追いかける幻影 8
▽ ▽ ▽
最近、あの子は清と木材を殴り付けあってる。
それは清が二本、シンジュに作ってくれとお願いしてきた剣の形をした木片。
清はあの子とこれをしたいがために自分に依頼してきたのだと知ってシンジュはとてもショックだった。
ロザリンドに探りを入れた所、あの子は主にそれを言ってない‥‥
清もそうで、二人だけの秘密。
主にすべからく報告をしろだなんてシンジュもロザリンドも指示してないのだから故意的ではないだろう。
だが、二人だけが知っていて、シンジュが知らない事が距離を感じてしまう。
あの子への危機感が高まってしまう。
「ロザリンドを揺さぶるかなぁ」
汗だくで、泥だらけで、きっと怪我もしてるはず。奴隷契約してるから軽傷はわからないのだろうが、とても野蛮な行為に楽しそうに二人は口角を上げる。
笑みが漏れ出すほど楽しいのだろうか?真似したくない行為を冷めた目で追いかける。
清の表情はあの子の目に小さく写る姿。
そこにはやはり見たことない彼が居た。
「アジュガ。君に会うのにあの子は必要かな」
セイの瞳から意識を遠ざけて、シンジュは記憶の中の遠い知り合いに問いかけた。
▽ ▽ ▽
■ ■ ■
「ロザリンド~♪ほらみて~」
「何だ今日は」
「この服。この服。蚕さんに作らせたの。似合うぅ?」
「あぁ。虫の服はよく似合うな」
「そう言うと思って、ロザリンドにもお揃い」
花とともにハートマークが散りばめられた空気を巻き散らかせてシンジュはロザリーの周りをくるくる回る。
自慢げに見せびらかす布には見向きもしないでロザリーは冷たい口調でシンジュを追い払うが、そんな言葉で萎える彼ではない。
草のイケメンな彼も遠巻きに睨み付けてるし、
レタルも呆れたような視線をたまぁ~にシンジュにぶつけてる。
お仕事はいいのかしら‥‥。
あ、ほら。シンジュが振りきられた。
とぼとぼと切ない表情でこちらに向かってくるシンジュ。
「お姫様は邪険にされなくて幸せだよね~」
がんばって作ったのにぃと布をかみ締めて、悔しさを表現する。何だか昔のアニメみたいな仕草がとても滑稽だ。
きっとわざとやってるのだろうけど、ね。
だって、大事な布なのに、そんな汚し方無いんじゃない。
「邪険にされてる自覚あったんだ‥‥」
「何? 僕はお姫様との僕のロザリンドをかけた勝負はまだ負けてないよぅ」
冗談めいた言葉に挑戦的な瞳。
片方の口角があがってる辺りから、からかってるとしか思えなくて。
嫌がってるロザリーを見て楽しんでるのは、悪趣味だよね。
うん。悪趣味だ。
「本当に大好きなのね」
皮肉をつぶやき、やれやれと空気を吐き出すと背を向ける。
ロザリーが嫌がってるんだからいい加減やめれば良いのに。
なんて思うのは私の良心かしら?
まぁ、ただうっとおしいだけなんだけれども。
「‥‥‥‥あぁ‥‥大好きだよ」
いつもの軽い口調じゃなくて低い小さな声で彼はいう。
「セイ君もロザリンドも大好きだ。二人のどちらも欠けるなんて考えられない」
びっくりして振り返ると、シンジュは真剣な眼差しでこちらを見ていた。
「だから、君が憎いよ‥‥
あぁ間違えた。
憎いのは君とそっくりなお姫様。純粋なロザリンドの心を掻き乱した。君も違う意味で掻き乱してるけどね。だから、君がロザリンド以外に恋をするなんて許さない。それがセイ君なんだったらうっかり殺してしまうかも」
――――殺してしまうかも――――
いつもと違う表情と、いつもと違う声。
怖い脅しに胸がきゅとする。
蛇が鼠を襲うように、蜘蛛が蝶を捕食するように、
その直前の捕食されるものの怖さだ。
体が、心が、瞳が脳からの制御を切断されたかのように動かない。
ロザリーの心を掻き乱してるとか、
セイに恋をするとか、
ツッコミたい事はいっぱいだけど、何か言い返そうとしても乾いた喉に言葉が絡まって何も言えない。
言葉にしなきゃ、怖くて凍りつきそうなのに。
「‥‥だから僕も好きになっちゃぁ。ダメだよ」
私の怯えた表情がお気に召したのか、シンジュはにっこり笑って茶化すように言った。
「ならないけど‥‥ね」
そのまま黙って肯定するのは面白くなくて、きっちり拒絶を伝える。
面白くないっていうか、やっと言葉が絞り出せた。
まるで魔法が解けみたい。
「え~。ツマンナイ。ここはなるかも的な返事でしょう。なったらなったで~、ロザリンドと三人で楽しもうかと思ってたのに」
完全に戻った、いつもと同じ軽い口調。
さっきの冷たい声が気のせいだと、忘れたくなる。
でも、シンジュはこのトリックスターの仮面の下に、二人を大好きって気持ちを隠して笑ってる。
脅しでも、それは私に打ち明けてくれた秘密。
忘れちゃいけない。
シンジュを好きになっちゃダメ。
セイに恋しちゃダメ。
ロザリーに‥‥
恋をしなさい?
何でだろう、ロザリーが好きなら逆じゃないの?
「貴様‥‥」
シンジュに真意を問うために視線を向けたと同時に、ロザリーの声だけが周りに響き渡る。
怒りを含んだ言葉は、きっと目の前の彼をさしているのだろう。
低い小さい声なのに、どこからも聞こえてくるような体にビリビリ響く怒り。
漂ういい匂い。
ロザリーってば、本当に最近ご機嫌斜め。
原因は私の手だけど、シンジュに対しては、いつも以上に怒ってる。
「あらん。ロザリンド居たの~」
「彼女に近づくな、汚れる!!」
何、何が汚れるの?
――――あ、
ロザリンドと三人で楽しもう的な発言がそれ?
無意識に両手をクロスして自分の肩を抑える。身を守る体制を取る。
そんな意味じゃないかも知れないのに、私の想像が恥ずかしい勘違いかも知れないけど、
さらっと言ったシンジュの側に居たら貞操の危機だって。事でしょ?
「臭いがとんでもないよぅ。お姫様がしんぢゃうんじゃない」
「!」
シンジュの言葉に慌てて思いっきり離れていくロザリー。
危機を救いに来た赤みがかった白銀の王子様は、自ら吹き出す毒ガスを指摘されると、
退却してしまった。
あぁぁロザリー。臭いなんか私、気にしないよぅ。
シンジュはくすりと笑うと私の耳元で
「今の話は秘密ね」
と囁いた。
視線をロザリーに取られていた私は、息がかかるぐらいの近くの声にびっくりして熱くなる。
この火照りはきっと顔が真っ赤になってる的な‥‥
不意討ち卑怯だよぅ。
無意識に照れるじゃないかぁ。
途端に地面が割れ、根っこがシンジュを突き上げた。
「いやーん。ロザリンド怒らないで~」
楽しそうな声でシンジュは叫ぶと、逃げていった。
今日、あの人の本心をはじめて見た気がする。
あんな事を誰にも言わずに、背中に持ってたんだね。
秘密なんだったら、忘れちゃダメかなぁ。
――――――――かなり重いの。
初めてっていえば、
ロザリーの技もだけど‥‥ね。
遠距離攻撃、すっごいスキルだ。
今夜も読んでくださり感謝です。
お休みの最中、新しくお気に入り登録ありがとうございます♪
頭が湧いた作者デス。
近況としてして、
昨日は自室にキイロなんとか蜂の女王蜂が巣作りしてたり、黄金色の長細い虫が入り込んだり、育成豊かなゴールデンウィークを満喫しています。
(マイハウスなんか来るからカワイソウニ、ご主人様が大虐●をされていましたが)
今日は嵐の中、ご主人様の傘が壊れたんだぜェ。(塗れて壊れた傘をぶら下げながら帰ってくる姿。ある意味ワイルドでした)
いゃぁ。嵐なんだから、家の中で大人しくしてろ。バカなのかって話なのですが、怖くてそんな事は言えません☆
はい。ミナサマいかがお過ごしでしょうか♪
今回はシンジュ→楓さんな内容になっていますが、前回はロザリンドVSお母様!!
ロザリーに言わせたかったんです。ジャイアニズム「俺のモノ!!!!」
それからしばらく満足して話が進みませんでしたorz
女の子なら、一度は言われてみたいデスよね。
(※イケメンに限る)




