12話 どうしてここなの…
夏合宿の当日俺達は校庭に並んでいる。
会場行きのバスに乗るためだ。
「あ、暑い…」
季節は夏真っ只中
その炎天下の中、立たされれば当然暑い。
これでは短い校長の話も聞けないだろう。
「暑いぃ〜」
ティナもぐったりしている。
俺等に比べてノアが一番平気そうだ。
メイド服なんて一番暑そうだが…
「ノア、熱くないの?」
俺はノアに聞いてみる。
「暑いですよ、我慢が上手なだけです。」
ノアが答える。
よく見てみると、ノアは汗を結構掻いている。
やはりメイド服は暑いのだろう
「それに、夏用の服で来ていますから。」
ノアがそう言いながら、袖を差し出してくる。
その袖を触ってみると確かに薄い。
というか内側の肌触りがすごくいい
布の薄さよりも肌触りの良さの方が気になる。
「全員!!とりあえずバスに乗れ!!」
校長が一言だけそう言うと、普通の乗用車に乗る。
それから、付き添いの教員により、乗り込みの案内が行われた。
約十分、やっと涼しくなれそうだ。
〜〜〜
「マスター、見てください!大きな建物ですよ!」
ティナが楽しそうな声で言ってくる。
このことも大分打ち解けられたからだろう。
俺達に対してあまりネガティブなことを言わなくなった。
まぁ、落ち込んだときには言ってしまうのだけれども。
そういえば、ティナもノアも外に出ると元気になる。
なにか理由があるのだろうか。
気にならないわけでは無いが、それはいつか彼女たちの意思で話してくれたらと思う。
「マスター!変な顔の鳥が居ます!」
ティナがまた大きな声で言う
「うわ、マジだ…」
ティナの言う方を見てみると、声が出るほど変な顔の鳥が居た。
そういえば、ノアが静かだ、どうかしたのだろうか。
俺はノアの方を向く
「スー、スー」
ノアの寝息が聞こえてくる。
ノアは寝ていた。
こういう風に無防備な姿も時々見せてくれるようになった。
ノアとも絆が深まっているのが分かる。
そういえば、俺が入学した最大の理由である魔法についてだが、
どうやら契約したエーテルマスターとの魂の同調率が重要らしい。
俺からすれば、二人と仲良くなれるし、魔法は使えるしでいい事づくしだ。
そういう面から見るとこの夏合宿はいい舞台になるだろう。
「マスター!」
俺が物思いに耽っているとティナがまた呼びかけてくる。
今はこの移動時間を楽しむことにした。
〜〜〜
「はぁ、はぁ」
俺達は今炎天下の中走っている。
「く、はぁ」
走っているのは砂浜
いつも走っている道とは違い、足が取られるのでとても走りにくい。
「はぁ、はぁ」
そのため、多くのスタミナを消費し…
俺は息切れを起こしていた。
「マスター、後少しです。」
ノアが俺の横を走りながら言ってくる。
なぜノアはいつもこんなに余裕そうなんだ。
「は、恥ずかしいぃぃ…」
と、ノアの奥を走っていたティナが言う。
なぜティナが恥ずかしがっているのか、
理由は単純だ、俺達は今普通のビーチで走っている。
そう、”普通”のビーチだ。
俺達は、海で遊んでいる人たちの間を走っているのだ。
「マスターは恥ずかしくないですか?」
ティナが話しかけてくる。
「え?もう、はぁ、いいかなって」
俺は荒い息のまま答える。
「そうですか?」
ティナはそう言うとまた少し恥ずかしがりながら走り出す。
俺はそんなことよりも、ティナですら息切れしていないことにショックを受けた。
「どうしてここなの…」
しばらくして、ティナがそういったのを俺は聞かなかったことにした。
〜〜〜
地獄のランニングが終わった後
俺達は宿泊施設の広場に並ばされる。
「明日は実践だ!気合を入れておけ!」
校長の短い説明の後、最早恒例となってきたドロ先の説明が入る。
「明日はある犯罪組織を潰しに行く、俺達も最善を尽くすが危険がなくなるわけじゃない。
相手は犯罪者だ!情けをかけるな!それがお前たちの身を守ると思え!!」
ドロ先はそう言うと建物に引っ込んでいく。
ドロ先は大きな銃を持っていた。
いや、ドロ先だけじゃない、他の教員もだ
セーフティは掛けられているが、その緊張感が伝えてくる。
ここはもう、前線なんだと…
いつ襲撃されてもおかしくないのだと
もしかしたら、夏合宿を舐めてたかもしれない…
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
12話では、いよいよ夏合宿がスタートしました。
この世界では銃の携帯が当たり前ですから、ゼインも人を殺すことに大きなショックは受けないことでしょう。
ですが――それでも、「撃つ」という行為には、きっと覚悟が必要なはずです。
次回は、そんな“覚悟”に直面する場面が描かれるかもしれません。
その際はゼインの心の揺れに、ぜひ注目していただければと思います。
それと……昨日、寝ぼけて投稿を忘れてしまいました。
本当に申し訳ありません!
では、また次回お会いしましょう。




