティコが居るから俺が居る。簡単な話でしょ。あ~なら、姫が居るから俺が居るって話にまとめちゃおうか、それなら満足して、俺らを殺さないよね」

「また、それ言う!」

「だって、期待してた。でしょ」


軽くユーノは笑うと先を急いだ。

私の為にここにいるっていって欲しいって期待してた。

それは、その通りで‥‥。

そんな顔してたかな。

全く違う意味で、期待していたって言ったんだと思いたい。



不安定なダクトの出口がやっと見える。

屋敷の人間には会わず、穴も開けないで無事に敷地外に出られた。


「受け止めてあげようか」


先に下りたユーノがにっこり笑ってそう言った。


「怪我するわよ」


高さはそんなに高くない。

地面に着地するときに、足を痛めちゃうかなぁって高さだ。

本当はユーノの言うとおり受け止めてもらった方が、足には良いのかもしれない。

でも、獣の妖精とはいえ、男の子に受け止めてもらうなんてなんだか嫌だ。

かっこよく、ユーノに飛び蹴りを食らわさない位置に着地出来れば良いけれど。私の通常の運動神経と相談して壁伝いに降りる。


「姫とティコってこっそり似てる」

「そうなの?」

「うん。こっそりね」


私の後に、狼達が続いて降りてくる。

少し離れた先でそれを見守ってたユーノに追い付くと、彼はまた笑顔のまま続けた。


ここで出会ったユーノはずっと笑顔‥‥何故笑っていられるのだろう。

きっとあのダクトに気が付くまでに色んな状況を確認したハズだ。


私より、見ているハズだ。


「‥‥ねぇ」

「ねぇ姫。王にもう会いたくない?」


問いかけようとした時に、先に質問をされてしまった。


「会いたくないなんて‥‥思った事ないよ。ただ、帰れないなぁって」


思うんだけど‥‥そんなわがままは許されないって分かってる。


「帰りたくないなら俺が匿ってあげる」

「え?」


ユーノはティコとは全然違う結論を提示してきた。


「こんな怖いところに置き去りにはできないだろ。かといって、姫が望まない事を強制出来ない。もちろん王にもティコにも内緒。どう?」

「‥‥」


どうって‥‥本来は断るべきだ。

ユーノに匿ってもらって一体どうしろと言うのだろう。


でも、YESもNOも答えられない。

否定できないのは、唐突でびっくりしてるからだろうか。


「王からね、俺は伝言を預かってるんだ‥‥でも、帰らないなら伝えるつもりはないんだよね」

「なんで? それ伝言なんでしょ」

「だって要らないじゃないか」

「要るよ。伝言だよね」

「帰らないなら、聞いても無駄な伝言」

「王の言葉に無駄な事なんて何もないよ」

「じゃあ帰れないなんて言わない?」

「‥‥内容次第」


その答えは保留。帰れないのは事実だし。帰らないつもりも、もう無い。

でも、伝言内容で本当に帰れなくなったら‥‥って思うと安易に承諾できない。


「でも、何でユーノが王の伝言を預かってるの?」


実働部隊はティコ達だ。

伝言を預けるなら一番最初に会える彼等に預けるだろう。

ティコの後を追いかけてきた様なユーノにお願いするだろうか?

私にたどり着くとは保障できない、それはティコだって同じだけど。私が頼むなら、可能性が変わらないのであれば先にたどり着く方だと思う。


「ん〜。俺は王と仲良しなんだ」


ロザリーと仲良し。


ユーノはそう言った。

確かにロザリーは誰にでも厳しくて優しいけど。仲良しって言える存在を目視した事はない。

あえて言うなら‥‥シンジュかな。扱いはぞんざいだけど、ロザリーも味方だって言ってたし。

獣の妖精はレタルしか知らない、彼だって私の本当の事知らないんだから味方じゃないんだろう。

ユーノだって私の事を『姫』って言ってるのだから、真実は知らない。


味方じゃない、かもしれない。

嘘を抱えている私は、ユーノの絶えない笑顔に警戒すべきだと気づく。


「王ってどっち」


王はロザリーとお母様しか知らない。他に居るのかもしれないけど、それならば質問が返ってくるだろう。

人間から姫を取り返すのは、王ならどちらが依頼したとしてもおかしくはない。

だけど、連れ戻されるのがロザリーの元じゃないなら。帰ってもいいんだろうか。

帰るべきじゃない。

いや、帰りたくない。


「ユーノは誰に言われて来たの」

「俺が王って認めるのは一人だけ、赤の王だよ」

「赤の王?」


赤の王ってのが誰なのかさっぱり分からなくて、問いかける。


「そう。ロザリンド様。全体的に赤いだろ。もう片方は黄色っぽいから金の王って‥‥」


確かにいわれれば、ロザリーは白髪だけど光に透かすと少し赤の色素が見える。

瞳の色は淡い赤。初めて見たときに禍々しい色に少し驚いたけど、色なんかより話す内容のが驚きで気がついたら慣れていた。

そういえばお母様は、金髪で黄色の瞳だったような‥‥。


でも、赤と言うよりか‥‥


「赤って言うかピンクだと思う」

「あはは。赤も淡いからね。でも本人に色の事を言うと怒るんだ。花の色なんだから気にしても仕方ないのにね」

「そういえば、ロザリーの花はピンク色。あっ薄い赤色だった。そうなんだ」


彼らの色を知って納得する私を見てユーノは柔らかく微笑む。

笑顔には違いないんだけど、雰囲気が変わったので聞いてみた。


「‥‥何?」

「‥‥王を嫌ってはいないみたいだね」

「嫌いになんかならないよ」


今まで親切にしてくれた相手。私が嫌われるならともかく、私が嫌いになんかなるはずがない。


「ホントは、伝言ってのは嘘で。こっそり頼まれたんだ」


そこでユーノは言葉を区切る。


何を?

何をして欲しいって頼まれたの?


言いたい言葉は声にはできず‥‥私は相手からみたら黙ったまま。

続けられる言葉に頭の中が少し臆病になって、怖くて聞けない。


ロザリーはユーノに何かを判断しろって依頼した。


私が必要かどうか?

要らないから処分しろって、判断をユーノに任せて。

だからロザリーから私を匿ってくれるなんて言う?



「姫が王を嫌ってないか確認してきてって、嫌がってたら連れ戻さなくていいって」


「嫌いになんかならない‥‥」




むしろ逆だった。


やっぱり、彼は親切で‥‥

私がただバカなのだ。


帰らなきゃならない強制的な義務感がないからって、助けに来てくれた彼らを拒んだ。

気にかけてくれてる、彼を信じられなかった。



「なんか、姫を怒らせるような事したみたいで、反省してる。王は待ってるよ。帰ろう」


反省させることなど何もしてないのに、無駄に要らない事で心を惑わせて、

そして犠牲を出してしまった。


「‥‥ごめんなさい」


ユーノの伝えてくれたロザリーの言葉に、涙がこぼれだす。

ただその時は、彼が私を思って悩んでたのか嬉しくて。彼に謝る。


でもホントは‥‥

ロザリーやユーノだけじゃなくて、全ての人に謝る必要があるのだ。

自分のバカさ加減にその時はまだ、気付けなかった。






沢山の狼がダクトの出口付近の地面を占める。

この屋敷にこんなに狼が来ていたんだと驚いた。

30ぐらいの狼達が地面に並んでしまうと、最後のティコは降りるスペースは殆ど確保されていない。


「ティコ~。受け止めてあげようか」

「踏みつけるぞ」


私が言われたと同じようにユーノは、降りるティコにもそう言った。

彼は間髪入れず、冷たい声で言い放つ。


「ね。姫はティコにこっそり反応が似てるでしょ」

「似てるかなぁ」

「きっと考え方が似てるんだよ。ティコは誰に言われた訳じゃなく。自分が姫にお世話になったからって、勝手にここにたどり着いたんだよ。木登ってティコを助けてくれたみたいに、誰に何を言われなくても親切にできるんだ」


誰にでも、親切に出来る?


私が?



「さぁ。森に帰りますよ」


ティコが無事に地面に着地すると、ユーノが笑顔で言う。

仰々しい挨拶をして、差し出される手に、もう戸惑いはなかった。

ユーノは買いかぶりだけど、悪い感情や打算な考えなど感じられない。


赤い王様の所に連れていってくれる。

その手に従えば、帰れるのだ。







▽ ▽ ▽






赤い色で汚した服を気にせず。走る人。主人がいなくなった屋敷から、逃げ出す。

肩口には、小さな光る虫が取りついている事すら気づかずに、彼らはただ外に這い出る。


屋敷の中は地獄だ。

異国の主人が、あれを閉じ込めるために買った屋敷。

あれがここにあることを気づかれてはならないと、極少人数だけ雇われた。こんな屋敷内で何かあったとしても誰も助けに来ない。

あれは、この国の人間に見つかってはいけない代物だ。

辞めるときは、死ぬときだと血判を押さされ、一生働かなければならない恐怖に毎日を過ごしていた。

地獄の様な監獄に、誤った選択をした自分を責めながら日々絶望しか存在しない。


それが今日、本当の地獄になった。

妖精が見逃してくれたのは幸運としか考えられない、咎める主人が居ない今。

逃げ出せるのは今だと、命を保持できた数名は屋敷から逃げ出した。



「セイ君あれ」

「了解した」


高い木の上に座り込むシンジュが指差した先に小さな少年が歩いている。

地面に立っていた清は相手に気付かれないように近づくと、その命を切り裂いた。

少年の首筋からは、小さな光る虫が飛び立ち、シンジュの元へとたどり着く。


「後は四人か‥‥狼達も徹底的にやればいいのに。ごめんね、セイ君の手を煩わせて」


シンジュは、木に網を張っていた蜘蛛にターゲットの人数を確認すると、下の清に呟いた。


「仕事だ」


声は遠くて聞こえない距離であるが、二人は会話を成り立たせる。


これはシンジュが望む事。

返す言葉は清の意思‥‥。



清は刀をふり、血を払った。





▽ ▽ ▽






 どうもこんにちは。作者です。三連休です。


 っでも‥‥、仕事は休みじゃないんで、何も変わらない日常です。

 まぁ、大雨なんだから、どこにもいけないよね☆

 

 ということで、「君は何も知らない」です。



 ふぅ。やっとこの子帰る気になったよぅ。

 ぽっと出のユーノがイイトコ取りです。ありがとうユーノ。君は有能だw

 


 もぅ何かですね。他のなろうの主人公てば良い子が多いのに。うちの楓さんは、嫌な感じの女の子になってしまってます。

 正義の味方だとか、独占欲とか、主人公に‥‥向いてないよねぇ。





 でも、ちょっと嫌いだからって、DVをした訳じゃないですよ(;゜∀゜)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \(壊)

 

 

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【××× A good child, so do not imitate ×××】
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