6話 学年代表対抗戦術大会…?俺が…?
目が覚める、明るい朝日が俺の顔を照らす。
俺は、まだ寝ていたくて、シーツを引き上げ、顔を隠す。
それにより、朝日が遮られ…
ん?朝日?
ガバッ!!!
「やっべぇ、寝坊かも…」
俺は急いで、傍らにある時計を見る。
時計は5:20を示している。
良かった…
まだ、全然間に合う時間帯のようだ。
それよりも、ノアだ。
いつも寝坊などしたことのないノアが今日は居ない。
何かあったのかもしれない。
俺は、立ち上がり少し離れたノアのベットまで急ぐ。
「ノア、大丈夫!?」
俺がベットを見ると、ノアは寝ていた。
スー、スー
ノアの控えめで静かな寝息が、部屋に響く。
俺は、ノアに何事もなかったことに安堵すると同時に、絶句する。
目の前の光景は、前世のゲームでのスチルのように完成されていた。
朝日がノアの銀髪を美しく照らす。
いつも少し硬めの表情をしている顔が、寝ていることにより、柔らかくなっている。
俺のベットの方を向いて寝ているのもなんともノアらしい。
「ん…、マスター?」
ノアが目覚める。
少しぼさっとした髪が、普段のノアとのギャップにより映える。
「お、おはよう…」
俺は、それしか言えなかった。
〜〜〜
「申し訳ありませんマスター、寝坊などメイドに有るまじき行為です。」
「もういいって、間に合ったんだし」
「しかし…」
朝食後、ノアが話しかけてくる。何度も聞いた、謝罪の言葉だ
ノアは起きてから、ずっとこの調子だ。
ランニング中だって、
『マスター、申し訳ありません。』
『ぜぇ、はぁ、もう、いいって…』
『しかし…』
しんどいから、喋らせないでくれ…
と、こういった感じになった。
入学してから、一ヶ月以上経つのにまだまだ朝のランニングはしんどい。
ノアは、よほど気にしているようだ。
ここは、フォローするのが俺の役目かもしれない。
「本当に気にしなくていいよ、可愛かったし、」
「…そう、ですか」
どうやら、ノアは納得してくれたようだ。
俺達が今向かっているのはティナのところだ。
これから、ティナの契約書類を書かないといけない。
事務室の、少し手前の通路にティナが居た。
「ティナ、おはよう」
「お、おはようございます、ゼイ…、マ、マスター」
ティナに挨拶をすると、ティナも返事してくれる。
てかなんでマスターなの?いま、ゼインさんっていいかけてたよね。
なんで言い直したの?
どうしても気になった俺は、ティナに聞き返す。
「な、なんでマスターって言い直したんだ?」
「い、いえ、ノアさんが、そう呼んでいたので…、そうですよね、私なんかにマスターなんて言われたくないですよね…
なんと呼んだらいいですか?それとも話しかけないほうが…」
「い、いやそのままで!!!」
ティナがまた自虐モードに入ってしまったので、慌てて止める。
なんとか、ティナの自尊心を上げることができないものか、
でも、これだけは言っておかないと。
「ティナ」
「は、はい?」
「私なんか、じゃないよ。君はもう僕の大事な仲間だ。」
「…はい!」
〜〜〜
手続きはすぐに終わった。
一年に一人二人は複数のエーテルマスターと契約する生徒が現れるようだ。
『それでも君ほど早い子は居なかったけどね…』
事務室の先生はそう言って苦笑いしていた。
「お、おっきかったですね。」
ティナが言う。
恐らく、事務の先生のことだろう。
確かに、事務をしているのかと疑ってしまうくらいにはデカかった。
もしかしたら、この学校の先生になるためには、デカさも選考対象なのかもしれない。
「これで、ティナは正式に俺達の仲間なわけだね。月曜から頑張ろうか。」
「はい!ノアさんもよろしくお願いします。」
ティナがノアにも話しかける。
これは、ノアにも良い風になってくれるんではないだろうか。
ぜひとも、仲の良い友達になってほしい。
「もちろんです。」
ノアがそう答える。
そういえば、ティナがいじめられているところを見たときに、一番に反応したのはノアだった。
やはりノアは優しい子なのだろう。
俺は、今度ノアになにかしてあげようと心に決めた。
タタタタタ
前からドロ先が走って来る。
なにか、急ぐことがあったのかと、心のなかで「お疲れ様」と言い
道を開けようとすると、ドロ先が俺の眼の前で止まる。
そのまま、走っていた勢いのままドロ先が言う。
「ゼイン!校長からの呼び出しだ」
…え?
〜〜〜
俺は今、ノアとティナと共に、校長の前に立っている。
腕を組み、椅子に座る校長は、口を開くと
その大きく、低い声で言った。
「ゼイン、貴官には学年代表対抗戦術大会に参加してもらう」
え?なにそれ
しばらく待っても、校長はこれ以上口を開く気配がない。
そこで、ドロ先が説明するために前へ出てくる。
「学年代表対抗戦術大会は毎年この時期に開催される、戦術大会だ。
学年から代表者を5名選び、代表者同士で戦ってもらう。その代表者の内の一名に君が選ばれた。」
なんとも、名誉なものに選ばれたらしい。
でも、なぜ俺が?
「どうやら、疑問のようだな、なぜお前が選ばれたのか
そもそも、エーテルマスター複数と契約できる時点で選ばれるのには十分だ、更には、お前はこの速さで二人目と契約した十分すぎる理由じゃないか?」
ドロ先が俺の疑問に律儀に答えてくれる。
確かに、そのとおりかもしれない。
「とにかく、決定は絶対だ。開催は2週間後、準備しておけ。」
お、横暴だ…!!
心では言えても口に出せるはずがなく、
俺の大会参加は決まったのだった。
いや、もともと決まっていたのだから、告知されたといったほうが正しいかもしれない。
〜〜〜
とある、部屋にて二人の人が話している。
「どうやら、彼の大会参加が決定したようですよ。」
1人が話し出す。
「あら、やっぱり?」
もう一人が嬉しそうに言う
「楽しみね、今年の大会。」
二人の楽しげな会話はまだ続く。
この部屋の名前は生徒会室…
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
今回の話を書く際、友人から
「ノアの外見、あんまり詳しく描写されてなくない?」
と言われまして――た、たしかに!!と気づき、慌てて少しだけですが描いてみました。
どうだったでしょうか? ノア、可愛かったですか?
さて、物語もいよいよ新章に突入します。
生徒会室で話していた“あの二人”の正体とは?
入学編を終え、次回からは《戦術大会編》の幕開けです!
7話もぜひ楽しみにしていてください!
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