表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/62

臆病な僕は 4

◇ ◇ ◇


彼女が目を覚ます。

良かった無事に目を開けてくれて。


人間が泣く姿を見たのは、はじめてではない。

だが、自分を抱き締めて、眠るまで泣き続けられた経験はロザリンドは、はじめてだった。回された腕から香る血の臭いに気を失いそうになったが、なんとか耐えられた。

目を覚ますと慌てたように上着を脱いでくれたため、ロザリンドは安堵する。


だが、受難はこれだけではない。


「お願いがあるんだけど」


笑顔でそう言われ、断る事はできるだろうか?


何故か、彼女の愛玩具と化している自分に問いかける。


同じようにまわされた手。

目の前が真っ白で、違う意味で気を失いそうになる。


姫と同じ顔をしてるが全く違う、この対応に照れはしたものの嬉しくて言葉が出ない。

「大好き」だなんてそんなに意味のない言葉を放つ、彼女の一挙一動が胸を締め付ける。

自分は、若い女の子でもあるまいに‥‥。

彼女は愛しい姫とは違う。

でも、姫が与えてくれなかったものを簡単に与えてくれる。

本当は彼女と出会うために、同じ顔をした姫に恋焦がれたのだろうか。などと、何が先でどれが本気なのか良く分からない疑問がぐるぐる回り、冷静な思考を乱しはじめた。


彼女に香りを着け、解放されると執務にもどる。

彼女から離れるのは名残惜しい。

でも傍にずっといたら、彼女に自由はない。一人でやりたい事もあるだろうと部屋を出た。

それは言い訳なのかもしれない。あのまま側にいたら、おかしくなってしまいそうだった。


大切な姫がいなくなった不安。

代わりの彼女の優しさ。

シンジュが言ったとおり、彼女がそのまま姫にすげ替えればいいのだと、心が同意しそうになる。

彼女は姫ではない。

元の世界に返してあげなければならない。

それに、姫が戻ってきたら、どうするのだ。


シンジュの意見を選択したら、

どうすればいいのだろう。




しばらくすると、他者に関与させないために着けた自分の香りが遠くから漂ってくる。

近くに彼女がいる証拠だ。

濃い香りはこんな方法で役に立つのかと、窓から彼女を探す。

見つけた彼女はまた、神原清と一緒にいる。

気がつけばこんな土地。同郷の異性と弾む話もあるのだろうと思うものの、二人から目が離せなかった。

楽しそうに笑う表情。

聞こえない声が気になって、仕方ない。

相手が彼女に触れる姿を見て、心から溢れてくる憎しみ。


なんて黒い独占欲。


普段なら、この辺りで自分を冷静に見て、笑い、落ち着かせる所だが、今日の欲は収める事ができないでいた。

彼女が自分以外の人物と一緒にいるなんて現実が、息が止まりそうなほど苦しい。


「何なんだ‥‥何なんだ?」


自分と一緒にいるときの笑顔、いや、彼と一緒にいるときのほうが楽しそうに見える。

自分には見せた事のない笑顔。

彼女の特別は、彼であってロザリンドではない。


黒い感情が心を乱した。



ロザリンドは王である。

樹木の妖精は、木の化身。

森は彼らの領土で、彼らの体の一部だ。今ここで立っている地面そのものとリンクし、心が乱れると、大地も乱れる。

しまったと気がついた時は遅く。

彼女を中心とした地点が揺れていた。

心の振動が、地面を伝わり陥没する。


そして瓦礫は彼女を傷つけた。



動かない彼女を見て、思考が混乱する。

気を失ったのは出血のせいか?

それとも、衝撃がどこか見えない箇所を損傷させたのだろうか?

人間の体の構造なんて良く分からないし、それを補う知識を持った者は妖精にはいない。

人間の事は同じ人間に聞くべきだろう、

でも彼に頼むのは、

彼に頼むのは嫌だ。


「ロザリンド。臭い。臭い!」


そんな子供みたいな感情とどうすれば良いのか分からない不安が周囲に臭気を放っていた。

それを注意するようにシンジュが現れる。

助かったと、


「そんなことより、彼女が」


唯一の味方に助け船を求めた。


「えー。お姫様がどうかした?」

「傷を治すのはどうすればいい」


ロザリンドの必死な訴えに彼女をシンジュは覗き込むが、傷など見当たらない。

足の方がほんの少々えぐれているだけだ。

気をつければ感じるぐらいの微かな香りに軽症だと判断する。ロザリンドの臭いの方が濃いせいもあるだろうが、シンジュの目から見ても彼女はそんな慌てて治療を施さなければならないような患者ではない。

ただ、いい機会だと思った。


「いや、僕に聞かれても。‥‥って、あれあれ、

 奴隷にしちゃえばいいんだよ」


だから不必要なアドバイスを与える。


「だが‥‥」

「このまま起きなかったらどうするの?そのほうが困るでしょ」


当然、困惑しロザリンドは承諾しない。

それは勿論想定内である。


奴隷にする。

異世界から召喚してきた人間と奴隷契約を締結する。

人間側のメリットは、かなり大きい。樹木の妖精から、栄養、治癒能力、言語など契約によって与えられる。

言語、これによって、分からない言葉はなくなり、誰とでも対話ができる。

栄養、樹木が溜め込んだ養分を同調させる事により、人間は食事をとる必要がなくなる。

治癒能力、樹木の妖精側の都合で、人間の怪我は放置しておくと双方共にダメージが大きい。よって治癒能力や免疫力を向上させる。多少の怪我なら直ぐに治る。ただし、再生能力まであがるわけでもなく、大きく欠損してしまうと、そこが復活することはない。当然不老不死でもないので、歳は重ね、寿命を全うすることはできる。

デメリットは、契約者の奴隷となり、自由がきかなくなるかもしれない事。

契約者が望まぬ事は、なぜかすることが出来ないし逆らう事はもちろん出来ない。ただ、契約者が望んでくれれば何でも好きにできる。

そんな奴隷の証に体に痣が刻まれる。


シンジュは瀕死の清を助けるという名目で奴隷契約を強制的に行った。

だから、シンジュが望めば清は逆らえないし、拒否権はない。

ただ、命を救われたという事実に清は感謝し、恩を返すという理由で拒否するつもりもないようだが。


「名前が悪いんだよ。僕とのお約束とか。女の子に似合う可愛い名前」

「そんなくだらない事で、何かが変わるわけじゃない‥‥」


「後ねぇ、ロザリンド。奴隷にすると、望めば人間の目を奪えるよ」


そう、

あくまがささやいた。



◇ ◇ ◇






ああああ。


楓さんじゃなくて、先に王様が恋に囚われてしまいました。



ロザリー書きやすいよぅ。(!)






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【××× A good child, so do not imitate ×××】
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ