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モノクロームから

時として


無性に泣きたくなる


そんな時は無いかい?



そんな時は 意地を張らずに


思いっきり 泣けば良い


目が 腫れ上がるまでね




そう 彼も そうだった


変化の無い日々に


生きている実感も無く


無性に泣きたくなったりしていた


ただ 彼は 泣かなかった


「男は泣いてはいけない」


彼の父親の言葉


彼は忠実に守っていた





テレビ局のアルバイトも 


相変わらず


単調だった




ただ 依田さんとの関係は 


確実に変化していた




彼女は何時しか 彼に想いを寄せているようだった


彼もそれに 気がついてはいたが


あえて 気づかぬそぶりをしていた


親密な関係になるのを恐れていた


ましてや 彼女のような美人と


自分が釣り合うわけも無い と




お互いに そのままで いれば良かった


しかし


人ってやつは 面白い


行動を起こさずにはいられない




それは彼女だった




「一緒に帰らない?」




そう話しかけてきたのは依田さんだった




二人はテレビ局の近くのイタリアンで食事をした




仕事の話で 場を誤魔化していた彼だったが


さすがに もう話題に尽きた



暫くの沈黙を破ったのは 彼女だった




「私 あなたの事が 好きになっちゃった」




正直 彼には 何の想いもなかった


ただ その場の雰囲気で



二人は 付き合うことになった





彼女は 献身的であった


夜は 彼のために 夕食を用意し


彼が望めば 髪型も変えた


その美貌にも関わらず 自惚れることも無く


ただ ただ 彼を 愛し続けた



女性というのは そういうものなんだよ


相手を愛してしまうと 母性と愛情が重なり


彼の思い通りになろうとする




愛おしい生き物だよね




でも 


彼は 


そうは 


思わなかったんだ 


 


いや 気がつかなかっただけなんだ



この時には






彼は 依田さんという彼女がいる


自覚は無く


一方的に 愛をもらい続けた



そして自分は


新たな出会いをしてしまったんだ






10月だっただろうか



彼の大学でも学祭があり



やることも無かった彼は



実行委員として 準備に明け暮れていた




そんなキャンパスに


一人の女子高生がいた


それほど珍しい光景でもない


ただ あまりに歩き方が 不自然だった




と 突然


彼の目の前で 彼女は地面へと倒れ込んだ




「救急車だ!誰か!」




彼は 大声で叫んだ





彼は到着した救急車に同乗し


救急病院へと付き添うことになった




持っていたカバンから住所と名前を調べ


親へと連絡したのも


彼だった



彼女の名前は 小松千津


決して美人では無いが 可愛らしい女の子だ




彼は内心 気づいていた




この出会いが ただの出会いでは無いことを







腹が立つかい?


身勝手な男だよね


まあ 最後まで聞けよ



それからでも遅くは無い



だって 時間は たっぷりあるんだから

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