1話
「ご入学おめでとうございます。訓練、頑張ってください」
目の前の女性がそう言った。
俺は今、記憶にある限り――二度目の高校の入学式を迎えている。
ただし、ここは前の世界とは異なる地。異世界での話だ。
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──あれは、会社からの帰り道のことだった。
疲れ切った足取りで帰宅していた俺は、気がついたら落ちていた。ビルの上から。
……なんで?
触れた次の瞬間には、知らない女性に抱きかかえられていた。は?なんで?
それから早15年。
俺は今、「国防士官訓練校」の入学式に参加している。
新入生として――。
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なぜ俺が軍の訓練校に入ったのか。理由はひとつだけ。
魔法が使いたいからだ。
異世界といえばなんだろう?
異世界飯? たしかに魅力はある。
エルフの娘? ロマンではあるが違う。
現代知識で無双? 否! 否!! 否!!!
魔法だ!!!
異界の地で、未知の力を行使する。
これこそが異世界! これこそがロマン!!
俺は魔法を使うために、ここへ来た。
では、なぜ“訓練校”でなければいけないのか?
それはこの世界のシステムによる。
この世界の文明レベルは、俺の前世――つまり日本と同等だ。
食も科学も何もかも発展している。
つまり、「現代知識で無双」はできない世界ってことだ。
そして治安が悪い。
ギャングがあちこちにいて、銃の携帯が15歳から推奨されているレベル。
法律上、一般人が持てるのはハンドガンまでだが、裏の連中は無視。
そこで魔法の話になる。
この世界の魔法は、超強力だ。
もし裏社会に流れたら、それこそ国家転覆も可能なレベル。
そのため、魔法の扱いは軍が独占している。
一部の組織には裏ルートで魔法技術が流れているという噂もあるが……
まあ、それは置いておこう。
要するに――
俺が合法的に魔法を使うには、ここに入るしかなかったのだ。
……正直、半分は勘でもある。
顔を上げると、司会らしき女性が立ち上がった。
「これより、第135回 国防士官訓練校 入学式を執り行います。
全員、起立! 礼! 着席!」
おお、なんか軍隊っぽいな。
今さらだけど、本当にここでよかったんだろうか……
キツくないといいな……。
「学校長挨拶!」
女性がそう告げると、壇上にとんでもない強面の男が立った。
「全員起立! 休め! 注目!!」
低く太い声がマイクなしで響き渡る。
思わず気圧されてしまった。
「貴官らは、これより訓練生となる!!
所属は軍になり、有事の際は前線に立つことになる!!
中坊までの甘ったれた気持ちは捨てろ!!
最大限のことはするが、貴官らは最悪――命を落とすかもしれんのだ!!
そのことを心に刻め!! 以上!!」
マイクを使わないその声が、
「本当に訓練校に入ったんだ」という実感を、嫌でも刻みつけてくる。
……俺、本当に大丈夫か?
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入学式を終え、俺たちは寮へと案内された。
なんと、一人部屋だった。
もっと5〜6人の相部屋で、体育会系みたいなノリを覚悟していたのだが……
まあ、広いに越したことはない。
明日から授業が始まる。今日は早めに寝よう。
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翌朝。
俺は、だだっ広いグラウンドに立たされていた。
「貴官らにはまず、“契約”をしてもらう!!
話はそれからだ!!」
……え、校長自ら授業すんの?
てか契約って何!?
立ちっぱなし、地味にキツいんですけど!?
「では、初め!!」
いやいや、説明少なすぎじゃない?
周囲がざわざわと騒ぎ出した頃、背後から足音が聞こえてくる。
振り向くと――
そこには、美少女たちが整列していた。
……え、なんで!?
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
第2話は今日の午後に投稿予定です。
次回はついに「契約」とヒロインが本格的に登場します!
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