ある日の身体測定 高2(挿絵有り)
「で、あるかしてここがこういう風になります·····。」
カリカリと先生が黒板にチョークで字を書く音が響き授業が進みます。
始業式から数日たって新しいクラスや教室、一通りの科目を受けて落ちついた今日この頃。
今日は年に1回の、ある行事があるんです。
それは身体測定。
ただそれがいつ始まるのかは、分からないんだけどね。
実際にはもう始まってる。
ただいっぺんにみんなが行っても混雑しちゃうだけだから、クラスで順番に呼び出されて受けに行くというスタイルなんだよね。
「引き続いてこちらの······」
先生が話を続けようとした時、コンコンと教室の扉が叩かれ顔を出す見知らない先生。
授業を担当してた先生と少し話をした後去っていきました。
順番が来たのかな??
「あ〜···、授業の途中だけども順番が近くなったそうなので今日はこれで終わりにするよ。で、この後直ぐに男子は第1体育館、女子は保健室に行くように。保健室の後は第1体育館だから間違えるなよ?あと、体育館シューズは持たなくていいからな。では、解散!」
その発言で机の上の教科書やノート類を仕舞い、保健室へ向かう準備をします。
「じゃ、みんな行こっか!」
「「「「はーーい。」」」」
クラス委員長として皆に声をかけて移動です。
まぁ、かけなくても自然と行くには行くけどね。
立ち上がって早速両腕を取られたけど、まぁこれも慣れた光景なんだよね。
春休みを少し挟んだから、ちょっとまだ懐かしさもあったりもするけれど。
でも、やっぱりこれがあったりすると戻ってきたな〜ってかんじがする。
隣でくっついてる茜ちゃんはご機嫌だし、その反対側の子も同じ。
まだ一部のクラスは授業をしてるからあまり騒がしくはしないようにして、保健室へと向かいます。
保健室は1階で昇降口や体育館に近いです。ついでに言うと駐車場の直ぐ側。
恐らく万が一、救急車を呼ぶ事がある場合の事を考えたうえの場所なんだと思うけどね。
ストレッチャーをスムーズに使えるようにとか、早く運べる様にとか考えればいくらでも理由として思いつくけど、使わないで済むならそれに越した事はないし。
でも分からないからね。こういう事は···。
「身体測定って、やっぱりヤだね〜」
「うん」「だよねー」
「そう?私は気にしないよー?」
「それは司がスタイルいいからでしょー?」
皆がそれぞれ身体測定について語ってる。
内容はありがちな「ヤダよね〜」話なんだけど、実際にはどのくらい嫌なのかはよく分からない。
私のクラスの子、見た感じでは太ってる子はいないんだよね。
だからそんなに気にしなくても···とは思うけど、そこが年頃の女の子って所なのかなー?
「このはちゃんは身体測定は嫌だったりする?」
「私?」
私に話が来た。
私としてはもう慣れたものなので、学校レベルの身体測定だと何とも思わないし結果も基本分かってるので、どうこうと言った感情はないんだよね。
「私は嫌ではないよ。寧ろ余り気にしてないっていうのかな?結果が分かってるからさ。 」
「気にしてないの?やっぱりスタイルいいから?」
「というか、結果が分かってるってなーに??
」
「あぁ、そういうのじゃないよ。勘違いしないでね。」
多分みんなが気にしてるのは体重測定。
で、勘違いされたのもたぶん体重測定の事だと思う。
「私はさ、こんな見た目で生まれたでしょ?本来この症状で生まれると目が悪くなったり肌が太陽に弱くなる症状が出るのね。それに私は雪ちゃんを普通じゃありえない仕方で妊娠をしたのもあって、定期的に大病院で検査してるの。下手すると人間ドック以上のね。だから、慣れちゃったとかそういう感じで気にしてないって感じなの。それにその都度結果も聞いてるから、余程の事がない限りは健康状態についても把握してるから······。」
手が塞がってるから何も出来ないけど、内心ではちょっと照れくさい。
「わわ······このはちゃん、大変なんだね。」
「人間ドックって結構大変なんでしょ?それ以上のものって······苦労してるんだね······。」
皆に同情されちゃった。
まぁ、大変といっても病院に行く移動と検査あれこれ時間がかかるくらいで、それ以外はそうでもないんだけどね。
まぁ、検査項目しだいでは痛みとか苦しさとかは多少はあるけど、必要な事だから耐えられるからね。
「そういうのをやってるから、結果も勿論知ってて心配ないのも知ってるから、安心してるのもあるなかな?」
「「「なるほどー。」」」
「ああ、あとね。男の子いないから言うとね······。」
「「「何々????」」」
皆が食いついて来た。
やっぱり内緒話しとか、男の子が絡むような話って好きだよね〜。
「妊娠するって事は先生に見られる訳ね。アソコを。触って触診もするし、内診もする。で、さっき言ったように雪ちゃんをあり得ない仕方で妊娠したから当然そのメカニズム的なことも調べたりする必要があるわけで······。今でも隅々まで検査するのよ。だからある意味で、私の身体は隅々まで調べられてるから、この身体測定程度なら気にならないって感じなの。」
「す···凄いね、このはちゃん·····。」
「身体の隅々までだってよ??」
「妊娠してアソコまで診られるって···。」
「恥ずかしよね······。」
「でも、妊娠するってことはそこは必須だもんね?行かないって選択肢は存在しないしさ。」
皆がキャーキャー言ったり顔を赤くして話ししてたりと色々です。
特に婦人科は妊娠したとか必要にならないと受けないし、それ以外で受診するというのも少ないと言えば少ないよね。
内科なんかと比べるとさ。
それに恥ずかしい部分の話でもあるから尚更かな?
特に思春期の女の子だとね。
「このはちゃん、辛かったり恥ずかしかったりしないの?」
茜ちゃんにそう聞かれた。
「恥ずかしいのはあるけどさ。でも必要な検査だし、私のコレが解明でもすれば他の人の役に立つかもって前向きに考えて受けてるから大丈夫だよ。ありがとね、茜ちゃん。」
茜ちゃんの頭をポンポンしてお礼を伝えます。
実際、おまけとして婦人科系の癌の有無とかそういうのも調べて教えてくれるから、嬉しいことの方が大きいんだよ。
乳癌とか子宮頸がんとか、若い人でもなったりするからね。
でも意外と検査とかって受けないからね。
「あー···でも······。」
「でも?」
「「「「ん?」」」」
「最初に産婦人科に行った時は、さすがに恥ずかしかったな······。理由もわからず半分パニック状態で行って、診察台に乗って······。13の娘にはちょっと辛かったわ。」
あの時は確かにパニックとか不安とかそういう気持ちが強かったからあれだけど、冷静に考えると恥ずかしかったなとは思う。
全ての工程をすっとばしてのあれだったしね。
ーーーーーーー
「名前の順に並んでね〜」
先生の指示通りに名前の順で並び、健康診断表を受け取って待ちます。
待つ間に中を開いてみると、去年のデータが入ってる。
なるほど······。
健康診断を外部の医療機関にお願いしてるから去年のデータもあって、比較出来るようになってるんだね。
身長·体重からBMI数値。
視力や聴力も載ってるし、おまけに血液検査のデータもある。
素人には赤血球や白血球とか名前は知っててもこれ何?と分からないのも多い。
だから別のページには、その項目についての説明だとかそういうのがきちんと記載されてるし。
「去年のデータがあるよー?」
「太ってたらどうしよう〜。」
「大丈夫だよ、太ってないから!それより私の背だよ!」
静かめにキャーキャー言う皆。
それでも保健室の中というのは理解してるから、控えめにしてくれてる。
衝立の向こうで順に検診です。
まずは身長と体重測定。
これは両方をいっぺんに測れるから直ぐに終わっちゃう。
それに自動でピピッとだから、道具の進歩っていうのは凄いよね。
続いて胸部聴診。
これも女子が嫌がる検診項目であるけれど、担当する先生は女性の方だからみんなでも大丈夫だよね。
小学生の時は男性の先生だったと記憶してるけど。
ちなみに私はそんなに気にしていない。
実際に胸をさらけ出すわけでもないし、さっきもみんなに話したけどそれなりに検査して慣れてるから。
それに毎回女性の先生のみって訳でもないからね。
あとはここで心電図をとって、一先ずは終わりという流れ。
保健室ということでベットも丁度あるから、機械を持ってくれば出来ちゃうからいいよね。
それに部屋として独立してるから、男の子の目も心配いらない。
次は体育館で血圧や視力、採血など身体を晒さない項目を男子と混じってやれば終了です。
聴力とレントゲンはまた違う所でだけどね。
この学校の身体測定。
学校ものだけど、診察項目はしっかりしてるんだよね。
一般的なものと遜色のない事をやってくれるし、採血やレントゲンなんて学校でやる所少ないんじゃないかな?とも思うから。
ここからは終わり次第、体育館へ向かいます。
みんなを待ってはいたいけど、胸部聴診と心電図で少し時間かかるから先に行くことにする。
みんなを待つと大変だし、折角分散して受けてる意味がなくなるから。
と思ってたんだけど、私の前の子達が廊下で待っていてくれたみたい。
それなんで合流して一緒に体育館へ向かいう事にしたよ。
「ねえ?どうだった?私、体重が増えちゃったよ······。」
「私は少しだけ身長が少し伸びたかなー?」
話題の中心は、先程の測定の話だった。
その中で1番分かりやすく、みんなの関心度が1番高い身長·体重の話になるのは避けられないよね。
増えたとか変わらなかったとか。
あれこれと話が進むけど、これも一年前とは違った光景だよね。
去年は入学したてというのもあって、まだみんなとは大して仲良くはなかった。
それに私はこんなんだからみんなとは少し距離感を感じてたし、それはみんなも同様だったみたい。
そしてみんなもお互いにどういう風に接しようかと、悩んだり考えたりしてた頃だったからね。
だから今と違って淡々と測定をやってた。
それが今はこんなにも仲良く、オープンに話をしてるんだから変わるものだよねーと思ってしまう。
「このはちゃんはどうだった?」
「私?私は大して変わらなかったよ。」
私にもそう聞かれたけど、私はほぼ変わらなかった。
多少の誤差はあれど、衣類とか(その辺りは多少引いてるとは思う)食事とかの影響だからね。
きちんと測るなら、同じ時間に同じ姿で測るのが1番いい。
私のそれは、朝起きて着替える時なんだよね。
「みんなさ、体重を気にしてるけど数字なんてそんなに気にしなくて大丈夫だよ。前に言ったの覚えてる?」
「前に······あぁ、去年教えてくれたあれだね?」
「食事の重要性やストレッチの話だよね?」
「そうそう。」
よかった···。
一応覚えててくれたみたいで。
もう随分前に話した事だったから、忘れてるかなーとは思ってた。
「続けてるかは分からないけど、余程太ってなければ数字なんて気にしなくてもいいんだよって思うよ。それにうちのクラスのみんなは太ってないし。あっちゃんは運動部でしょ?体重増えた??」
「うん·····去年と比べてそこそこ増えた······。」
ショックー!っていう感じで、小さめの声でそう教えてくれた。
「それは成長期と運動部の練習で筋肉がついてるのが大きいと思うの。筋肉は脂肪よりコンパクトで重いから体重が増えるのは当然。で、それだけで太ったって思うのは違うからね?」
「···そう?」
「うん。あっちゃんはスタイルいいんだから体重の数字が増えても問題ないと私は思う。数字より見た目。他人から綺麗にスタイル良く見られる、水着になって恥ずかしくない体型、そういうのが大事だと私は思うから。」
「このはちゃん······。」
「ほら、私なんてこんだけ体重があるんだよ?でも自分で言うのもあれだけど、スタイルは悪くないでしょ?」
と、先程の測定で記入された検診表を見せます。
ついでに去年のデーターも記載されてるから丁度よいね。
それに何と言っても、直接数字で見たほうが口で説明するより説得力も生まれるし。
「ホントだ〜。私よりもあるよ?」
「確かにあるけど、そんなにある風に見えないよね。」
「「うんうん」」
「でしょ?だからあっちゃんも私と似たような身体作りしてるから大丈夫。気にしないで。」
「このはちゃん······うん、わかった!私、この状態、見た目をキープするようにするね!数字なんて気にしないよ!」
「私も少し運動しようかな?この、ぷにぷにはなくしたい······。」
あっちゃんの沈んでた気分が晴れたみたいで良かった。
そしてみんなのやる気が少し出たみたいだった。
そして後日改めてこの話が皆にも伝わって、体重が増えたと落ち込む子の希望になるのでした。




