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臆病な僕は 3

「お姫様。ごきげんよう〜」


シンジュの気の抜けた声がする。


軽くなったと思ってたセイの表情が嫌そうに変わる。

前と一緒。

彼は、シンジュが嫌いなのだろうか。

ただ、私もあんまり好きではない。

意地悪な突っ込みのせいだと思うけど、なんだか素直に親しく出来ない。

表情は誰よりも穏やかなんだけど、作られた笑顔に見えてしまう。


一見意味がなさそうに、ふらふらとしてるのに、押さえるところは押さえてる。

侵入者と交渉するための、前の時も、途切れた会話を繋いだり。簡単な重要事項をそれとなく教えてくれたり。

いい人なのかな‥‥と思えばそうなんだけど、回る頭に裏側があるって思っちゃう。


要は、インテリは苦手なんだよ。私。


「ロザリンドの香りまみれなんだね。こんなに香りをお姫様が着けてるって事は、彼はすっごく怒ったり、泣いたりした?」

「普段通りだった」

「おかしいなぁ。そんなことないはずだけど、香りには気をつけてたしね」


ただ、香りを着けてもらっただけなのに、こうやって聞いてくる。


「これは、私がお願いしたの」


そういうとシンジュは軽く驚いて笑う。


「ホントに君は、本物じゃないな。ロザリンドと仲良しなんだね。妬けちゃうね。

でも、今は僕のセイ君と仲が良さそうだけど?」


本物じゃないって言葉も、仲良しって言葉もトゲトゲが見えて、かなり嫌だ。


「森のお礼です」

「ああ。そういうことにしておくよ」


そういうことにしておくよ?

どういう意味だろう。


「仲良しな君たちを引き裂くのは辛いけど。セイ君を借りて構わないかな、お姫様?」


セイに用事は元々ない。

だから、構わないけど。

単純に『構わない』って言うのは面白くない。『構わなくない』って言って困らせるのはどうだろう。


「何の用だ」

「お仕事。お仕事〜」

「そうか」


変な思考を巡らせている間に私抜きで、シンジュとセイは会話をはじめていた。

そして、二人で私に背を向ける。

どこかに行こうというのだろう。


「あ‥‥」


呼び止める言葉が見つからなくて、止まる私に、セイは気づいて振り返る。


「また、時間を作ってくれ」


そう言って、

軽く笑ったの。



ねぇ、どういう意味だろう。

く、組手の時間。

なんだろうね。

多分。



■ ■ ■



セイが連れて行かれた直ぐ後。

部屋に戻るのもつまらなくて、ぼんやり庭を眺めていた。


少しの空間に、テインカーべルみたいなのがふらふら飛んでいるのに気がついた。

いや、みたいなのじゃなくて、そのものじゃない?


手のひらぐらいの女の子に透明な丸い羽をつけた物がふわふわ浮かんでいる。

いやぁー。妖精だよ。妖精!!

かわいい!!


ふらふらと近づいていくと


「××××!!(何故人間がここにいる)」


聞き取れない言葉で何か言われた。


表情は憎々しく、私には好意を持っていない感じだ。

奴隷姫だし、しょうがないんだよね。

でも、かなり残念だ。

きっと、先のもふもふちゃん達と同じで、近づくな的な言葉をぶつけられてるのだろう。


あの光景を思い出して、少し気分が悪くなった。


目の前が小刻みにゆれる。ショックが大きすぎて目眩までするよ。

治まるようにとペタリと地面に腰を下ろす。

まだ、ぐらぐらする。

‥‥って揺れすぎでしょ?

大きな音がして、柱が倒壊した。

いや、まって。

ちょっとまってよ、目眩じゃないの?

地震?

逃げなきゃ‥‥ってどこに?


そんな感じでおたおたしてると、妖精の彼女が目につく。


空に浮かんでいれば揺れないし、無事そうだ。


「××××!!(これはお前の嫌がらせか)」


何か言って彼女は飛んでくる。

え〜なんでワザワザこっち来るの。助けてってすがってるのかな?

いや、私の側って危なくない?

言葉もわかんないし、上からだと表情が見えない。


「危ないから、高く飛んだ方がいいよ」

「××××?(何かの呪いなのか)」


服に掴みかかっているようで‥‥何か怒ってるんだよね。

この非常時に。

払うことなんて絶対できないし、走ったら。飛ばされちゃいそう‥‥。


立ち尽くしたままでいると、なんと。

足元の床が陥没した。

私もうっかりすっころぶ。

そして、彼女は離れた。


「××××!!(やった人間を倒したぞ)」


よくわかんないけど、今、絶対バカにされた。気がする。

かわいいのに、残念すぎる。


地面が沈んだり、割れたり。地震自体は大したことないけど、床がとんでもないことになっている。バラバラに下がる床が倒したのは、また柱で、勝ち誇る彼女に向かって、倒れた。




自分の足から血が流れる。

痛くないから大したことないと思うけど。

靴下黒で良かった。


あんな地面でなんとか出来るとは思わなかった。

とっさに走る。間に合わないかなって思ったけど。柱が倒れるその瞬間。彼女を包んで、隙間に入り込めた。

瓦礫が柱から守ってくれて、直撃は避けたけど。

多分彼女は私に捕まれたことによる全身打撲?ぐらいしてるかも。

私も足を何かで切ってしまった。

痛くないっていうのは、

大したことないか、ビックリするぐらい重症なのかだ。

まぁ前者だろうけどね。


瓦礫を退けると、青ざめたロザリーがかけて来ていた。いや、さすが王様。

災害が発生したら、いち早く現場に駆けつけるわけだね。


すごいね。


「‥‥」


でも何も言わない。

ロザリーの表情が冴えない。

あぁそうか、誰が流してようが、血は血だわ。苦手なんだよね。


「あぁ。ごめんね怪我しちゃった」


彼女が私の下から出てくる。

ちょっと怪我したかもしれないけど、無事みたい。

よかったね。


「あなたが身を挺して守る必要があるのか」

「××××(申し訳ありません)!」


ロザリーの大きい声に、彼女は恐縮して何かを言う。

なんか仕草が謝っているみたいな感じだけど。

いや、ロザリーは怪我してる私に怒ってるのであって、あなたは関係ないんじゃないかしら。


「な、何怒ってるの。怪我したのは悪かったけど。こんな小さいのに、私が守らなきゃ潰れちゃうでしょ」

「それなら、そこまでが彼女の運命だ。いや、助けた事を言ってるんじゃない。そもそも、虫がこんなところで何をしている!」


指すような怖い言葉と、ロザリーから沸きたつ吐きそうな匂い。


シンジュが言葉ににおわせてたっけ、濃い香りは。

すっごく怒ってるか、すっごく悲しんでるか?


「ロザリー。大丈夫だから、もう怒らないで‥‥」


どんどん香りが強くなって‥‥意識が朦朧とする。


大好きな匂いって、濃すぎると耐えられないんだね。

目の前が真っ暗になって、私は床に崩れた。



■ ■ ■



気がつくと、お姫様ベッドの天蓋が見える。


足と、頭と、胸が痛い。

足は切ったせいかな、痛みって後からくるのね。最悪。

頭は‥‥打った?

ごんって。

多分、か弱い女の子の如く、気を失った時かな?

貧血で倒れるって少し憧れてたけど、よく考えたらふんわり寝転ぶ訳がない。

くらくら〜、ごん!

って感じだよね。

そして、私もそうなったんだろう。痛い。

セイのせいじゃないよね?

じゃあ胸は、胸部はなんだろ。一緒に打ったかな?


天井向いて、色々考えてると、脇にロザリーが立ってるのに気がついた。


ここまで彼が運んでくれたんだろう。また迷惑かけちゃった。

 

「ロザリー。ごめんね」

「あなたは悪くない。謝るなら僕だ」

「怒った事?」

「いや。僕はあなたには怒ってなんかない。

 その、あなたを治癒するのに」

「治癒?」


足は確かに直っていた。なんでか痛いけど。

ほっといてもかさぶたができて一週間ぐらいで消えちゃうような傷だったけど。跡はない。


「すっごい〜。魔法だ。傷消えてる。謝るんじゃなくて、私がお礼をいわなきゃならないんじゃないの?」

「治癒のために、一方的に奴隷契約を結んだんだよ」

「奴隷契約???」


‥‥ってなんですか?


「許して欲しい!」


ロザリーはただ頭を下げた。


響きは良くない事は何となくわかるんだけど。

謝らなければならない、とんでもない事なんだろうか?



説明が足りないよ。



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【××× A good child, so do not imitate ×××】
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