追いかける幻影 9
その件についてセイに言われたのは、稽古も終わり‥‥上がった体温を押さえているときだった。
体温安定。
そのために、ただ、ぼんやりと時間が過ぎるのを待っている私ではなくて、
毎回頑張って会話を試みている。
誰とって?
仏頂面の軍人さんとですよ。
会話ってこんなに努力しなきゃ成り立たなかったっけ?と疑問が首を絞めてはいたが‥‥
セイ対策は万全。
豪速球が投げ尽くせないような量をストックしていけばいい。
もちろんお姉さんスイッチは気をつけて。
そんな中。赤い椰子の実の話題を振りかけて、
味が不味いだの、色がグロイだの愚痴を一方的に話してたら‥‥
「あんたが食べても意味が無いんじゃないだろうか」
と考え込むように言われた。
「そりゃ契約で治らないようなビリビリ。あんな実だけじゃ、気休めだってわかってるけどさぁ」
「いや。食べるという補助食品の考え方は間違ってはいない。問題はあんただ」
問題は私だ。
澄ました顔で、なんて言われたら‥‥少し嫌になる。
少し?
いや、か・な・り。だよね。
イラっときた口調で「と、いいますと?」と返した。
「契約で俺たちは主から栄養分を供給されている。なら摂取すべきは主だろう」
「私ではなくて王?」
言われれば、そんな気がする----------------
「‥‥って思うのよ」
赤い食事の時間。
仲良く二人掛けのソファーに並んで座って話をはじめる。
ロザリーは割った椰子の実を両手で大事そうに持ち膝の上で安定させている。そこには赤黒い中身がいやーなオーラを出していて、本当の臭いは無臭なのに、こう醜悪な異臭が漂いそうなそんな感じがした。
ロザリーの左手、二本の指で挟まれたスプーンが刺さったナイフのように見えて‥‥食欲を減退させる。
味覚は味を知り拒絶している。視覚も同じように拒否しているのだ。
さて、そんな辛い時間を回避できるように。
私はロザリーにセイの見解を、持論のように語ってみた。
持論‥‥ってなぁに?とは聞かないで‥‥
「確かに、そうなのかも知れない」
ロザリーは悩みながらそう言う。
「ただ‥‥それは考え方なだけで、効果がないかも知れない。なぜかと言うと、僕らは摂食行為は糧として必ず必要としていないからだ」
何だか難しそうな言葉で効果への不安を説明するが、私的には、私が赤い椰子の実を食べなくて良くなるんだったら何でもいいの。効果なんて、どうでもいい。
でも、それはロザリーが納得してくれなきゃ意味がない。
「私が食べても変わらないんだから、試したらダメかな」
だからロザリーに食べてもらって、今日は私は無し。
なんていい案。
冷静なセイってば、なんて素敵な疑問を持つのだろう。
頑張って食べさせなければ。
「効果が無いものを試験的に行うのはどうかな」
「私が食べても効果が無いなら貴重な資源が無駄なのよ」
どっちが有効無効なのか、正解は解らなくて、ふわふわ悩むロザリーにビシッと言ってみた。
私が食べるのが有効じゃないと信じて。
「あなたが食事をすることは無駄ではないよ、ちゃんと体内に蓄積するはず。それは正常な行為だろ?」
栄養が要らないのに、余計に食事をするっていうのは‥‥
俗に言うカロリーオーバーってヤツではないのでしょうか。
そういえば最近‥‥、胸の下ラインが苦しいような、キガスル。
太ってしまったのでしょうか?
「食べないなら、食べさせて上げるよ」
食べないなら、強行手段である。
ロザリーからスプーンを無理やり奪い取った。
当然、彼は抵抗するが、実を持っている両手を離すわけにはいかず、比較的容易に確保はできた。
でもね。私の行為が、あまりにも強引で私達はバランスを崩してしまう。
ソファーから落ちてしまったロザリーをさらに押し倒すようにして馬乗りになった。
隊長。スプーンと実験体の確保、成功です。
ロザリーは両手で実を持ったまま‥‥中身か溢れないように注意していたのか、自分の背中を地面に打ち付けても中身は無事だった。
ごめんなさいとは思うけど、口に出したら行動が遮られてしまう。
上手い具合にロザリーが支える実からスプーンで掬う。
「はい。ロザリー口開けて?」
上から、見下ろす形でスプーンを差し出すと、相手に向けてにっこり笑う。
ロザリーが私に与えた時と同じ感じ。
仕返しではないんですけど、仕返しに見えるよね。
「‥‥」
ただ、素直に彼は口を開いてくれない。
「こんな体制、恥ずかしいよね」
「まず、一口食べてくれたら」
嫌そうに笑うロザリーの口が開いた事で、スプーンを無理やり押し込んだ。
「横暴‥‥」
口元から赤い汁を垂らしてロザリーは咳き込む。
落ち着いた後に呟いた言葉はそれだった。
やっぱり寝転んだままの経口は無理だったか。
なんか変なところに入り込んだようで、すぐに彼はむせてしまった。
とりあえず反省して、上半身だけ起き上がらせた。
「ほら、次」
呼吸が安定して、悪態がでる前に、作業を進める。
嫌そうな顔をしたけれど、ロザリーは素直に出されたスプーンを口に含んでくれる。
不味いとか、そんな感想はないけれど、食べることはあまり楽しそうでない。
きっと、ロザリーも分かってくれただろう。
この実の不味さに!!
あらかた供給したところで、ロザリーは咀嚼しながら会話をはじめた。
「でも、よく考えたね。そこまで頭は回らないよ」
私の手を止めるための行動なのか知らないけれど、このひと掬いが最後だ。
次の一口を口に口に含ませると、正直に話そうと思う。
うそはダメだものね‥‥。
「いや。ホントはね私じゃなくて‥‥セイの疑問からはじまったの。ホントはあんまり食べたくなくて、乗っかったって言うか、なんていうか‥‥」
その言葉に、ロザリーの咀嚼する唇が止まる。
「やはり、あなたも食べるべきだ」
「いや、残念ながら空になっちゃったし」
嘘ではない。
椰子の実は空というか、食べられそうな部分はすべてロザリーに与えた。
食べたくないもん、間を置かずに綺麗に素早く片付けた。
「実なら‥‥まだある」
ロザリーは私をソファー押しつけるように体重をかけると、その唇を私のと重ねた。
びっくりして閉じかけた口を角度を変えて、閉じる行為を遮る。
あのまっずい味が、液体と少量の固形物とともに舌を伝う。
柔らかいもので押し込まれたそれらが喉の奥に到達すると、無意識に飲み込んでしまった。
ロザリー以外に恋をするな‥‥
ってシンジュの言葉が頭を駆けめぐる。
いや、そんなのじゃなくてなくて。
今、何したこの子?
頭が真っ白になって------よく考えられない。
「ごめん。汚したね」
口からほんの少し、糸を引いて垂れるように服についた赤い色を気にするように押さえる。
そんな下らないことに気を使って、
今の行為は、無視ッスか!
服なんかより‥‥
私は離された唇を押えて、とりあえずロザリーを見た。
このマセガキは何事も無かったかのように立ちあがると、空の実とスプーンを回収するとさっさと部屋から出て行った。
ソファーにもたれたまま、呆然とする私を独り残して扉は閉まる‥‥。
今夜も読んでくださりどうもです〜(._.)_
筋肉痛の作者デス。
何故か自宅で宴会をしたら、一週間ほど筋肉痛です。
原因は虫歯だって歯医者さんが言ってたんですが、ホントなら、虫歯‥‥とんでもないやつです。(歯医者を信用してないらしいw)
はい。
なんとかウィークも終わり。寒い日が続いてますが、いかがお過ごしでしょうか?
今回は――――――
やってしまいました。エロクないちゅーを‥‥。
楓さんには、ろまんてぃっくなキスシーンをあげたかったのですが〜。
きっと、王様はB型です。
回収は次話にできるかな?
ごめんなさい楓さん、そして皆様。作者は甘々トキメキ恋愛ものは書けないようです。
ご批判は甘んじて受けます(´□`。)°゜。




