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第一話 エリクサー中毒(エリ中)

ひとでなしイケメン魔剣士とエリクサー中毒黒魔術師ヒロインの放浪記

 エリクサー症候群という言葉をご存じだろうか。

 

 知らない方のためにざっくり説明すると『効果の高いアイテムの使いどころに悩みに悩んだあげく、本来は使った方が絶対に良い重要な場面でも使う決断ができず、結局持ち腐れにしてしまう』というアレだ。

 

 いわゆるミームの一種であるが、ただのネタとして消化させるには勿体ない概念だとオレは考える。


 モノにもよるが、所詮は消費アイテム。常日頃から適宜使っていくことでしか、用途や使いどころが身につかない。意識し訓練を重ねることで、いざという戦いの中でも瞬時に取捨選択を行うことができるようになるのだ。 


 使わなければ、使い方は判らない。それはあらゆる分野に通じる真理だろう。

 


 だけどね。



「一回の戦闘で三本も四本も飲みつくしてんじゃないよ!!」


「え?」げっぷ。


 街道で襲ってきたゴブリン四体を丸焼けにした女黒魔術士、バステナが、この上なくみっともない返事をして振り返った。


 細やかな装飾を施した三角帽子、青いローブを纏った彼女は、単なる雑魚戦で最大火力の魔法を乱発し、その都度HP/MPを全回復する希少な薬品、エリクサーをがぶがぶ飲み散らかしていた。足元には空き瓶が転がってる。


「おまっ…、ちょ、ファイナルエリクサー使いやがったな!体力はちょっとしか減ってないじゃん、緑じゃん!!エーテルで充分だろ!」


「うー、何度言えば判んの?私の魔法はHPも割合で消費して威力を発揮する暗黒魔法なの!それに、現在HP量に応じて魔法攻撃力に補正が掛かるパッシブスキルもあるし!」

「なら余計に毎回フルパワーで魔法使うな!!」


「そのぶん早く済むんだし、いーじゃん!それより早く帰ろ」

 オレの剣幕にも全く耳を貸す気の無いバステナは、へそを曲げてぷいっとそっぽを向いた。


――――――――――


 くそ……このアマ……あ、失礼。オレの名はレオドラス。元アーベンクルト灰狼騎士団所属の魔法剣士。

 自分で言うのもなんだが、金色の長髪をたなびかせて華麗に戦う容姿端麗、才色兼備、一騎当千の、名うての冒険者である。


 言うまでもないが、魔法剣士は、剣による近接戦と魔法を組み合わせて戦う。

 素人はどちらつかずの中途半端な器用貧乏になってしまうが、両方の技術を極めてした者は無類の強さを発揮する……まさに今のオレだ。徒党を組まなねば冒険の一つもこなせないような有象無象とは格が違う。格がね。


 ただ、常に一人で色々とこなすのは面倒なので、オレはたびたび、適当な相棒を選んでペアで活動するようにしていた。そして今の相棒は、このエリクサー中毒の女。


 ところで、この世界についてだが……だいたい皆の想像通りだ。

 

 ただ一つ、所持アイテムが共有であり、パーティの所持品に個別の所有権が無いシステム、ということだけ覚えていてほしい。パーティ契約を結んだ者同士の鞄が異空間を介して一つに繋がっているのだ。


 魔法剣士は、体力も魔力も等しく重要だ。だからこそオレはHP回復用のポーション、MP回復用のエーテル、そしてHP/MPを瞬時に大回復できるエリクサーの所持量のバランスを重要視し、大量に持ち歩いていたのだが……。


 今まで何度も相棒をとっかえひっかえしてきたけど、フツー遠慮するよね?皆、ちゃんとお互いの私物だと判ってる空気読んでくれたよ?


 だけどこいつ……バステナは、なんだお前、可愛ければ何してもいいんか。そりゃ可愛いよ。オレンジのショートカットがブルーの目を一際引き立ててるよ。スタイルも良い。乳もあるほう。正直に言おう。可愛いから今回の旅の相棒として選んだ部分もあるよ。そしたらこれだよ。これまでの冒険でせっせと貯めたエリクサーがもう無いよ。


 この数日は比較的簡単なクエストに連れ回して彼女の力量を試していた。

 確かに彼女は強い。オレが見た中で最も高火力の魔法の使い手だ。

 でも重度のエリクサー中毒だと知ってたら相棒にはしなかったよ。


「あーあ、お腹空いたなあ。今夜は何食べよっか?」

 あんだけ呑んで腹膨れてないのかお前は。


 うん……まあ、帰ろうか。


 オレは、ご機嫌で街への道を往くバステナのあとを、とぼとぼとついていった。

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