臆病な僕は 8
部屋から送り出してもらったのはいいけど、
どんな顔してセイに会おう‥‥。
そんな不安な気持ちを抱えたまま、私はセイを探す。
宣言したとおり、他の妖精がいたら、できるだけ隠れて‥‥。
柱や、草の影から見たけど、本当にイケメンしか出会わない。
体格や体長はイロイロだけど、私が見て美人・美形って顔に分類される方ばかり。
ある意味パラダイスだよねこの魔法。
無視や敵視されるのが、パラダイスかどうかはこの際無視してね。
長い間セイを探し回ったけど、なかなか見つからない。
水分も取らず走り回ったせいで、喉が張り付いて息を吐くたび少し痛い。
体育会系の私は、すこーし走っただけで息なんか上がらないのに、息切れし始めてるのは、かなーり走ったって事。
最初の不安なドキドキなんて、とうに消えうせた時に、あの黒い頭が見つかった。
「セイ!!」
やっとセイを見つけたと思ったら、大声で名前を呼ぶ。
ビクッと肩を一瞬震わせセイは振り向いた。
歩みを止めた彼の傍までたどり着くと息を整えようと唾液を飲みこんだ。
「汗だくだな‥‥」
私の姿を見て、一言そうつぶやく。
セイを探してイロイロ走り回ったんだから、汗も垂れるし、息も切れるわよ。
「はぁ‥‥あ、せも‥‥ゴホ」
心の中で思ってみたものの、やっぱり声に出す事ができなくて、息切れの中咳き込んだ。
ま、まずは呼吸を整えようか。
じゃなきゃ何のために彼に会いに来たのかわかりゃしない。
「いったぁぁ」
うおぉぉぅやっちまったぁぁぁぁ。
息切れして呼吸を安定させるために、何で胸って触るんだろう。
激痛の中、ゆっくり手を離す。
唯一、俺様ぐっじょぶなのは「いてぇぇ!!」なーんておっさんみたいな声を上げなかった事。
まあ、声が途切れつつ悲鳴も、可愛いものではないですけどね。
「どうした?」
「あーなんでもない。大丈夫。うっかり印触っちゃっただけだから」
「印?」
セイは目の前で胸を押さえて痛がる私を見て、心配してくれる。
いや、やっぱりこの人、ちょっぴり優しいよぅ。さすが日本人だ。
そう思っていたら、突然両肩を押さえつけられた。
ありえない力で‥‥、痛い。
胸も痛いが、肩も相当痛い。
なんつう力だ、優しくないよ、前言撤回だよ。
離してください、お兄様。
「もしかして、王と契約したのか」
すっごい怖い顔でそう問われる。
契約って『奴隷契約』のことだよね、
なんで、知って‥‥?
「セイもなの?」
印なんて言ってしまった私も悪いが、それだけで契約だって分かるのは、当事者だという事。
だから、問いに問うてみた。
私の問いに、セイの手に込められていた力が緩む。
その表情は、怖い顔から悲しい表情へ変わっていた。
ロザリーもそうだけど、何で悲しい顔になるの?
そんなとんでもない事なの?
奴隷契約って‥‥。
「王は私のために契約してくれたの。あなたも理由があって契約したんでしょ。
でも契約って凄いよね。ご飯いらないし、怪我も速く治るし‥‥」
「その代償がその傷だ」
怒気のこもった口調で胸を押さえて、セイは言う。
「体にあんな傷をつけられて、あんたはよく笑ってられるな」
怒ってるのは、そんな理由なのか‥‥ぁぁと、そうか。
居合いをはじめるまえにおばあちゃんとかに反対されたっけ、体に傷ついたら駄目だから、そんな事はするなって。
「だって服着てたら見えないから大丈夫。それにタトゥだとおもったらオシャレだし‥‥」
その前に痛みが取れるのか不安な今日この頃だけど。
タトゥは確か、いつまでも痛いよって軽音部の友達が言ってたなぁ。
「おしゃれ?‥‥まぁそうだな、そんなふうに思うしかないのかもな」
オシャレと言う言葉に、残念そうにトーンを落とす。
「あんたと同じように、俺も契約をしている」
そう言うと上着とその下に着ているシャツのボタンを開放し、胸元をはだけさせた。
セイの胸元には卵ぐらいの大きさの痣があった。
「そんな傷で怒ってたの?」
正直、ほんとにオシャレな範囲だ。
私はそんな小さな痣であそこまでぶちぶち言うセイに、見せ付けようとボタンを外した。
「な、何をしてる‥‥」
突然服を脱ごうとする私に焦って彼は止めようとするが、ロザリーの時に確認した。
見られて恥ずかしいとこまで脱がなくても問題ないため、その手を止める気はない。
そして、私の痣を見せ付けると、彼は言葉を無くした。
キャミソールの間から見える範囲でも私の痣の大きさは確認ができただろう。
肩・鎖骨・そして胸、痛々しい模様が蚯蚓腫れとなっている。
自分自身だが見てるだけで痛い。
「私の印はこれなのよ。あなたの大きさなんて小さいんだから」
くよくよするなと偉そうにそういうと、突然セイが抱きしめてきた。
「な‥‥何」
「可哀想に‥‥」
驚いて固まっていると切ない声でそう呟かれた。
カワイソウ?
なんで可哀想なんだ?
っていうか、何故。私は彼に抱きしめられてる!!?
一瞬思考が止まったけど、自分の置かれている状況を冷静に見つめ、とても恥ずかしいと気がついた私は「ええ」や「あああ」など擬音を口に出し動揺を相手に知らしめようとした。
だが、
「いあ゛ぁぁぁぁぁぃ!!!!」
セイの拘束から離れようともがくと、むき出しの傷口が彼の衣服に摩れ。
とんでもなく激痛が襲いかかる。
なに発情してるんだ、この男は。
っていうか、痛い、痛い。痛すぎる!!!!!!
おもいっきり体を押すと、傷口に触れないように空間を作った。
「わ、悪い」
慌ててセイは離れて謝る。
「見てて分かるでしょ。この傷痛いのよ。ぎゅーしたら触れて痛いじゃない」
怒りのあまり、セイを怒鳴りつける。
男の人ってなんで無神経なんだろう。
ちょっと想像したら分かるじゃない。
‥‥あれ?
私、セイに謝るために来たのに、なんで謝られるような状況になってるんだろう。
「なんか知らないけど。ごめんなさい。それと、刀見つけてくれてありがとうございました」
お互いに第一ボタンまできっちり閉め、私はもともとの目的だった謝罪を相手にする。
「礼は、先に聞いた、あと、なぜ謝る‥‥必要がある?」
少しギコチナイ感じでセイは言うが、私も謝る理由がないっちゃあ無い。
「なんとなく‥‥。だってロ‥‥王とシンジュと一緒にいたときに怒ってたし」
「別に怒ってなどいない」
「ならいいのよ。なんか嫌な事あったのかなって心配だったの」
「心配か‥‥」
瞳を細めて遠くを見て呟く。なんとなくお前にされる心配などないって言われたみたいで、すこーしムカついた。
「何?心配しちゃ駄目なの?」
「いや。あんたは、誰かに似てるなって思って」
「お姫様でしょ」
「生憎、その姫とやらと話したことは無いからな。顔だけでは似てると判断しない。雰囲気が姉に似てるんだ」
「お姉さん?」
「帝国軍に入るって言った時に同じような顔して怒ってた。なんとなく懐かしい」
バカにしてたんじゃなくて、故郷を思い出してたんだね。
そう思うと、優しい表情に見えてくる。
ロザリーと一緒の時はすっごい不機嫌そうだったのに、
今はこんな穏やかな顔で、お姉さんの話をしてくれる。
まだまだ、この人はよく分からない。
当然組手をしろとか言うし、
突然抱きしめたりするし、
あぁぁぁぁ、思い出したら顔が赤くなってきた。
でも、きっと私は、一番この人が身近だと思うのだろう。
ロザリーには相談できない事、きっと言えるのはこの人だけ。
私がこれから悩む事は、きっと先に彼は経験しているはずだ。
だから、セイの苦しみも分かろうと思う。
今は、まだ話してくれなくても‥‥。
どうもオハヨウゴザイマス。ことわりデス。
いつも読んでくださってる方、お気に入り登録してくださった方、感想くださった方、ありがとうございます~。
昨日に引き続き更新しましたが、内容が‥‥
とりあえず楓さんは中身がおっさんなので、露出狂としても、
清君の名誉のためにあとがきで補足。
清君は純粋に楓さんがカワイソスと思って抱きしめただけで、性的な物はありません。日本男児たるもの、そんなものに惑わされはしないのです。
ですが~、露出狂な楓さんがおっけーと思ってるキャミソール。
おじいちゃん世代だと「破廉恥な!!」的なカッコだし、そういうあたりで意識してたかも。50年~70年の年齢差は大変です。
ちなみに、たとーの意味は刺青だときっと通じていません。




