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ハロー!ニューワールド!

 異世界といえば何を思う?

 大きな山とカラフルな木々? 空に見える大きな惑星? それもいいな。


 俺もそれくらいわかりやすい異世界に行ってみたい。


 まずは事の経緯を話そう。

 俺こと紀ノ川(きのかわ)ミツは、さっき、死んだ。


 本当についさっき。

 車に引かれて。

 自転車の二人乗りは気をつけてやろうね。


 ……やっちゃダメか。


 さてここで勘のいいオタクならわかると思う。

 これは異世界転生の合図では? と。


 が、しかし今俺がいるのは京都の五重塔付近。

 時刻は真夜中だろう。


 異世界転生だと思う。いや、そう思いたい。

 だって確実に死んだはずなのに蘇るなんて。


 でも、言われてみれば女神、超次元存在……。

 転生のお約束であるその二人? 二柱? に会ってもいないし、目が覚めたら砂利道(ここ)で寝転んでたし。

 どういうことなんだ、となるのも不思議じゃないだろう。


 なんて考えていると、はるか先に見える山の頂上付近に何かいるのが見え……――――!?!?


 現代社会では架空生物とされる伝説上の生物!

 大いなる力を持ち、人と関わらず悠久の時を過ごす生物!!


「…………龍だ!?」


 思わず大きな声が出てしまった。失敬。

 ワクワクするのを抑えながら、少し考える。


 ……ここは本当に日本なのか。と。


 架空生物。数百m先に見える龍。長い身体を雲の中に進めているあれと、はるか遠く、目を凝らさないと見えない程の遠方の空に浮かぶ謎の島。それらはまるで俺に「ここは異世界だ」とでも言っているような感覚に陥る。


 その反面、横に立っている五重塔。京都出身でない俺ですら知っている名建築。日本を代表する建物だ。こちらはこちらで、俺に「ここは日本だ」とでも言っているような気がする。


 なんて考えている俺の耳に声が聞こえる。


「よ、妖狐だ!! 出たぞぉ!!」

「んあ?」


 ようこ? 陽子……いや、妖狐?

 狐……何に対して言ってるんだこの人達は。


「撃てぇ!!」

「うおあ!?」


 足元に放たれる鉛の塊。

 砂利を跳ねさせて着地する。


「あっぶないなぁ!? 何すんだよ!!」

「喋ったぞ!! やはり玉藻前(タマモノマエ)か!!」


 なんて??

 タマモノマエ……?


「っあぶな!!」

「やれ! 妖術師!!」


 そう言うとハゲの背後から現れた女性が謎の札を取り出す。

 待ってなにそれ知らない知らない。

 日本じゃないのやっぱりここ。


「妖術…… 【手照(シュショウ)】!!」

「うお!?」


 大きな手がこちらに向かってくる。

 蘇ったばっかなのにもう死ぬのか、なんて思っていると、何かに弾かれたかのように俺の目の前で消滅する。


「……んえ? 何これ……。」

「っ! 神主さま! アレは手に負える妖怪じゃない! ここは一旦退くべき……」


 そこまで女の人がいいかけた時に、神主と呼ばれていたハゲが大声で言う。


「黙れ!! お前の代わりなぞいくらでも要るわ!! アレをやれ!!」

『神主さま、アレをさせるのはさすがに……』

「お前まで言うか! 関係ない!! やれ!!!」


 ……えーっと、もしかして禁術みたいなのしようとしてる?

 あの女の子可愛いから死なせたくないんだけど。

 なんて考えていると、女の子が覚悟を決めたような顔で何かを話し始めた。


「………っ、暗雲(アンウン)(ホシ)鰥寡の(カンカノ)―――「っとさすがにダメだろ。」


 そんな雑に女の子を扱っちゃモテないからね。

 助けないと。

 なんて思いながらまずは女の子をどうするか。首元をトンと叩いて気絶させたのはいいけど……。

 というかこれ、現実でやったら危ないんじゃなかったっけ。


「非常時だから仕方ないね。」

「何をふざけたことを!!」


 ……銃。こちらに向けてるのは……アサルトライフルとハンドガン?

 いや、ゲームの知識しかないし分かんないけど。


 さて、どうしようか。パッと見るだけでも十数人。

 さらに相手は銃を持ってる。この子みたいに妖術とやらを使えたらいいんだけど……。


 まあ……とりあえず殴ってみる?


 飛んでくる弾丸を謎の力で弾きながら相手に近づく。

 先程の妖術とやらを消滅させたのと同じ力のようだ。


「うわあああ!! くるな!! バケモノ!!!」

「……ま、いっちょやりますか。」


「……あ。」


 思い切り殴る。

 地面を。


 いや、石につまづいたとかそんな初歩的なミス……ではあるけど。


 隆起した地面が敵の足元をすくう。

 それだけではなく、波打つように暴れ回り地震のような攻撃へと変化した。


「………………待って。なにこれ?」


 落ち着いた地面の上に倒れている大人達を見ながら、夜の街にそう呟いた。


 それはさておき、これからどうしようか。

 こんな力を持ってるなんて知られたら……。


 ――――――――――――

 やばい科学者『解剖して調べよう。』


 やばい司会者『ブラックオークション! まずは200万から!!』


 やばいヤクザ『人殺しに手伝ってもらうでぇ??』

 ――――――――――――


 なんてことになりかねない!!

 それだけは避けねば。


「ん……? え?」


 あ、目が覚めた。

 近くのベンチに寝転がせておいた女の子が目を覚ます。

 さすが観光地。ベンチくらいお手の物だな。

 なんて思っているとキョロキョロとしてからこちらを見た女の子が、慌てた様子で言う。


「な、何がもくてち!!」


 ……噛んだ?


「…………何も目的じゃないけど……。」


 黒い髪の毛に猫のようなキリッとした目。かなり端正な顔立ちをしている少女が、頬を赤らめてこちらを見る。

 噛んだのが余程恥ずかしいのだろうか。


「っ……妖狐がただの人間を助けるわけないでしょ……。

 …………何して欲しいの……!」


 ん? 妖狐?

 あの妖怪の?


「まって。どんなふうに見えてるの? 鏡か何かない?」

「手鏡ならあるけど……。」


 それで大丈夫、と言って受け取った手鏡に映るのは、綺麗な黄茶の髪をした、巫女服の少女。

 目の前にいる女の子に負けず劣らずの、綺麗な顔立ちをしていた。

 そして、所謂狐耳と呼ばれるものが頭から生えている。意識すると微かに動くその耳と、腰あたりから生えている九つの尾。それらをそなえる少女は……俺の動きと連動している。

 気づきたくなかったけど、この写っている少女が今の俺の姿ってことだろうか。


「……なに、私の手鏡になにかあった?」

「あぁ、いや、なんでも。……あ。さっき何でもするって言ってたよね。」


 そう言って見つめると、目の前の少女は怯えたような顔つきで強ばった返事をする。

 申し訳ないと思いながらその少女に言った。


「とりあえず寝れる場所、用意してくれない?」


 

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