10話 本当の入学
「マスター、対戦表を確認してきました。」
ノアがそう言って部屋に入ってくる。
3回戦の対戦表が発表されたようだ。
「ありがとう、誰だった?」
俺はノアに聞く。
次の相手によって戦略が変わって来るからだ。
「…」
ノアは口ごもってしまう。
「ノア?」
「…生徒会長です。」
俺が名前を呼ぶとノアが言いにくそうにしながらも答える。
生徒会長?
「なっ!?生徒会長!?」
「はい…」
次の試合は終わったかもしれない。
〜〜〜
生徒会長 シエル
この学園では珍しい人間の女性
契約しているエーテルマスターは一人だが、魂の同調率が桁違いに高く
歴代最高レベル
その利点を活用した戦い方をする。
冷静で、感情的になることは少ない。
美人で、男子たちのあこがれの的
生徒会長について調べたが、このぐらいの情報しか無かった。
確かに、詳しい能力について公開されていないのは普通だが、エーテルマスターについての能力が少なすぎる、
(どうしてだろうか…)
しかし、情報がない以上作戦を立てようにも立てられない。
こうなると、直接勝負しかできないわけだが…
生徒会長相手に勝てる気がしない…
「マスター、」
俺が考え込んでいると、ティナが話しかけてきた。」
「わ、私を信じてください…」
ティナが俺を安心させるために言っていることは考えなくても分かる。
いつも少し不安げな子が励ましてくれるくらいに俺は悩んでいたらしい。
正直嬉しかった。
俺がお礼を言おうと口を開いたとき
「私は…?」
ノアのささやき声が聞こえてくる。
「ご、ごごごごめんなさい!!!!」
ティナが顔を真っ青にしてティナに謝る。
「いえ…大丈夫」
ノアは口ではそう言いながらも少しは気にしているようだ。
「ふふ、はははっ!!」
俺は思わず笑ってしまう。
緊張が少し晴れた気がする。
「全力を尽くそう」
俺は二人に言う
「「はい」」
二人はしっかりとした声で答える。
〜〜〜
「試合開始!!」
試合の開始を知らせる放送が入る。
「とりあえず、ビルへ行こう」
俺は二人に言う。
二人は頷き
3人で走り出す。
静かな街に俺達の足音が響く。
突然、自分の腹に衝撃が走る。
「グッ!!」
「え、」
ティナの困惑の声が聞こえる。
前を見ると、そこにはいつの間に居たのか水色の髪の女の子
おそらく俺を殴った犯人だろう。
「エーテルマスターです!!」
ノアはそう叫ぶと、ティナを連れて俺に近づいてくる。
しかし、敵がそれを許すわけもなく、ノアに攻撃しようと近づいていく
(やっぱり早い、移動系なのか…?)
俺がそう考えているうちに、
ティナがノアと敵の間に入り込み、盾で敵の打撃をガードする。
ティナが敵の気を引いてる間にノアがこちらに移動してくる。
「マスター、大丈夫ですか?」
ノアが俺の腹のあたりを気にしながら聞いてくる。
「あぁ、痛みも引いてきた、戦えるよ。」
俺がノアに答えると
ティナが後退しながらこっちと合流する。
「ありがとう、ティナ」
「い、いえ、私の仕事なので…」
俺がお礼はティナにお礼を言う。
今は敵との距離が離れているが、いつまた詰めてくるかもわからない。
更にまだ生徒会長の姿が見えていない。
「ノア、生徒会長の気配は?」
俺はノアに聞く、
ノアは30メートル以内の気配を感知できる。
「あそこの上です。」
ノアが答えたのはあのエーテルマスターがいるところの後ろの建物の上だった。
「へぇ、気付くのか」
すると、どういうわけか突然生徒会長の姿が現れた。
「ふたりとも、戦闘態勢だ」
俺がそう言うと、ふたりともすぐに移動する
ティナが前で盾を構え、その後ろにノアと俺が並ぶというシンプルな陣形だが、
それだけに強い。
ノアの殲滅力とティナの防御力を押し出していける簡単な陣形になるからだ。
「動きも悪くない、期待の新入生ってのは本当のようだね」
生徒会長はまだ余裕そうだ。
「随分と余裕ですね」
俺がそう言うと、生徒会長は普通に答える。
「あぁ、そう見えてしまったかい?実はしっかり困っているから安心してくれ。」
「ノア、魔法を」
俺がそう言うと、ノアが光魔法を発動させる。
ノアの体から光の粒子が溢れ出し、ノアの後ろで数本の剣を形作る。
「へぇ、エーテルの操作が上手いね」
生徒会長はそれを見ても全く焦った様子はない。
「行きます」
ノアがそう言うと同時に剣が敵二人に向かって行く
しかし、二人は全く同じ動きで左手をかざすと、剣が散り散りになる。
「なっ!?」
ノアが珍しく驚いている。
それだけに敵はすどいことをしたのだ、発動済みの魔法をキャンセルしたのだ。
いや、それだけじゃないなぜ生徒会長が魔法をキャンセルできるんだ?
「そろそろこちらからも攻めようか。」
生徒会長は、そう言うと姿勢を低くする。
(来るッ!!!)
みんなそう感じたのか構える
次の瞬間、ティナがネットの中に居た。
「まずは盾から排除させてもらった。
次は君だ」
その声が響いた瞬間、ノアが自身の後ろに手を伸ばす
するとそこから生徒会長が現れ、ノアに投げ飛ばされる。
「すごい、これに反応するんだ」
生徒会長が、投げ飛ばされながらそう言う
ノアはその間にネット弾を打ち込もうとするが、先に後ろに来ていた敵のエーテルマスターにネット弾を撃たれてしまう。
「こっちは二人いるからね、気をつけないと。」
生徒会長がそう言って立ち上がる。
「後は君一人だ」
そう言って生徒会長はもう一度姿勢を低くする。
俺も抵抗しようと咄嗟に銃を構える、だが
(ッ…!?)
腹に鈍い痛みを感じる
最初の一撃が少し残っていたようだ。
もちろんこんな隙を敵が見逃すわけもなく…
そのまま2対1で成す術無くやられてしまう。
俺達はこのとき、本当にこの学校に入学できたと言えるのかもしれない。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
皆さんに謝らないといけません。
昨日と一昨日、投稿できずに申し訳ありませんでした。
お詫びと言ってはなんですが、今日は午後にも投稿する予定です。
今回の10話ですが、生徒会長が登場したものの謎に包まれたままです。
彼女たちの能力は本当に移動系なのか?
それでは皆さん、11話もお楽しみください。
コメントやブックマークなど大変励みになります。ぜひして下さい。
それではまた次回!




